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兄妹で忍者 (シノブ38)
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頭が、痛い。痛いというか重く、重いというか苦しく、苦しいというか痛く……不快の無限ループ状態のなかシノブは苦しんでいた。
まさか酒にも弱くなっているなんて……ああもうこの身体イヤだ! あの頃のように元に戻して! と一人では大きめなダブルベットの上をジッとしてはいられずのたうち回るしかなかった。このまま回復しなかったらもう一泊。もう一泊ってことはあの男と同室。昨夜は防げたが今夜はどうなるかは不明。女将の話では他の部屋は空かないし、まだお祭りの最中だからどこの宿も空きはしない。なんでどうしてこうなるの。シノブはベットから立ち上がり床に立とうとするが、すぐさま膝をそのまま屈し這いつくばり今朝の言葉が甦る。
「俺が看病するよ」
アカイの一言が脳裏に過りシノブは立ち上がり、眩暈から床へとへたり込む。でも看病なんて絶対にさせない! 近くにいて欲しくないしこれ以上恩を着せられたらまずい。ここは拒まなければならない。そうであるからには気合いで以って立ち上がり午前中には旅立てるようにしなければ。立て、立つんだジョ、シノブ! 床に這いつくばる己を鼓舞し立ち上がろうとすると眼の前には誰かの足が。
「随分とまぁ愉快な格好をしているな」
不快な重さと神経に触る冷たい響きの声がしシノブは反射的に答えた。
「兄さん!」
そう聞き慣れたこの声。身内ですら苦手さを覚えさせる雰囲気を以てのこの登場。顔を見ずとも分かる唯一無二的なこれは幻ではなく自分の兄以外に相違ないとシノブは後退りしてベットに腰を掛けた。
「噂通りかなり体調が悪いようだな。それに、頭の方もな」
「結構な挨拶ね。それでなにをしにやってきたの?」
シノブが見上げるとそこにはいつもの兄の姿があった。威圧してくるその目の険しさから伝わる非情さ。全身が細く鋭い刀身を思わせる抜き身の危険さ。兄であるシュ・スレイヤー。優男に見えるがその正体は王都における忍者護衛隊の筆頭でありその長でもあったもの。現在は後進の教育のために里へと帰っているがこの出張。シノブはすぐに勘付いた。あの件だろう。あの件以外ないが、さてどうする。
「里に帰るぞ。つべこべ言うんじゃない。これは議論をするまでもないことだからな」
「それはできないわ。兄さん、お願いだから聞いて。私は」
「黙れ、話はもう聞いている。だからここに来たことぐらいお前にだって分かるだろうに。王妃候補者殺害未遂。それがお前の罪状だ。大臣から手配書が俺に届いた。だが里では俺とごく一部のものしか知らない。オヤジにもオフクロにも知らせていない。この配慮に感謝し俺の手で大人しく捕まれ。」
「それは感謝するわ。けどねそうはいかないの。だいたいあれは濡れ衣で、むっ!」
動こうとするとシノブは身動きが取れない。影を縫われたかと顔を歪ませる。その動作を眼で捕えられないとは動体視力も衰えたのだなとも痛感した。
「みすみす縫われるとはお前らしくもない。もっとも体調が悪いようだから今日で幸いだった。いつものお前なら、なにが起こるか分からないからな」
そうだ兄さんはまだこっちの身になにが起こっているのか知らないからただの体調不良と見てくれている。これなら、とシノブは動かぬ体のなかで考える。ブラフやハッタリをを張ればここは退いてくれるのかもしれない。
「油断しちゃったわね。まさか兄さんの影縫いにかかるだなんてすごく久しぶり。でもねこちらには口があるから人を呼ぶこともできる。まさか私が一人旅をしているとか考えたりしていないよね?」
クソ雑魚な男と旅しているが、そこはどうでもいい。この自分と旅をするのなら猛者だと思ってくれるかもしれない、そこが肝心だ。兄さんは無敵の忍者ではない。強いには強いが私という天才に劣る強さの忍者。今日だって少しお酒臭いのは不利なのを承知で私に挑むために一杯飲んで勢いをつけてきたのだろう。ここでもしもう一人返ってきて二対一となったら、そこの計算を間違える兄さんではない。この人は昔から慎重派なんだからさ。
シノブは兄の冷静さをある意味で信頼したが、しかしスレイヤーは椅子に座り睨み付けた。なんだ、とシノブは混乱する。なにか、怒っている? 怒るとは何だろうとシノブは考える。違うタイプの怒りが来るのだろうか?
