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救世主と忍者の新たな使命 (アカイ54)
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ことは全て秘密裏に片付けられたようだった。
封印の解除は城周辺にて限定的に行われたために外にはまだ漏れていなかった。城に集結していた鬼ン肉一族は逮捕されたものの、彼らにはもはや脅威はないため後に釈放されるとのこと。
「そなたのおかげで世界の秩序は元に戻った。礼を言うぞキリヒトまたは救世主」
同じ机に座っている俺はイエス王子に名前を呼ばれ感謝を述べられた。これが王子かとそのカッコよさに圧倒されるも何故か脅威を感じなかった。それどころかどこか懐かしい、いや不思議な親しみやすささえ覚えている。あれかな? 俺には構ってくれるクラスメイトの女子はいなかったが構ってくれるイケメン男子がいたなという記憶があるからそれか?
「いや、その、こちらこそありがとうぞんじあげまして」
礼儀作法なんてろくに習ってこなかったため、意味不明な口上を述べると王子は苦笑いした。
「やめてくれ。そなたと余は対等の関係なんだからな」
「どこが?」
俺は素のままそう返すと王子が机を叩いて笑った。
「その反応こそが、それだな。余とそなたは同じなのだ。ともに救世主。余はこの現世においての、そしてそなたは違う世界からのだ」
言いながら王子は俺の胸を指差した。
「そなたも余の胸を指差せ」
言われたので俺は王子の胸を指差すと、自分の胸に炎が宿ったかのように熱を持った。
「そなたの炎は余の胸に宿り、そして余からそなたへと戻った。余の光と共にな。血を分かち合ったもの同士どころか炎と光を分かち合ったもの同士だ。対等でないとしたらなんだというのか?」
「いや、でも、しかしその」
「おっするとこう言いたいのか? 対等ってなんだ? お前は俺より下の癖に、といった反感をもっているとか?」
「いやいやそうじゃなくてその」
「冗談だ。まぁこのことは別に公表するということではないからな。知っているのは余とそなた、それだけだ。マチョにだって教えるつもりはない」
シノブは? と俺は思ったが王子が言った。
「そなたもここだけの話にしてくれ。まっ誰にも話さないと信頼しているから伝えたのだがな」
俺は掌を見ると光って見えた。見覚えのあるその輝き。
「……もしかしてあの時に俺を導いてくれたのは」
「ご存じのように余だよキリヒト。死に瀕している余は感じたのだ。そなたの炎をな。だから最後の力で以って呼んだといって過言ではない。とはいえ」
王子は俺の掌をとると自らの掌で以って影を作り、光を消した。
「弱い輝きを放つのみだ。こちらも炎を出せるがちょっとあったかいなと感じる程度の火だ。お互いに身体に残ったものはこの程度、まぁこんなものだ。さて」
王子は俺に目を合わせながら、言った。
「どうしたい救世主?」
「えっと……先ず借りた財布を返したいな。それとお爺さんにお礼をね」
「いや、そうではなくてだな……」
城を出て道すがら俺は考えた。どうしたいのだろうか?
