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しおりを挟む「綺麗に伸ばしているんだね」
そういいつつ、アライがふと髪に手を伸ばしてくる。ボクはなんとなくその手を取って、彼の瞳を下からのぞき込む。
「触んないでくれるか?ボクなりにこだわりがあるから、気軽に髪に触られるの嫌いなんだ」
「!……ごめん」
「いや……別にいいぞ。お前もキレーに固めてんな、ここ来るためにしてきたのか?」
断ったままでは、角が立つかと思い、かっこよく決めているアライの髪について聞いてみる。今、三つ編みをあみなおすのも面倒で、簡単に髪を背後でひとまとめにした。
「あ、はは、そうなんだ。できるだけ、見汚くないように」
「すごいな。ボクは、自分で服を選ぶのだって、面倒で……」
……面倒で適当にあった物を着てきた、まるっきりセージの趣味だ。
今日、心配そうにしているのに置いてきた。飼い主のことを思い出す。寂しそうだった。
「そうかな。すごく似合ってるよ、俺の好きなタイプだ」
……そりゃ、セージに言ってくれ。ボクはお前のタイプの服をきたりしない。
咄嗟に考えた言葉は、なんだかすごく厭味ったらしくて、自分自身いま、本当はとても動揺しているのがわかる。
なんせ、ボクは、多分ゲイじゃないのだ。セックスはできる。ただそれが恋愛対象として好きになれるということとは別物だろう。セージのことは好きだ。しかし、男が好きという事と同義じゃないのだ。それにまだ、よくわからない。
というか、自分の事なのに、そもそも男も好きになれたんだなとか、じゃあ、逆に女のことをボクはどう思っているのだろうとか。
もはや、抱かれたからボクは男を好きになったのかもしれないという疑惑まである。となると抱いてくれるのなら、誰でもいいのか。
カクテルが出てくる。口に含む、酒の味はしない。喉に流し込むようにして、飲み干す。ふと腰を抱かれて、アライの方を見る。あからさまに熱を持った視線。
手に入れたいと欲する、視線。その情熱を受け流せるほど、ボクはまだ男性同士が当たり前に恋しあうという状況に慣れていない。体が強張って、なんだか心細い。
「一応、聞いていい?乎雪くんって、ネコっぽい、と思うんだけど」
「っ……」
「あたってる?」
男性同士の恋愛ならではの質問だろう。それがボクにとっては、異様なほど艶めかしくて、生理的な嫌悪感を覚える。血の気が引いて気持ち悪い。気持ちを抑えるために、こぶしを握って顔をうつ向かせた。
そうすると、ボクの機微から何かを察してくれたらしく、アライは、すこし黙ってからぱっとボクから、手を放す。
「……」
「……、……」
そうして、妙に気まずい時間が流れて、アライは目の前に置かれていた、自分のグラスを徐に掴んで、思いっきりあおる。ごくごくとのどを鳴らして飲み、空になったグラスをとんと置く。
「ごめん、ちょっと飲みすぎちゃってる、みたいだ、……ごめん」
二度も謝られて、ボクは目を丸くして彼を見た。少し赤ら顔で、しょんぼりしている姿がどことなくセージを思い出させて、嫌悪感は落ち着いてくる。
声だって少し震えているようで、変に納得がいってしまう。
……ボクは、先入観で考えすぎだったな。
男同士だろうが、気になった相手にアプローチするというのは、勇気のいる行動だ。
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