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しおりを挟む「……でも、ちょっとは、マシになったのかな」
「なにがだ?」
「あれ、沙織さんから、聞いてない?僕らが別れた理由」
そういえば気になっていたのだったと思い出す。そのせいで、セージがすごく落ち込んでたとか、揉めたとか言っていて、その理由をボクには教えてくれなかった。そして、そんな風にフられる要因がセージにあるとは思えなかったのだ。
なにせ、今でもセージは優しい男のままで、悪いところといえば、何を考えているかわからないことぐらいでそれ以外は、めっぽういい男だ。
「なんか、揉めたって話は聞いてる。なんで別れたんだ?」
「……」
ボクが気になって直球に聞くとリクは、すこし逡巡して、ニコーっと何か企んでるような笑みを浮かべる。
「知りたい?」
「……そりゃ、まあ」
「……どーしよっかなー。まあ!君としても知っときたいよね?そんな、セフレなのか、ヒモなんだかわかんない状況にいたら、いつ僕らが別れた問題にぶつかるかわかんないもんねぇ?」
「そーだな」
その不安は確かにある。セージにどんな欠点があるのか知っておいたほうがいざというときに驚かずに済むだろう。
「だよねぇー。清司はセフレにするなら優良だしね。顔もいいしセックスもうまいし、経済的に潤ってるし?」
その言い分だと、まるでボクがセージを社会的なステータスでしか見ていない、薄情な人間のように聞こえるが、それはあながち間違ってはいない。
ボクは今、セージの部屋に上がり込んでいて、ミノルにも他人に寄生してると言われてるのだ。今、リクが挙げた物がセージにあったからボクがここにいるのは事実なので、訂正はしない。
「知りたかったらもうちょっと付き合ってくんない?僕、行きたいところあるんだっ、一応聞くけど、清司は乎雪のこと、恋人だって言ってないんだよね?」
「ん?……そーだな」
「じゃあ決まり、パーっと遊びいこ!」
唐突な質問の意味はわからないが、ボクがリクの遊びに付き合ったら別れた理由を教えてくれるらしい。遊ぶといっても何をするのかわからないけれど、買い物とかだろうか。
ボクがのんきに考えていると、リクはポケットから財布を取り出して、ぱっと名刺を渡してくる。
「じゃあ、今日八時にこの店に集合ね!」
「……」
まじまじとその名刺をみると、バーという記載があり、このマンションの最寄り駅周辺のようだった。
「わかった」
「やったー!あ、言っとくけど、清司にはうまいこと言って来てよ?僕と遊びに行くなんて言っちゃダメ」
「何でだ?」
「なんでも!いい?」
圧をかけて言われて仕方なく頷く、そうすると、リクは満足げに笑って、アイスティーを飲み干して、「じゃあ、後でねっ!」といって、去っていく。ボクはしばらく、リクの去っていった方を呆然と見て、軽く息をついた。
……なんかずっとリクのペースに吞まれてたな。
ボクはあまり、初対面の人とのコミュニケーションが得意ではない。ああして、よくしゃべる人のほうが会話に困らなくていいのだが、ペースに呑まれてしまうと、普段では乗らない誘いに乗ってしまうこともしばしばある。
……バーなんて行ったことないんだけど、大丈夫か?
飲みに居酒屋につれていかれたことはあるけど、バーは初めてだ。それほど酒が好きでもないし、強くもない。ぼったくられたり、変な薬を入れられたりするところというイメージが強くどうしても警戒してしまう。
しかし、それでもリクが共に行ってくれるのだから、ある程度は信頼できるはずだ……多分。
リクがまとう雰囲気は、なんだか少し軽薄な感じもしたが、約束してしまったので、仕方ないと思考を打ち切って腹を決めた。
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