王子は俺に提案をしてきた、望みは何だと。公式に表彰することはできないが、その代わりにこちらの可能な限りの礼をしたいと。金か地位か土地かそれとも他の何かか。財布の中身の返済はどうでもいいと笑われたものの、あの王子ならなんでも願いを聞き入れてくれるのだろう。だが俺はその返事を保留した。
すると王子は笑顔で肩を叩きながら言った。
「ならゆっくりと考えてからまた来てくれ。余はいつでもそなたと会うと。なぁ兄弟」
その言い方だと兄はそちららしいが、年なら俺の方がずっと上だとは思うものの口に出さなかった。そこについても俺は成長したはずなのだから。
それよりも俺は考えなくてはならない、俺は何を望んでいるのか。そんなのは当然幸せだが、それはそのまま。
「……シノブ」
あの時以来俺はシノブとは会っていない。俺は王子によって治療を受け続けるその間に彼女はいなかった。
もう数日が経ちその気配はどこにもない。俺の元から去ったのだろう。使命を終えたのだから、もう俺達の関係は……そんなことをぐるぐると考えながら、最後に泊まった宿屋に向かった。
一応、荷物があるし。捨てられたらと心配していたら王子から大丈夫だと言われるも一応戻ることにした。というか俺にとって戻る場所なんかこの世界にはどこにもないし。
だったらとりあえずここで、と部屋に入ると声を掛けられた。
「遅かったね」
シノブがいつもの旅の衣装で荷物のうえに座っていた。
「準備は済んでいるからもう行こうか」
「どこに?」
呆然とする俺はアホみたいな声で尋ねた。
「どこにって……決まっているじゃない」
いつも俺に見せていた呆れ顔でシノブは答える。
「私の実家のある里よ。だからアカイ」
シノブはふしぎと笑った。
「荷物を持ってよ」
分かった、これが最後の使命だと俺は納得した。シノブが里に戻ることで全ては丸く収まる。
家に帰るまでが遠足・使命です。
そうだとも俺は小学校の頃の担任の言葉をよく覚えている。そんなことを道すがら懐かしみながら俺はシノブの荷物を背負い共に歩いた。
ぽつぽつと会話をすると、どうやらシノブの力は元に戻ってしまったらしい。その元に戻ったは俺が知っている方のほうであって、つまり弱いほう。
「王子の血は封印の力の源らしくてね。それを浴びてしまって私は弱くなっちゃったみたいなの」
それはそのまま王子の復活と共にシノブの力もまた封印されてしまったとのこと。良い、すごく、良い。巨大な力を持った美少女が力を封印されてしまった設定、やはり良い。考えてみるとこれは俺が最初にシノブに抱いた感想であって、意外と俺は外していなかったと自分の判断に対して妙な感想を抱いた。
「治療というか封印解除は可能みたいなんだけど時間が掛かるようなの。方法はすごく限定的なものらしいけれど、それでもまぁいつかは元に戻れるようだから大丈夫みたい」
楽観的だなと思いつつも俺は思った。シノブは頗る機嫌がいいと。とてもふしぎだ。世界は不思議に統治されているとはいえふしぎだ。だってシノブの目的は王妃になることだったのに。
王子はそのまま鬼みたいな顔をした女を嫁にするようだ。俺はすごいなと思った。これが王だ偉い人は違う。男は凄まじい力を持つ女を嫁に持つ男を尊敬する生き物なのだ。
高貴なるものの義務ってやつ? そんな男がシノブを選ばなくても俺は少しも怒りを覚えない。だがシノブは違うはずだ。あんなに頑張っていたのに結局は願いは叶わずに世界だけを救った。
偉いなぁシノブはと俺はこちらにも強い敬意を抱いた。それもまた王子への愛とも考えると更に偉さが増した。使命に生きた女の子だったわけだ。
だけども俺は? と空を見上げた。あるのは濃いめの青だけだ。
そうだ俺もまた使命だけを成し遂げて光の輪に包まれてこの世界から消失するはずだ。あの時に俺は拒否してしまったから一時停止状態なのだろう。
この広い空のどこかにあるはずのそれ。今か今かと待ち構えているはず。あちらとしては今すぐにでも発動させたいのだろう。
だけどもう少しだけ待ってくれ。シノブの荷物を里に届けなくてはならないのだから。というか俺の使命って要約すると、そのひとつになるのかもしれない。このやけに重い荷物との旅。シノブには背負いきれないもの。
人の苦しみを代わりに背負う。
誠に実に俺らしくてなかなかによろしい。愛した女のために頑張る。理想の俺らしくてよろしい。それにしてもこの坂道は苦しいな。人の一生は荷物を背負って坂道を登るが如くってやつか?
