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しおりを挟むたしかに元彼ということは、今のボクの部屋に住んでいたのだろうし、今、ボクが使っている家具も元はリクのものだったのだろう。それになんなら、セージにこの部屋を作ってもらったのもリクなのかもしれない。
「ねぇ、どうせ、飼われてるってなら暇でしょ?ちょっと付き合えって!てかその絵は何?」
「……趣味」
「へぇー……」
そういってリクは、ボクの絵をのぞき込む。咄嗟に、それを隠したい衝動に駆られるが、なんだか彼に関しては、そんなことをすると負けた気になりそうで、すこし片付けをして気を紛らわす。
リクは、その絵を眺めてふと眉間にしわを寄せた。それから、今まで忙しなかった動きを緩慢にさせて、机に手を置く。
「……なんだ。キレーじゃん」
「……お世辞はいらない」
「別に、君にお世辞言って何になるの。ここからの景色でしょ、これ」
そうだ。当たってる。
「夜景も綺麗だけど、やっぱり昼だよね。高層階だから、街歩いてる時より、ずっと、空気が澄んでてさ……なんか乎雪の絵、キラキラしてんだね」
それは、お金に余裕があって、色々画材を試せるようになったから面白半分で買ったラメが入ってる絵具を使ったからだ。そんな遊びみたいなこと、ヤギさんの下でしていたら怒られるんだけど、自由になったからこそできることだ。
それに、まだ完成ではない。これは売り物にしない分まだまだ加筆するつもりだ。
「趣味って事は、自分で見る様に描いてるの?」
「……その絵はそう」
「へぇー、いいね!」
まったく嫌味もなく褒められると、どうにもこそばゆい気持ちになる。しかし、まあ、リクはそんなに嫌な奴ではないのかもしれない。
「リビングで話そ!ここだと座るところないし!」
「……」
特に話をしたいことなんてなかったが、暇つぶしだというのなら、少しぐらいは付き合ってやってもいい。そんな風に考えて、先に行くリクの背中を追う。
彼は勝手知ったる様子で、冷蔵庫に備え付けてある、アイスティーのボトルを取り出して、二つのグラスに注ぐ。
ボクは、仕方なくリビングの灯りをつけて、来客があったときようにと置かれているカステラを棚から取り出して、小分けになってるそれを、テーブルに対面になるように適当に置いて、いつも自分が座ってる椅子に座った。
「ねえ、乎雪、沙織さんは、今でも来てる?」
「……来てる」
リクは、アイスティーをボクの前に一つ置いて、いつもセージが座ってる椅子に座る。
「そっかぁー。大分揉めて別れちゃったから、お世話になったのに申し訳なかったなぁ」
「……明日、来る日だから会って謝ればいいだろ」
「ヤダよ。どの面下げて、元彼の姉に会えっていうの!」
……そこを気まずく思う常識はあんだな。なら、元彼のペットと話すのはどんな面下げて話してるつもりなんだ。
そもそも、このリクという男は、まったくの初対面なのにボクに気まずいとか、そういう気持ちは無いんだろうか。ただでさえ、ボク側としては彼氏なんていたことすらなかったのに、飼い主の元彼なんて、もはや意味がわからない。
どんな感情で、どういうつながりの人間として接すればいいのか、検討もつかないのだ。そして、単純に男を恋愛対象にする男の存在はいまのところ、セージ以外知り合いがいないのだ。リクはゲイだろう。
そういう、親しくない人にしか、明かさないようなことを知ってるのは、不用意に相手を傷つけてしまわないか心配になる。
「……なーんか、乎雪は僕のこと、警戒してるカンジ」
ボクのなんとも言えない感情が感じ取れたらしく、リクはそんな風に言う。
「そんなに、警戒しなくたってわかるでしょ。僕、ネコだから、君に変なことしたりしないよ?」
ネコっていうのはあれか、男同士の上か下かって話か。別にリクがどっち側だっていいし、そんな心配はしていない。
気にしている部分が全く違うという、価値観の違いを妙に思いつつ、アイスティーに口をつける。それからカステラの包装をはがして、口に入れる。考えながら嚥下して、完食して口を開く。
「……そんな心配はしてねえよ。ただ、正直、ボクがお前にどう接するのが正解かわからない」
「え~?普通でいいよ。あ、もしかして、ネコの友達初めて?」
「ん?ああ、まあ」
「へぇー!ねえ、乎雪、ペットって言ってたよね?清司とはどんな関係?やっぱり、あの人この家から出ると怒ったりする?でもそれって窮屈じゃない?」
リクはこれまたテンション高く、ボクのことを聞いてきて、言っていいものか考えたが、リクの方からフったと聞いている。となればセージの名誉のためにも、本物のペットみたいに監禁じみた事をセージがボクに強いているわけではないことは伝えてもいいだろう。
「別に、怒らない。出てくなってたまに言われるけど、外出制限とかねえよ」
「え、意外。ペットだからって、物みたいに全部管理されてるんだと思ってた……」
「……? むしろ、踏み込んでこないぞ。あんまり、ボクのこと聞いてこないし、多分、セージはヒモでも飼ってるようなつもりなんじゃね」
「へぇー。……何がしたいんだろうね。あの人」
……それはボクにもわからない。いつまでこの生活を続けるつもりなのかとか、ここからどうしていきたいとか願望があるのか。そういうことをボクらは一切話をしない。
元ではあるが、彼氏だった、リクにもセージがどういうつもりなのかは、わからないようで、彼も少しまじめな顔をして考える。
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