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10 告白
しおりを挟むそしてまた別の日のこと、オフェーリアはついに限界を超えてしまって、ソファーの上でヴァレントの上に乗りながら腕を組んでとても不機嫌な声で言った。
「ああもう、いいですわ。どうあってもあなたはわたくしに手を出すつもりはない、そういうことですの!」
「だから、そういうふうに決めているわけじゃない」
「でもそうしないんですの。いいですわ、わかりましたわ。もういいですのよ」
そんなふうに言っていても、オフェーリアはもう期待しないからきっぱり彼とは縁を切って接触もなくすというわけでもない。
ただヴァレントの上に乗ったまま、いつもの調子の彼に怒るのも面倒になってその体に上半身をあずけて倒れこんだ。
「なんだ、急に怒りだして」
「だって、わたくしの望むようにしてくださらないんですもの、もういいですわ」
彼の上にこうしているのはもはやオフェーリアの定位置だ。丁度良くて人肌を感じられて安心できて心地が良い。
そしてそのままオフェーリアは、計画の話をし始めた。
「……ただわたくしは、あなたの持つであろうベアトリーチェ姫殿下の情報が欲しかったんですのよ」
ヴァレントのことを見ずにオフェーリアはもうどうにでもなれとばかりにそっぽ向いて続きを言う。
「だって、あの人にわたくし、とんでもない損をさせられたんですもの。それで賠償の話を持ち出したら、わたくしに乱暴をしたんですの。酷いでしょう」
オフェーリアは生まれて初めてあんなふうに物理的に痛い目に遭わされたのだ。
精神的に痛い目にあわされたことも怒っているが、なによりああいう態度を取られて、それで泣き寝入りするしかなかったことが腹立たしい。
「だから、ヴァレントに取り入って、あの人のさらなるスキャンダルを探して仕返しをしようと思っていた……のに……あなたと来たら、わたくしのことを一向に抱きもしないし、いっつも煮え切らない態度!」
ヴァレントはすぐ隣にいるけれど、オフェーリアは友人に愚痴を言うようなつもりでぷりぷりと怒って続けて言う。
「何が不満だっていうのかしら。わたくしの体を代償にしてあなたから情報を引き出すつもりだったのに、台無しですの」
「……」
「情報をもらったからと言ってヴァレントの立場を悪くするようなことは絶対にしませんわ。うまくやりますもの」
「……それは、いいのか君はそんなふうに体を差し出して。もっとあるだろう女性には。心から愛した人に自分の純潔をささげたいという気持ちが」
ペラペラとオフェーリアが話しているとヴァレントはたまらず口を出し、苦々しいような声で言った。
それにオフェーリアはふんっと鼻を鳴らして彼をにらみつけるように見上げた。
「あら、そんなの幻想ですわ。愛や情なんてものはね、たくさんの打算や、利害関係によって構築される幻のようなものですわ」
「あんなに愛をささやいていた君がそれを言うのか」
「ええ、言いますわよ。だって、ああいうのって決まり文句みたいなものでしょう。それに、嘘は言っていませんもの。愛は持っていますわ人並みに」
現実主義的で、打算的で純真無垢ではない、それがオフェーリアでありその愛情もまた、そういうものの上に存在している結果でしかない。
それにほんの少しばかり、情緒的にヴァレントのことを気に入っているという節もある。
彼の膝の上は心地いい、このまま猫のようににゃあにゃあと言って暮らしたい気持ちもあるぐらいだった。
「ああでも、あなたは意気地なしの朴念仁だからわたくしを自分のものにすることはないんでしたわね、失敬。でもいいんですの。こういう関係でも、これではあなたとお近づきになった目的と手段があべこべになってしまうけれど」
目的は情報、手段は彼と良い仲になること。だった。
しかし、良い仲になったことがオフェーリアにとってそこそこの良い目的になりえる物だった。
けれども、大元の計画と目的をオフェーリアは忘れることはできない。
だからこそ頭の中でまた算段を組み立てる。
「……ただそうはいっても、わたくしはまだ誰の物にもなっていませんし、あなたとの関係を切って、ほかのベアトリーチェの騎士だった人に当たってみましょうか。それで情報が手に入るなら御の字、そうでなくても、諦めがつくまでやりましょう」
別にオフェーリアが誰のものになろうとも彼はどうでもいいのだろう。彼自身手を出してこないのだし。だからこその結論だった。
「そういうわけですから、ヴァレント。わたくしはしばらくあなたと会えません。それは別に嫌いになったとかそういうわけではありませんわ。ただ、目的を果たさなければ…………」
喋りながら考えているとうまく結論が出て早速、立ち上がって情報収集に向かおうと考えたのだった
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