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不機嫌な忍者 (シノブ43)
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このお姉さんのお名前はカオルとのこと。カオルさんが同行してくれてとても気分が良いなとシノブは歩きながら感じた。同性が傍にいるだけで安心感が違う。敵ではなくて本当の仲間ができたという気分だ。話を聞いたところどうやらあの男は離婚したことに恨んだ元亭主が雇った悪党だという。元亭主はカオルさんがこのまま実家に帰るのを阻止すべくあちこちで人を配置して連れ戻そうとしているのだという。
「ここまではなんとかうまく行っていたのですが、この先の町へ行く途中にとうとう見つかってしまってああして逃げていたわけです」
なるほど大変だなとシノブは同情しながらカオルを観察する……なにか違和感が、ある。話に不自然なところはないし態度はごく普通。所持品だって不審なところは、無い。だがしかしシノブはそこが引っ掛かった。まるでそうするように徹底的しているような感じで私がもしも同じことをするとしたら……と物事は疑いだしたらキリがない。所詮は自身の心中に住まう疑心暗鬼がつくりだしたものであるも、シノブはひとまずその直感を否定せずにそのまま据え置くこととした。
「あのつかぬことをお尋ねしますが、御二人は御兄妹なのでしょうか?」
「違います」
雑談からの不意討気味な質問にシノブはしまった! と反射的に拒否の言葉を使ったことに驚いた。兄妹でなかったらそれは夫婦になるし主従関係なら説明が面倒になるしまずい! 口裏合わせなんてしていないし、アカイがもしもここぞとばかりにこの失言を利用して、いつものように俺達は夫婦とか言い出したらカオルさんから見た私の印象が一変してしまう。ええ……こんなのと夫婦なの? そういう趣味とかもしかしてご職業? ああお察し……と同性から蔑みの目で見られたらアカイを殺すしかなくなっちゃう!
「えっ違うのですか。するともしかして」
「叔父と姪の関係です」
後ろのアカイの発言にシノブは言葉を失った。それはそうだがどうした急に? 私が言って貰いたい言葉を言うとかどうしたの?
「あっそうだったのですね。いえてっきり御夫妻かなと」
「そんなことありませんよ。それだと年が離れすぎですし」
「いえいえそんな。アカイさんはまだそのようにはとても見えませんよ」
「そうですか? アハハッいやいやいや」
アカイたちが笑い合っているのを見るシノブは今度も猛烈な違和感に襲われる。おかしい、なにこの会話? カオルさんとアカイが楽し気に談笑しているだけなのに、なんなのこの奇妙な感覚は。今まで感じたことのない気分だ。
「俺達は中央を目指しています。姪のシノブと旅行して帰る途中なんですよ」
「中央にですか! まぁ偶然ですね。私も実家がそちらのほうですので、しばらくは御同行できますね」
「そうなのか! ではしばらくなんて言わずに最後までお送りいたしますよハハッ。いいよなシノブ」
アカイの質問にシノブは戸惑いながら応えるしかなった。私を呼ぶ声がいつもと、違う。
「うっうんもちろんだよアカ、オホンッ叔父さん。カオルさんも一緒に行きましょう」
なぜどもる? 声が縮こまる? とシノブは混乱した頭で考える。なんだろう何かがおかしい。それはアカイのことであっていつもと違う……とシノブはアカイの目を見るとその視線は自分にではなくカオルの胸元に注がれているのが分かった。微動だにしないその視線の粘っこさ! こいつは! とシノブは心の中で叫んだ。アカイがカオルさんを狙っている!
標的を変えた! なんて男だ! 人の弱みに付け込む最低な男! 知っていたけど! 私もある意味で弱みに付け込まれて荷物を持ってもらっているが。さてはこの大人しさそうな性格と胸の大きさに目が眩んだなこの男。納得するしかない理由だ! なんと分かりやすい俗っぽい欲望だろう。カオルさんは離婚ほやほやでまず周りに男がいないことは確定&さっき大ピンチを助けたことによってチャンスが来たと勘違いしているはず。助けてやったんだから、いいだろ? なぁ? という男の真っ直ぐな欲望がこいつの脳内を駆け巡りそのことで夢中になっているのだろう。その視線のいやらしさが何よりの証拠! 真実は一つ!
