わがおろか ~我がままな女、愚かなおっさんに苦悩する~

かみやなおあき

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忍者VSオオゼキ兄弟 (シノブ53)

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 徐々にではなくもはや瞬く間にという言葉がぴったりなぐらいに、シノブは己の力が元に戻ってきているという恍惚さの中にいた。

 自分はもとの強さに戻りつつある。身体の自由が利き、それに伴い何でもできる全能感で身体に力がみなぎってくる。それだけでもはや至福である。誰も頼らなくて良く変な男に同行を願うことのないぐらいの力。

 私はいまそれを持っている、取り戻した、そして雪辱を晴らす時が来た。まずはこちら側からとシノブは二人の巨人と対峙する。さながら風神(兄)と雷神(弟)そのもの。対するシノブは力を取り戻したとはいえ女にしては長身だが細身の忍者。その剛腕で一払いされたら音も無くへし折れてしまいそうな棒切れのような存在。

 予備動作も合図もなく二人の巨人が同時に動こうとする。これは左右からの挟撃を仕掛けるためであり、雷神は左斜めに飛びその反対の右側には風神が、いない。

「うっ動けん!」

 動けないのである。その影にはクナイが既に刺さっていた。この瞬間に挟撃攻撃によるコンビネーションは破綻しシノブは雷神に目掛けて跳び、抜刀。

「ちいぃっ!」

 交錯の際に雷神の攻撃をシノブはかわしつつ、その左腕を斬ったものの傷は深くはない。もとよりこれでシノブは倒そうなどしていない。狙いは跳んだ勢いのまま辿り着ける影を縫われた風神のもと。風神も己が狙いと察し意識では構え、それから叫んだ。

「剛体!」

 ご存じ鬼ン肉一族の奥義。初見ではこの術は見抜けず多くのものが、その貴重な武器が破壊され戦闘継続が困難となってきたが、しかしシノブは違う!

「その技はもう見ているから」

 それが来ると分かり切っているために防御無視の貫手の術を刀に掛け、風神の首を狙う!

「ぐわぁ!!」

 術と術の切れ目によって動けるようになった風神は間一髪で避け腕への斬撃となった。切断こそ免れたもののその自慢の右腕は深く斬られた。これで風神の攻撃力は大幅にダウン。

「おのれえええ!」

 着地から反転した雷神が返ってくる。逆襲のタックルで迫ってきた。空間そのものを呑み込むような怒涛の勢いそのままに回避は不可能。

「掴んだ!」

 雷神はシノブを両腕で抱きしめ技を掛けるため回転しながら宙へと跳ね、必殺雷落としだ! と思うと同時に爆ぜた。落下してくる焦げ焦げとなった大男とぼろきれと化した上着。

「あんたが掴んだのは私の服と爆弾だよ」

 これぞ身代わりの術! 受け身も取れず地面に叩きつけられた雷神はここで敢え無くKO。

「なっ! ぐっ、つぇええなお前……」

 風神はファイティングポーズをとるがその右腕は下がったまま。先ほどのシノブの一撃で右腕はもう使えなくなった、わけではなくこれは罠! 深くは斬られたものの稼働不能というものではない。

 シノブは攻撃力という面では圧倒的ではないのだ。そう風神は誘いをかけた。この状況を見たら右腕側に回り込んで戦おうと思うはずだと。罠にかかり右側に回り込んだら右腕を用いて一気に攻勢に掛ける。拳に豪体術を掛け鉄拳にてシノブを殴り倒し全身を叩き潰す。

 そうシノブは防御面でもかなり不利であり回避に掛けるしかない。騙せたら勝ち、風神はわざと苦痛に表情を歪ませながらジリジリと距離を詰めていく。騙し合いなら、俺だって負けない。右側に、来い。

 間合いを詰めていく中でシノブが動き出した。やはり右側へ! 貰った! 右の拳に剛体術を掛けるもシノブは右側にへ踏み込み、そこを支点にして反転し左へと跳んだ。まるで始めからそうする予定でしかなかった動き!

 フェイントにかかり風神は驚きつつ一手遅れて左フックを掛けるも空振り、それどころか左腕も斬られシノブはそのまま背中へと回り、首に縄を掛け締め上げる。完全に気道を塞がれた絶体絶命な感覚に風神は襲われた!

「はじめから右腕が使えるのは分かっていたよ」

 バレていた! 死刑宣告のような言葉に風神は声にならない悲鳴を上げた。

「なんでそれを!」

 擦れ声であるもシノブにはきちんと伝わった。

「あんたみたいなマッチョそうな根性主義者が、痛いからって右腕を垂れさせるわけないし表情に出すもんか。私の斬撃はそこまで致命的なもので無かったし。だからあれは誘いだと踏んだのよ」

 そこまで読んでいたとは! 薄れていく意識のなかで風神は思う。ここまでなにもかもが上手くいかない戦いがかつてあっただろうか! まるで全ての手が読まれていたかのような運びとなってしまって。

「あんたたちの敗因はあの時に私を殺さなかったことだよ。私は二人と戦うシュミュレーションを旅の途中で何度もやってきた。どうなコンビネーションでくるのか。二人なら戦いのスタイルが同じか違うか。あらゆる組み合わせで以って戦い続け心の中で対策をとってきた。いつか二人とは絶対に戦う日が来ると分かっていたからね。そっちはどう? 私と戦う日を想像したことはあった?」

 ない……そんなことはなかった……出たところ勝負でありそれでも俺達は負けたことなど無かった。ましてやあんな弱くて可哀想な女を相手に戦うなど想像すらしていなかった。

「あんたたち二人は強いわよ。もし初見のまま戦っていたら負けていたかもしれない。でもあの時に倒さずそれどころか私に沢山の時間を与えてしまった。特にコンビネーション攻撃をさせずに各個撃破する方法を模索する時間をね。この私に対してそれは致命的な敗因となった」

 清々しいほどの完敗だと風神は消え入る直前の意識でそう思い、それから闇が来た。落ちたか、とシノブは腕を解き立ち上がり二人の倒れ伏す男を見下ろしながら告げた。

「命だけは奪わないであげる。そっちも一度私を見逃してくれたからね。これで御相子よ。でも次は確実に殺るからそのつもりで」

 言い終わるとシノブは思った。私、超カッコいいなと。こんなに理想的な会心の勝利が出来ちゃうなんて想像以上に出来過ぎでしょ!

 どうだとシノブは木に縛り付けてあるアカイの方を振り向き駆け出した。見直したでしょびっくりしたでしょ、そして思いなさい、私とあなたは住んでいる場所が違うんだってことを。

「君はすごい」「今までの君は全部そうじゃなかったんだね」ウキウキなシノブはアカイからどんな言葉が来るかと期待しながら近づくと、意識がなかった。なんかこやつ気絶している、とシノブは確認するとその頬を叩いた。

「ちょっと起きてよアカイ!」
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