シノブは身体が弱いとはいえ地元であるからかすいすいと登っていく。ほんとうに身体が弱体化したままなのか疑わしいが、待ってくれ待って。
「アカイ早く」
笑いながら言うがそんなに急がせないでくれ。もう少しだけこの世界に居させてくれ。君がいるこの世界に俺は少しでも長くいたい。俺の願いはそれだけだ。そしてそれがとてつもなく偉大な願いなんだ。
坂道を登り切ると村の門が見えた。ゴールだ。つまりあそこまで歩いたら俺は……そう考えると俺は二の足を踏むというか地面に足を強く踏んだ。一歩一歩を大事にするように。
それを眺めていたシノブは不審な眼つきをこちらに向けたすぐ後に、怪しげな眼つきになりそれから俺の手を取り、引っ張った。
やめて俺を殺す気か? 当初の目的通りに! と俺は思うとシノブは無言で微笑みながら俺を引いていく。
でも俺の心はなんだか満たされる。無限に満たされていく。身体のどこかにある空っぽな空間がシノブで埋まっていく。
このシノブの手に引かれながら歩くこの時間が永遠になったら、いや、いまのこの瞬間が俺にとっての永遠なんだ。僅かなこの時を永遠にしたいと願うその心こそが永遠となり、俺は生きたということなんだ。そうだ俺は生きた、だから死ぬ、死ねる、永遠を願ったのだから。
ああ! 丘を越えてしまった! おお! 神の国が現れ俺はそこを訪れてしまうぞ! あっという間に門に辿り着くと村の人たちが集まってきた。
シノブのお出迎いなのだろう。
正面にスレイヤーとカオリもいる。彼女が手を振ってくれたので振り返したいができない。俺の左手にはシノブの荷物、俺の右手にはシノブの手。いつかは離れてしまう手が握られている。
少し早歩きになったためかシノブは呼吸を整えている。挨拶を言う力を溜めているのだろう。シノブはひとつ息を吐きそれから吸った。それが掌から伝わってきた。
そのシノブの命の息吹。
「みんな紹介するね。この人は私の」
挨拶の口上の最中に俺は空を見上げた。変わらぬ青空。さぁエンディングだ。もう現れていいぞ光の輪よ。あの輝きで以って俺を予定通りに終わらせてくれ。
しかしそんな気配はまるで感じられない。どうしてだ使命は終えるのだぞ?
それともなにか? 俺の使命はまだあるということなのかな?
完
封印の解除は城周辺にて限定的に行われたために外にはまだ漏れていなかった。城に集結していた鬼ン肉一族は逮捕されたものの、彼らにはもはや脅威はないため後に釈放されるとのこと。
「そなたのおかげで世界の秩序は元に戻った。礼を言うぞキリヒトまたは救世主」
同じ机に座っている俺はイエス王子に名前を呼ばれ感謝を述べられた。これが王子かとそのカッコよさに圧倒されるも何故か脅威を感じなかった。それどころかどこか懐かしい、いや不思議な親しみやすささえ覚えている。あれかな? 俺には構ってくれるクラスメイトの女子はいなかったが構ってくれるイケメン男子がいたなという記憶があるからそれか?
「いや、その、こちらこそありがとうぞんじあげまして」
礼儀作法なんてろくに習ってこなかったため、意味不明な口上を述べると王子は苦笑いした。
「やめてくれ。そなたと余は対等の関係なんだからな」
「どこが?」
俺は素のままそう返すと王子が机を叩いて笑った。
「その反応こそが、それだな。余とそなたは同じなのだ。ともに救世主。余はこの現世においての、そしてそなたは違う世界からのだ」
言いながら王子は俺の胸を指差した。
「そなたも余の胸を指差せ」
言われたので俺は王子の胸を指差すと、自分の胸に炎が宿ったかのように熱を持った。
「そなたの炎は余の胸に宿り、そして余からそなたへと戻った。余の光と共にな。血を分かち合ったもの同士どころか炎と光を分かち合ったもの同士だ。対等でないとしたらなんだというのか?」
「いや、でも、しかしその」
「おっするとこう言いたいのか? 対等ってなんだ? お前は俺より下の癖に、といった反感をもっているとか?」
「いやいやそうじゃなくてその」
「冗談だ。まぁこのことは別に公表するということではないからな。知っているのは余とそなた、それだけだ。マチョにだって教えるつもりはない」
シノブは? と俺は思ったが王子が言った。
「そなたもここだけの話にしてくれ。まっ誰にも話さないと信頼しているから伝えたのだがな」
俺は掌を見ると光って見えた。見覚えのあるその輝き。
「……もしかしてあの時に俺を導いてくれたのは」
「ご存じのように余だよキリヒト。死に瀕している余は感じたのだ。そなたの炎をな。だから最後の力で以って呼んだといって過言ではない。とはいえ」
王子は俺の掌をとると自らの掌で以って影を作り、光を消した。
「弱い輝きを放つのみだ。こちらも炎を出せるがちょっとあったかいなと感じる程度の火だ。お互いに身体に残ったものはこの程度、まぁこんなものだ。さて」
王子は俺に目を合わせながら、言った。
「どうしたい救世主?」
「えっと……先ず借りた財布を返したいな。それとお爺さんにお礼をね」
「いや、そうではなくてだな……」
城を出て道すがら俺は考えた。どうしたいのだろうか?