だがそれでもしかしこれは……喜ぶべきところではないのかとシノブはまたもや自問自答に陥る。だってこのまま私とアカイが二人だけで旅を続けたらこいつは私を嫁にしようと変な画策をあれこれするに決まっているし、最後にそうじゃないと教えるのも緊張しないといけないし、それならここでカオルさんにあげちゃったら全部解決……私の苦悩が解消する……いやいやだからそれが駄目なんだって、とシノブは頭を振るう。
ここでアカイがカオルさんにほいほい付いて行ったら私の旅が終わってしまう。だって荷物持ちはいなくなるし敵とも戦えなくなる。なんとしてでもこいつを最後まで私と王子のために協力させなければならない。だからここまで耐え難きを耐え忍び難きを忍んできたわけだし……シノブがそう考えながら歩いているとまたもや笑い声。
シノブはムカムカした。こめかみが震える。いや別にいいのよこれは、アカイがカオルさんと結婚したほうが私は助かる。そう、私は自分の気持ちをきちんと分けられる女。ふたつをひとつにしてごっちゃにしない。関係ないもの同士を関係あるように結ばせて、思考を混乱させるような愚を犯さない。理性的とはそういうこと。
私は決してカオルさんに嫉妬を抱いていないしアカイが浮気をしているとも全く思ってなどいない。荷物持ちと護衛がいなくなることに危機感を覚えているだけ。それだけだから勘違いするんじゃないわよ! しかしこいつカオルさんの揺れに合わせて視線も合わせているってなに? 自動追尾型なのその瞳? というかどこを見ながら会話しているの? 恥ずかしいな……姪設定だけど他人設定の方がよかったかもしれない。こんな外に出したらいけないタイプの叔父がいたら座敷牢に閉じ込めてしまうところ。シノブは心の中でアカイに対して叱責しながら考える。どうにかして二人を引き裂かなければならないと。それが世界の平和と私のためになるのだから。
「ここまではなんとかうまく行っていたのですが、この先の町へ行く途中にとうとう見つかってしまってああして逃げていたわけです」
なるほど大変だなとシノブは同情しながらカオルを観察する……なにか違和感が、ある。話に不自然なところはないし態度はごく普通。所持品だって不審なところは、無い。だがしかしシノブはそこが引っ掛かった。まるでそうするように徹底的しているような感じで私がもしも同じことをするとしたら……と物事は疑いだしたらキリがない。所詮は自身の心中に住まう疑心暗鬼がつくりだしたものであるも、シノブはひとまずその直感を否定せずにそのまま据え置くこととした。
「あのつかぬことをお尋ねしますが、御二人は御兄妹なのでしょうか?」
「違います」
雑談からの不意討気味な質問にシノブはしまった! と反射的に拒否の言葉を使ったことに驚いた。兄妹でなかったらそれは夫婦になるし主従関係なら説明が面倒になるしまずい! 口裏合わせなんてしていないし、アカイがもしもここぞとばかりにこの失言を利用して、いつものように俺達は夫婦とか言い出したらカオルさんから見た私の印象が一変してしまう。ええ……こんなのと夫婦なの? そういう趣味とかもしかしてご職業? ああお察し……と同性から蔑みの目で見られたらアカイを殺すしかなくなっちゃう!
「えっ違うのですか。するともしかして」
「叔父と姪の関係です」
後ろのアカイの発言にシノブは言葉を失った。それはそうだがどうした急に? 私が言って貰いたい言葉を言うとかどうしたの?