「話がもう一つある。同行者がいるだろ?」
「なんで知っているの?」
そこまで知っている! すると彼が信じがたい程の雑魚だということを既に把握していて、とシノブは恐慌に襲われそうになる。
「二人連れだとは調査済みだ。その彼とはさっき居酒屋で会った。いろいろと話をしてもらったよ。そして多くのことが分かった」
分かったってなにを? あの馬鹿は何を話したの!? まさか私と付き合っているとか婚約しているとか法螺を吹いたんじゃ! そうかそうかと王子との婚約に大反対な兄さんはこれ幸いにここで一献と、もしや兄弟の杯を交わしたんじゃ!? 問題を起こした私を罰として懲罰的に天下の駄目中年男と結ばせる嫌がらせとか! 片付いたってそこってゴミ箱でしょ! シノブは怒りで頭の中がいっぱいになる。よりによって一番話しちゃいけない人に会って嘘も本当もあることないこと全部ベラベラ喋るなんて! ヤバい、終わった! 昼前からせっせと居酒屋に通うあの駄目人間のせいで! とシノブは震えるもスレイヤーの顔に変化はない。
「捕まえるのは簡単だが、しかし、その前に一つ、お前にはやるべきことがある。それがなんだか分かるか?」
動けないながらもシノブは瞬きをする。兄さんは何を言っているのか? その意思はすぐに伝わったのかスレイヤーが立ち上がる。
「彼に謝れ」
「アカイに謝る?」
いったいに、なにを、私が? 彼に? シノブは本気でそう思った。
まさか酒にも弱くなっているなんて……ああもうこの身体イヤだ! あの頃のように元に戻して! と一人では大きめなダブルベットの上をジッとしてはいられずのたうち回るしかなかった。このまま回復しなかったらもう一泊。もう一泊ってことはあの男と同室。昨夜は防げたが今夜はどうなるかは不明。女将の話では他の部屋は空かないし、まだお祭りの最中だからどこの宿も空きはしない。なんでどうしてこうなるの。シノブはベットから立ち上がり床に立とうとするが、すぐさま膝をそのまま屈し這いつくばり今朝の言葉が甦る。
「俺が看病するよ」
アカイの一言が脳裏に過りシノブは立ち上がり、眩暈から床へとへたり込む。でも看病なんて絶対にさせない! 近くにいて欲しくないしこれ以上恩を着せられたらまずい。ここは拒まなければならない。そうであるからには気合いで以って立ち上がり午前中には旅立てるようにしなければ。立て、立つんだジョ、シノブ! 床に這いつくばる己を鼓舞し立ち上がろうとすると眼の前には誰かの足が。
「随分とまぁ愉快な格好をしているな」
不快な重さと神経に触る冷たい響きの声がしシノブは反射的に答えた。
「兄さん!」
そう聞き慣れたこの声。身内ですら苦手さを覚えさせる雰囲気を以てのこの登場。顔を見ずとも分かる唯一無二的なこれは幻ではなく自分の兄以外に相違ないとシノブは後退りしてベットに腰を掛けた。
「噂通りかなり体調が悪いようだな。それに、頭の方もな」
「結構な挨拶ね。それでなにをしにやってきたの?」
シノブが見上げるとそこにはいつもの兄の姿があった。威圧してくるその目の険しさから伝わる非情さ。全身が細く鋭い刀身を思わせる抜き身の危険さ。兄であるシュ・スレイヤー。優男に見えるがその正体は王都における忍者護衛隊の筆頭でありその長でもあったもの。現在は後進の教育のために里へと帰っているがこの出張。シノブはすぐに勘付いた。あの件だろう。あの件以外ないが、さてどうする。
「里に帰るぞ。つべこべ言うんじゃない。これは議論をするまでもないことだからな」