王子は俺に提案をしてきた、望みは何だと。公式に表彰することはできないが、その代わりにこちらの可能な限りの礼をしたいと。金か地位か土地かそれとも他の何かか。財布の中身の返済はどうでもいいと笑われたものの、あの王子ならなんでも願いを聞き入れてくれるのだろう。だが俺はその返事を保留した。
すると王子は笑顔で肩を叩きながら言った。
「ならゆっくりと考えてからまた来てくれ。余はいつでもそなたと会うと。なぁ兄弟」
その言い方だと兄はそちららしいが、年なら俺の方がずっと上だとは思うものの口に出さなかった。そこについても俺は成長したはずなのだから。
それよりも俺は考えなくてはならない、俺は何を望んでいるのか。そんなのは当然幸せだが、それはそのまま。
「……シノブ」
あの時以来俺はシノブとは会っていない。俺は王子によって治療を受け続けるその間に彼女はいなかった。
もう数日が経ちその気配はどこにもない。俺の元から去ったのだろう。使命を終えたのだから、もう俺達の関係は……そんなことをぐるぐると考えながら、最後に泊まった宿屋に向かった。
一応、荷物があるし。捨てられたらと心配していたら王子から大丈夫だと言われるも一応戻ることにした。というか俺にとって戻る場所なんかこの世界にはどこにもないし。
だったらとりあえずここで、と部屋に入ると声を掛けられた。
「遅かったね」
シノブがいつもの旅の衣装で荷物のうえに座っていた。
「準備は済んでいるからもう行こうか」
「どこに?」
呆然とする俺はアホみたいな声で尋ねた。
「どこにって……決まっているじゃない」
いつも俺に見せていた呆れ顔でシノブは答える。
「私の実家のある里よ。だからアカイ」
シノブはふしぎと笑った。
「荷物を持ってよ」
分かった、これが最後の使命だと俺は納得した。シノブが里に戻ることで全ては丸く収まる。
家に帰るまでが遠足・使命です。
そうだとも俺は小学校の頃の担任の言葉をよく覚えている。そんなことを道すがら懐かしみながら俺はシノブの荷物を背負い共に歩いた。
ぽつぽつと会話をすると、どうやらシノブの力は元に戻ってしまったらしい。その元に戻ったは俺が知っている方のほうであって、つまり弱いほう。
「王子の血は封印の力の源らしくてね。それを浴びてしまって私は弱くなっちゃったみたいなの」
それはそのまま王子の復活と共にシノブの力もまた封印されてしまったとのこと。良い、すごく、良い。巨大な力を持った美少女が力を封印されてしまった設定、やはり良い。考えてみるとこれは俺が最初にシノブに抱いた感想であって、意外と俺は外していなかったと自分の判断に対して妙な感想を抱いた。
「治療というか封印解除は可能みたいなんだけど時間が掛かるようなの。方法はすごく限定的なものらしいけれど、それでもまぁいつかは元に戻れるようだから大丈夫みたい」
楽観的だなと思いつつも俺は思った。シノブは頗る機嫌がいいと。とてもふしぎだ。世界は不思議に統治されているとはいえふしぎだ。だってシノブの目的は王妃になることだったのに。
王子はそのまま鬼みたいな顔をした女を嫁にするようだ。俺はすごいなと思った。これが王だ偉い人は違う。男は凄まじい力を持つ女を嫁に持つ男を尊敬する生き物なのだ。
高貴なるものの義務ってやつ? そんな男がシノブを選ばなくても俺は少しも怒りを覚えない。だがシノブは違うはずだ。あんなに頑張っていたのに結局は願いは叶わずに世界だけを救った。