「あっそうだったのですね。いえてっきり御夫妻かなと」
「そんなことありませんよ。それだと年が離れすぎですし」
「いえいえそんな。アカイさんはまだそのようにはとても見えませんよ」
「そうですか? アハハッいやいやいや」
アカイたちが笑い合っているのを見るシノブは今度も猛烈な違和感に襲われる。おかしい、なにこの会話? カオルさんとアカイが楽し気に談笑しているだけなのに、なんなのこの奇妙な感覚は。今まで感じたことのない気分だ。
「俺達は中央を目指しています。姪のシノブと旅行して帰る途中なんですよ」
「中央にですか! まぁ偶然ですね。私も実家がそちらのほうですので、しばらくは御同行できますね」
「そうなのか! ではしばらくなんて言わずに最後までお送りいたしますよハハッ。いいよなシノブ」
アカイの質問にシノブは戸惑いながら応えるしかなった。私を呼ぶ声がいつもと、違う。
「うっうんもちろんだよアカ、オホンッ叔父さん。カオルさんも一緒に行きましょう」
なぜどもる? 声が縮こまる? とシノブは混乱した頭で考える。なんだろう何かがおかしい。それはアカイのことであっていつもと違う……とシノブはアカイの目を見るとその視線は自分にではなくカオルの胸元に注がれているのが分かった。微動だにしないその視線の粘っこさ! こいつは! とシノブは心の中で叫んだ。アカイがカオルさんを狙っている!
標的を変えた! なんて男だ! 人の弱みに付け込む最低な男! 知っていたけど! 私もある意味で弱みに付け込まれて荷物を持ってもらっているが。さてはこの大人しさそうな性格と胸の大きさに目が眩んだなこの男。納得するしかない理由だ! なんと分かりやすい俗っぽい欲望だろう。カオルさんは離婚ほやほやでまず周りに男がいないことは確定&さっき大ピンチを助けたことによってチャンスが来たと勘違いしているはず。助けてやったんだから、いいだろ? なぁ? という男の真っ直ぐな欲望がこいつの脳内を駆け巡りそのことで夢中になっているのだろう。その視線のいやらしさが何よりの証拠! 真実は一つ!
だがそれでもしかしこれは……喜ぶべきところではないのかとシノブはまたもや自問自答に陥る。だってこのまま私とアカイが二人だけで旅を続けたらこいつは私を嫁にしようと変な画策をあれこれするに決まっているし、最後にそうじゃないと教えるのも緊張しないといけないし、それならここでカオルさんにあげちゃったら全部解決……私の苦悩が解消する……いやいやだからそれが駄目なんだって、とシノブは頭を振るう。
ここでアカイがカオルさんにほいほい付いて行ったら私の旅が終わってしまう。だって荷物持ちはいなくなるし敵とも戦えなくなる。なんとしてでもこいつを最後まで私と王子のために協力させなければならない。だからここまで耐え難きを耐え忍び難きを忍んできたわけだし……シノブがそう考えながら歩いているとまたもや笑い声。
シノブはムカムカした。こめかみが震える。いや別にいいのよこれは、アカイがカオルさんと結婚したほうが私は助かる。そう、私は自分の気持ちをきちんと分けられる女。ふたつをひとつにしてごっちゃにしない。関係ないもの同士を関係あるように結ばせて、思考を混乱させるような愚を犯さない。理性的とはそういうこと。
私は決してカオルさんに嫉妬を抱いていないしアカイが浮気をしているとも全く思ってなどいない。荷物持ちと護衛がいなくなることに危機感を覚えているだけ。それだけだから勘違いするんじゃないわよ! しかしこいつカオルさんの揺れに合わせて視線も合わせているってなに? 自動追尾型なのその瞳? というかどこを見ながら会話しているの? 恥ずかしいな……姪設定だけど他人設定の方がよかったかもしれない。こんな外に出したらいけないタイプの叔父がいたら座敷牢に閉じ込めてしまうところ。シノブは心の中でアカイに対して叱責しながら考える。どうにかして二人を引き裂かなければならないと。それが世界の平和と私のためになるのだから。
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