ゴミ捨て場で男に拾われた話。

ぽんぽこ狸

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 セージはいつもと同じぐらいの時間に帰宅した。いつもと同じようにご飯を食べて、お風呂に入る。たまには、一緒にお風呂に入ることだってあるが、基本は別々だ。大体はセージが先。ボクは、外にも出ないし汗もかかないので、お風呂は気が向いたときに適当に入るのが常だ。

 しかし今日ばかりはそうもいかない。セージと入れ替わりでお風呂に入って、支度を済ませる。夜なのでセージが買った大きめサイズのカーディガンを羽織って、愛用の二つ折りの皮財布を持った。

 忘れ物がないか確認して自室をでる。リビングには珍しく、セージがいて、ゴールデンタイムのドラマを点けたまま、スマホに視線を落としてソファーでくつろいでいた。

 ……準備してる音が聞こえたのかな。

 セージはリビングのテレビをあまり見ない。見るとしてもサブスクで映画を見るぐらいなのだ、地上波を流しているということは、リビングにいる口実を作るためなのかなと思う。

「あ、ユキどうしたの?コンビニでも行く?」

 そして彼は、まったく今気が付いたような顔をして、スマホから顔を上げて、ボクの方を見る。そんなに察しの悪い人ではないので、ある程度分かっているだろうと思うのだが、まったくわからないフリをするつもりらしい。

「いや、ちょっと遊びにいってくる。いいか?」
「……俺の許可なんて取らなくていいよ?いってらっしゃい。あんまり、遅くならないようにね」
「ああ」
「泊りになるときは連絡してね」

 セージは言いながら自分のスマホをトントンとタップする。「ん。わかった」と返事をしながら、自分のスマホの電源を入れる。最近はミノルからの嫌がらせ電話もないので、セージと連絡先を交換してある。使う機会は多くないが、こういう時には便利だ。

「あと、迎えに来てほしいときは電話してくれればすぐに行くから」
「ん」
「危ない場所にはいかないでね」
「うん」
「ナンパされてもついてっちゃだめだよ。危ないから」
「ああ」
「お酒はほどほどにしとくんだよ」
「ん、」

 セージは言い淀むことなく次々に、親のようなことを言う。そんな彼は、心なしか余裕がないように見える。

 ……そんなに心配そうな顔しているのに、どこに行くのか、誰と一緒なのかって聞かないんだな。

 そんな我慢をしてでも、セージはボクを恋人にしてはくれない。ボクに踏み込んできたりしない。その線引きがすこしだけ、悲しい。

 ……あ、そうだ。リクに分かれた理由だけじゃなくて、何でセージがペットってのにこだわってるのかも聞いてみよう。ボクの中ではヒモを飼いたかったのだと勝手に解釈しているが、セージに確認を取ったわけではない。リクは、ボクがペットだって言った時、何か知っていそうだった。この際、全部話をしてもらおう。

 そんなことを考えてから、ソファーに座っている彼に近づいた。

 セージはボクに手を伸ばして、なんだか不安がっている子供みたいで可愛げがある。

 その手を取ってぎゅっと握って、キスをする。

「送れちゃうから、行ってくるな」
「……気を付けて」
「ああ、ありがとう」

 手を放して玄関に向かえば、もうセージは何も言ってくることは無くて、そのまま振り返らずに部屋を出た。




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