「それはできないわ。兄さん、お願いだから聞いて。私は」
「黙れ、話はもう聞いている。だからここに来たことぐらいお前にだって分かるだろうに。王妃候補者殺害未遂。それがお前の罪状だ。大臣から手配書が俺に届いた。だが里では俺とごく一部のものしか知らない。オヤジにもオフクロにも知らせていない。この配慮に感謝し俺の手で大人しく捕まれ。」
「それは感謝するわ。けどねそうはいかないの。だいたいあれは濡れ衣で、むっ!」
動こうとするとシノブは身動きが取れない。影を縫われたかと顔を歪ませる。その動作を眼で捕えられないとは動体視力も衰えたのだなとも痛感した。
「みすみす縫われるとはお前らしくもない。もっとも体調が悪いようだから今日で幸いだった。いつものお前なら、なにが起こるか分からないからな」
そうだ兄さんはまだこっちの身になにが起こっているのか知らないからただの体調不良と見てくれている。これなら、とシノブは動かぬ体のなかで考える。ブラフやハッタリをを張ればここは退いてくれるのかもしれない。
「油断しちゃったわね。まさか兄さんの影縫いにかかるだなんてすごく久しぶり。でもねこちらには口があるから人を呼ぶこともできる。まさか私が一人旅をしているとか考えたりしていないよね?」
クソ雑魚な男と旅しているが、そこはどうでもいい。この自分と旅をするのなら猛者だと思ってくれるかもしれない、そこが肝心だ。兄さんは無敵の忍者ではない。強いには強いが私という天才に劣る強さの忍者。今日だって少しお酒臭いのは不利なのを承知で私に挑むために一杯飲んで勢いをつけてきたのだろう。ここでもしもう一人返ってきて二対一となったら、そこの計算を間違える兄さんではない。この人は昔から慎重派なんだからさ。
シノブは兄の冷静さをある意味で信頼したが、しかしスレイヤーは椅子に座り睨み付けた。なんだ、とシノブは混乱する。なにか、怒っている? 怒るとは何だろうとシノブは考える。違うタイプの怒りが来るのだろうか?
「話がもう一つある。同行者がいるだろ?」
「なんで知っているの?」
そこまで知っている! すると彼が信じがたい程の雑魚だということを既に把握していて、とシノブは恐慌に襲われそうになる。
「二人連れだとは調査済みだ。その彼とはさっき居酒屋で会った。いろいろと話をしてもらったよ。そして多くのことが分かった」
分かったってなにを? あの馬鹿は何を話したの!? まさか私と付き合っているとか婚約しているとか法螺を吹いたんじゃ! そうかそうかと王子との婚約に大反対な兄さんはこれ幸いにここで一献と、もしや兄弟の杯を交わしたんじゃ!? 問題を起こした私を罰として懲罰的に天下の駄目中年男と結ばせる嫌がらせとか! 片付いたってそこってゴミ箱でしょ! シノブは怒りで頭の中がいっぱいになる。よりによって一番話しちゃいけない人に会って嘘も本当もあることないこと全部ベラベラ喋るなんて! ヤバい、終わった! 昼前からせっせと居酒屋に通うあの駄目人間のせいで! とシノブは震えるもスレイヤーの顔に変化はない。
「捕まえるのは簡単だが、しかし、その前に一つ、お前にはやるべきことがある。それがなんだか分かるか?」
動けないながらもシノブは瞬きをする。兄さんは何を言っているのか? その意思はすぐに伝わったのかスレイヤーが立ち上がる。
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