わがおろか ~我がままな女、愚かなおっさんに苦悩する~

かみやなおあき

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鬼ゴリラVS最強忍者 (シノブ6)

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 こいつは嘘を吐くのが上手い、とシノブはマチョという名の女の当惑した表情を見ながら唸る。
 
 図星! しまったといったさっきまでのこわ張った表情と違い、そこには正真正銘な不可解さを顔色に浮かべている。

 なんという極悪非道! 他のことはその通りですという表情をしておいて肝心要なこの一事のみは白を切り通すつもりだとは……この演技派女優め! 許せない絶対に白状させてやる、とシノブは一層の決意を以て追求にいく。

「なんのことですとはなんのことです、だ! よくもまぁそんな白々しい嘘を言えたものだ!」
「ですから、それはなんのことです?」
「とぼけないで!」
「とぼけていません。妾はあなたの言っていることがさっぱりで」

 なんて強情な奴だとシノブは悔しさで涙が込み上げてきた。
 こんな奴の不正によって敗れただなんて興奮のあまり血涙が出そう!

「ではあなたはそういった魅惑の術を使わずに最後の試験を合格したとでもいうつもり?」
「はい」

 図々しいにも程がある! その顔で良くもまぁそんな有り得ないことを言うだなんて!
 この女、頭がかなりおかしいのではないのか?

「ふざけるんじゃない!あんたみたいな化け物顔が選ばれるはずがないじゃない!」

 最早我慢できずシノブはぶちまけると、辺りは静かになった。
 シノブの荒い息だけ虚しく宙を漂い、それから鼻で笑う声が響いた。

「フッ随分とまぁ、くだらないことをあなたは言うのですね」
「くだらないですって?」

「くだらないことですわ。あなたは私を美しくないと言われるのですが、それはあなたと私の価値観が異なるに過ぎません。あなたが妾を醜いと糾弾したところでこの妾がああなんと自分はブサイクであるのか……など考えるはずもありませんわ。もちろん妾にも美醜による判断はありますが妾はあなたとそれを比較しようとは思いませぬ。何故なら妾とあなたでは文化といった民族が違うのですからね。花と葉でどちらが美か醜かを言い合っても無意味ですわ。比べるのなら花は同じ花同士で葉は同じ葉同士でやられればよろしいかと」

「言い訳がましいことをごたごたと! なぜ素直に自分は王子を誘惑したといえないのか!」
 シノブの言葉にマチョは今度は溜息をついた。

「よくよく残念ですわ。私はあなたには敬意を持っておりました。妾と同じく最終の最終試験まで残れる女性がこの世にいるとは思えませんでしたもの。良きライバルとして良き友としてこれからお付き合いしたいなと思っておりましたが……あなたにその気はないようですし、妾もこの会話でその気が失せました。だってあなたは信じられないほど下劣で愚かで醜い女ですからね」

 信じられない言葉にシノブが絶句しているとマチョは言葉を重ねて来る。

「美醜に普遍性はありませんが品性には普遍性があります。人を妄想で以って中傷し挙句の果てには得意顔で醜いと指弾すること……これが品性下劣でなくてなんでしょう。妾が選ばれたのは美醜の問題ではなく品性の問題ではないと少しはお考えになったらいかがです? 正直追加の最終試験は非常に残念なものと思っておりました。結局最後は殿方の気まぐれな判断に頼るだなんて今までの努力は何だったのか? 苦々しいものがございましたが、結果的に正しいものでした。王子はきちんと選ばれるべきものを選び、選ばれてはならないものを選ばなかった。やはり遠眼鏡から見ても分かるものには分かるのでしょう。品性の上下の差というものを。流石は王子様。改めて心よりお慕い申しあげまする」
「もういい、殺す」

 言うより早く既に刀が抜き放たれ敵を斬り宙には切り刻まれたドレスが舞っているもシノブは驚いた。
 いつのもように赤い雨、血が降ってこない。

「脱ぐ手間が省けましたわ」
 振り返るシノブが見たのはレスリングユニフォーム姿の女。腰を下ろし臨戦態勢を取っている。

 その構えからシノブは一瞬にして見抜く。この女、達人の域に入っている。
 よってシノブは間合いを取り、観察に入った。

「ふーんお似合いじゃない。あんたの鬼ゴリラ顔とそのお洋服はとても似合っているわよ」
「それを言うのならあなたもお似合いね。その短く薄く細く弱々しいみっともない身体を隠そうとしているその和装がね。まるで鶏ガラといったところね」
「鶏ガラ?」

 不快な物言いにシノブの胸の中はムカつきでまたもや満たされる。

「そうよ鶏ガラさん。肉のついていない骨みたいなあなた。まぁそれでもスープにはなれるから気に病むことはないわよ。もっともスープは主菜には絶対になれないけど。お分かり? あなたはそこ止りってことよ。メインデイッシュである妾の前座引き立て役、お疲れさま」
「あんたみたいな珍味風情が何を言っているのよ。お土産袋に入っている酒のつまみの分際が主菜気取りとは笑わせてくれるわ」
 
 雲が風で流れ月明かりのもとシノブとマチョは対峙する。

「では真の王妃決定戦を始めましょうか。まぁこれですっきりしますわ。あなたに対して完膚なきまでに教えられますからね。自分が王妃になれないのは必然的であったということを、妾が痛みと血と共にその身体と心に刻んであげますわ」
「あんたたち一族の陰謀を必ずや打ち砕く。これはその為の戦い。覚悟なさいこの鬼ゴリラ」
「かかってごらんなさい鶏ガラさん。忍者と戦うのは初めてでございますから、妾はとてもワクワクしておりますわよ」
  
 二人は重心を前にずらしだした。
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