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15 意味
しおりを挟む……これで一応の平等性は確保できましたけど、後はディオン次第ですね。
「簡単に五回勝負でいいだろう、勝負に乗らないことはできるが三回までだ」
「……ああ」
「それでは勝負だ。精々後悔しないように、全力を尽くすんだな」
カジミールはそう口にして前のめりになって、袖を少し引き上げる様な仕草をした。
腕まくりをするのでないためすぐに落ちてくるような行動だったが、気合いを入れる様な意味合いでそうする人もいるだろう。膝の上に肘を置いて静かにカードをめくる。
一方ディオンの方もカードをめくって表情を渋くして、考え始める。
クロエは淡々とディーラーとしての役目を果たし、静かにこの勝負の行く末を見守ることにした。
開始早々、想定していたことではあったが、ディオンはやっぱりカードゲームに弱かった。
そもそもあまり遊びなれてないらしく、あまりそういう交流をしているところを見たことがないということもあり、さもありなんといった様子である。
一方カジミールは早々に手札を決めて、自信満々にディオンがどんな手札で来ても余裕だと観客に見せつけるようにテーブルに伏せて煽るような行動もする。
するとやはり手際の悪いディオンの方へと視線が集まり、終始カジミールのペースに乗せられたゲーム運びになって普通に負けた。
五回勝負のうち、一回勝って四回負けた。
何故勝負に乗ったのかが謎なぐらいありきたりな勝負でありきたりな敗北だった。
「っ、ははははっ、いやいや、私相手に健闘した方じゃないか。リクール辺境伯子息、それでもやはり私のような賢い貴族には敵わないということだ。それがよく分かっただろう」
カジミールは勝ち誇って、ディオンに勝利を告げる。
そしてそのころにはクロエはこの勝敗がどうなろうとその後の行動を決めることができていたので気軽に構えていた。
観客たちも、逆転も何もない勝負だったので、途中で離れた人もいる。しかし見始めたからにはと行く末を見守っているひとが大多数でディオンの反応を窺っていた。
しかし当の彼はたいして悔しそうでもなんでもなく、ちらりと横目でクロエに視線をよこした。
…………?
そしてクロエが、気軽に構えている様子を見るだけ見て、カジミールにやっと返す。
「……たしかによくわかりました。運だけのゲームではないんだな」
「その通りだ。君は、運良く自分よりも上位の者に好まれて、クロエ嬢という大きな幸運を得た。しかしそれだけでやっていけるほど貴族社会というのは甘いものではない。知力や計画性、生まれや時に男のプライドを守り━━━━」
「では、もう一度お願いします」
「……」
「クロエ、カードを配ってくれますか」
「……」
「……なんだと?」
潔く負けを認めたディオンに対して、勝者として決め台詞を言っていたカジミールは、言葉をさえぎられて不服そうな顔をする。
そして続く彼の言葉に、怪訝そうな顔で返す。
言われたクロエも驚いてすぐには始めなかったが、もう一試合だけということだろうかと思い、言われた通りカードを配る。
「……君には、潔くあきらめるということができないのか?」
「いえ、あきらめるというか。まだ終わらせる気はないんで」
「いいや、勝負は勝負だろう、君は負けたんだ泣きの一回など受けて立ってやるほど私は甘くない」
カジミールはそんな下らないことをなぜやる必要があると腕を組んで、もう勝負をする気はないと示す。しかしディオンはとてもまっすぐな煽り文句を口にした。
「なんだ、次は負けるかもしれないのが怖いのか」
「……」
「俺が初心者だということも知っていたようだし、上達して勝負が均衡するのが怖いんだろう」
「……っ」
「でも本来、そういう物じゃないのか? 勝つか負けるかわからないからこそだと思うんだが」
……暴論ですね。……でも、たしかに初心者に自分の得意なことで勝負を挑んで勝ち誇るのは……少々、恥ずかしい行為ですね。
そこをつかれてしまうと、こんなありきたりな煽り文句でもカジミールは青筋を立ててディオンのことを睨みつける。
そして机の上に配られたカードをダンッと乱暴に音を立てて取り、目を通す。どうやらもう一勝負始まるらしく、クロエはディオンが考えていることがやっぱりわからなかった。
案外負けん気が強いのか、それとも何か勝負を長引かせることによって別の意図があるのか。
まったくもって分からない、ギャラリーたちもまた始まった勝負に、結局どっちがクロエを手にするのかと疑問を持ち首をかしげた。
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