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しおりを挟む自分は、学生の時も大人になってからもそういう行動を起こせる人間ではなかった、けれどもそれがとても労力を要することも、失敗すれば傷つくことも、人並みに理解できている。
この人はただ、欲のままにボクをどうこうしようなどとは考えていない。男女の恋愛と同じだ。アプローチをかけられただけ。それにたいして、理解不能の嫌悪感だけで、拒絶して突っぱねるのは違うだろう。この人も人間で、話の通じる大人なのだ。
そう考えると自然と、体のこわばりが解けて、アライと向き合うことができた。
「ボクの方こそ悪かった。……その、あんまり、慣れてないんだ。ええと、なんて言うんだ?ほんの少し前まで、女の子が好きだったんだ」
「……え?あ、ノーマルだったってこと?」
「ああ、そーだな」
ノーマルというのは、一般的に女の子を好きな人間のことをそういうという解釈であっているだろう。
「それに、パートナー?は、いないけど、片思いの人はいるんだ。今日は、リクに付き合って来ただけだ。だまし討ちみたいになっちゃって、ごめん」
「あ、……あー。っ、俺びっくりさせたよね」
「ちょっとな」
「……ほんとごめん、席……」
移動しようかと、アライは提案しようとしたのだと思うが向かいにいる、リクとカキハラは楽しそうに何やら趣味の話をしてる。主にカキハラの方がリクを楽しませようと必死なようで、連れ合いがこれだけ熱を上げていたら、言いづらいだろう。
「いいよ。アライが、ボクと話してて退屈じゃないなら、このままで」
「……乎雪くん、ありがとう」
それから、カキハラが玉砕するまでの間に店はだんだんと、人が増えて、ここから見えるカウンターの席の人がナンパされているのを見たり。カップルらしき人達が、イチャイチャしている中、気まずくなりながらお酒を注文したりした。
アライとは最初こそ、ありきたりな話題を話していたが、時間が経つにつれて、酒も進み店全体がにぎやかなのもあって、ボクのあまり知識の少ない男性同士の睦事について教えてもらったりした。
解散する際に、アライはボクの連絡先などは聞くことはなく、あっさりとボクらの分も会計を支払って、さっていった。
リクとも別れて、帰路につくと、未だに不思議な高揚感が残っていた。
自分のまったく知らない世界。
その世界を自分も住人として片足を突っ込みながら覗き込むのは、現実味のないような不思議な感覚で、けれども決して嘘ではない、そこにある存在であり、いつだって自分も完璧な住人になることができる。
なりたいと望むわけではないが、一つの選択肢として、よい場所のように思えた。
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