偉いなぁシノブはと俺はこちらにも強い敬意を抱いた。それもまた王子への愛とも考えると更に偉さが増した。使命に生きた女の子だったわけだ。
だけども俺は? と空を見上げた。あるのは濃いめの青だけだ。
そうだ俺もまた使命だけを成し遂げて光の輪に包まれてこの世界から消失するはずだ。あの時に俺は拒否してしまったから一時停止状態なのだろう。
この広い空のどこかにあるはずのそれ。今か今かと待ち構えているはず。あちらとしては今すぐにでも発動させたいのだろう。
だけどもう少しだけ待ってくれ。シノブの荷物を里に届けなくてはならないのだから。というか俺の使命って要約すると、そのひとつになるのかもしれない。このやけに重い荷物との旅。シノブには背負いきれないもの。
人の苦しみを代わりに背負う。
誠に実に俺らしくてなかなかによろしい。愛した女のために頑張る。理想の俺らしくてよろしい。それにしてもこの坂道は苦しいな。人の一生は荷物を背負って坂道を登るが如くってやつか?
シノブは身体が弱いとはいえ地元であるからかすいすいと登っていく。ほんとうに身体が弱体化したままなのか疑わしいが、待ってくれ待って。
「アカイ早く」
笑いながら言うがそんなに急がせないでくれ。もう少しだけこの世界に居させてくれ。君がいるこの世界に俺は少しでも長くいたい。俺の願いはそれだけだ。そしてそれがとてつもなく偉大な願いなんだ。
坂道を登り切ると村の門が見えた。ゴールだ。つまりあそこまで歩いたら俺は……そう考えると俺は二の足を踏むというか地面に足を強く踏んだ。一歩一歩を大事にするように。
それを眺めていたシノブは不審な眼つきをこちらに向けたすぐ後に、怪しげな眼つきになりそれから俺の手を取り、引っ張った。
やめて俺を殺す気か? 当初の目的通りに! と俺は思うとシノブは無言で微笑みながら俺を引いていく。
でも俺の心はなんだか満たされる。無限に満たされていく。身体のどこかにある空っぽな空間がシノブで埋まっていく。
このシノブの手に引かれながら歩くこの時間が永遠になったら、いや、いまのこの瞬間が俺にとっての永遠なんだ。僅かなこの時を永遠にしたいと願うその心こそが永遠となり、俺は生きたということなんだ。そうだ俺は生きた、だから死ぬ、死ねる、永遠を願ったのだから。
ああ! 丘を越えてしまった! おお! 神の国が現れ俺はそこを訪れてしまうぞ! あっという間に門に辿り着くと村の人たちが集まってきた。
シノブのお出迎いなのだろう。
正面にスレイヤーとカオリもいる。彼女が手を振ってくれたので振り返したいができない。俺の左手にはシノブの荷物、俺の右手にはシノブの手。いつかは離れてしまう手が握られている。
少し早歩きになったためかシノブは呼吸を整えている。挨拶を言う力を溜めているのだろう。シノブはひとつ息を吐きそれから吸った。それが掌から伝わってきた。
そのシノブの命の息吹。
「みんな紹介するね。この人は私の」
挨拶の口上の最中に俺は空を見上げた。変わらぬ青空。さぁエンディングだ。もう現れていいぞ光の輪よ。あの輝きで以って俺を予定通りに終わらせてくれ。
しかしそんな気配はまるで感じられない。どうしてだ使命は終えるのだぞ?
それともなにか? 俺の使命はまだあるということなのかな?
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