13 / 313
第一章 なぜ私であるのか
結婚というのは一族や共同体の関係や都合で決めることだ
しおりを挟む
そんなことは関係なく私はあの人に対して龍身とは絶対に呼ばない、とジーナはハイネの言葉を心の中でそう受け止めた。
「ですけれども、あの御方が龍身になられたのはこの間のあの事件以来なことなうえに、いま現在世界には龍が複数おられるという複雑怪奇な世界情勢なので、そこらへんは正確かつ厳格にすることはできませんし説明も難しく、おまけに不信仰者のジーナさんが現れたりしましたので、その呼び方でも御咎めなしということでしょうね。とりあえずそういうことだとお頭の中にお入れ下さい。私もあなたとの会話ではそちらに合わせます。なんだか悪いことをしているみたいで面白いしそれに戦争前に戻ったみたいで懐かしいですしね」
そういえばルーゲン師にそんなことを教わったような気がしたなとジーナは思い出した。
龍身とは半ば人間ではないのでかつての人の名は必要ないものだということを……
「話は戻しますがヘイム様が可能な限りは外に出て歩きたいなといった発言を女官の一人が耳にしましてね。そこからこの大忙しですよ。あっいま言ってることの意味は分かりますか?」
「さっぱり分からないが庭に出るくらい普通なのでは?」
フフッとハイネの何故か得意げな笑い声が耳元で聞こえた。
こういうやり方が好きなのだなとジーナは少しずつ分かってきた。
「普通そう思いますよね? そう思いますとも。普通なら、ね。ところがどっこいここが普通でないところ。ヘイム様はこちらに移られてからもうしばらくになりますが、一度もそういったことをなされたことがないのです。もっぱら儀式をなさる毎日でごく稀に公用で外出する他は龍の間にてほとんどを過ごされる引きこもり状態でしてね。まぁヘイム様は箱入り型なお姫様、というか一応は末席とはいえ皇女様でもありました上に龍の巫女というお役目をなされておりまして、かなり閉ざされた世界にいたとも言えますけど……あのジーナさん、私の声って大きいですかね?」
大きいどころか耳を近づけないと聞こえないぐらいだと告げるもハイネはもっと小さくしますからもっと近づいてと言われた。
周りを見ると休憩時間に入っているのか誰も働いてはおらず雑談や茶を飲み始めている。誰も近寄ってこないのが救いとはいえ密談じみていてジーナは心中穏やかでなかった。
陰謀の相談じみてはいないか?
「あなたが信頼できる人と見込んでこれから凄い話をしますけれど、これってジーナさんが悪いんですからね。私を信用できない女扱いしたからこっちはこうやって信頼回復に努力しているんですよ。分かってくださいね」
ほんとかなぁ? 早口の小声が耳元で囁かれるので分かった分かったと頷くとハイネの一呼吸の音がまず聞こえた。
「私が思うにです。ヘイム様はルーゲン師とこの御庭を散策するつもりかなと想像します。ジーナさんは当然ルーゲン師とヘイム様の御関係はご存じないですよね?」
その通りでジーナは当然知らない、がルーゲン師のことは少しは知っている。
ジーナは砂漠を越えたあとにシアフィル解放戦線に加わったが、ルーゲン師とはその初期段階から付き合いであり、西の果てから来たというので興味を持ったのがバルツ将軍のもとにいた彼である。
ソグ教団では最も将来を期待される若き俊英であり既に「師」という地位に就き幹部の一員であることから考えるに……
「龍の祭祀集団であるソグ教団の未来の指導者となるものと龍となるものが結ばれる……こうなれば教科書通りだが」
「おっ! これに関しては勘が鋭いですね! そうですとも。これから我々が中央に戻りヘイム様が龍となるわけです。これはあの龍祖が行いし建国をもう一度ということに他なりません。そのためにはまず原点に戻り、龍と教団も一体化し再出発するべき! というのがソグ教団側の主張でしょう。このジーナさんにだって分かるこの正統性のある単純明快な論理。これにて一件落着、な展開には残念ながら暗雲が立ち込めております。実のところヘイム様は口には出さないものの私達の見る限りこの話には気乗り薄なのですよ。ヘイム様の御一族の方々もこの話は申し分ないという反応なのですが、御本人があまり興味がなさげで」
なんだつまりは結婚話か、とジーナもまた興味なさげに額を撫でた。
「でも妙な話だな。本人がどう言おうが基本的に結婚というのは一族や共同体の関係や都合で決めることだと思うのだが、中央やソグは違うのか?」
問うとハイネの饒舌が途切れそれから勢いのよい息がジーナの耳に当たり驚き飛び上がるとにぎやかな笑い声が追って来た。
「ごめんなさい。すごくお堅い言葉が出てきたからついおかしくなっちゃって。確かにジーナさんはそんな論理の世界の人っぽいですよね。でも今は混乱期ですよ。貴族も庶民も融合されて新しいなにかが生まれようとしている一種の変革の時代の途上。その新しい世界に向かって最前線で戦っている人の口から前時代的な古い秩序感が出て来るのが面白くて。ほらキルシュやブリアンさんとか自由じゃないですか。ジーナさんはああいうのがもしかしてお嫌いで?」
「あれは結婚が確定しているみたいだからいいんじゃないのか?」
「またそんなお堅いことを。けどまぁそうですよね。ジーナさんが俺は自由だ!好きな女と結婚せずに遊ぶだけ遊ぶんだぜ!なんて発想があるようにまるで見えませんしね。それで話を戻しますと、あっ近づいてください」
またさっきの姿勢に戻る間にジーナは考える。この話ってそんなに秘密にしないといけないことなのか? 何を恐れているのか?
「もちろん結婚には身内の都合が優先されることもあります。特にお姫様でしたらそうでしょう。しかしヘイム様は龍身様でもあるためにここがややこしくなってしまいましてね。現在のヘイム様の御意志とは龍身様の御意志とイコールなのです。だから誰もヘイム様に何かを強要できないし命ぜられないのですよ。ヘイム様の御一族の方々はもうヘイム様とは誰も呼べずに小娘扱いできずに龍身様という扱いですからね。そんな中で唯一ご意見できるといえば後見人であり龍の騎士であるシオン様やマイラ様なのですが……これは私の見立てですけれども、シオン様もヘイム様のお気持ちを汲み取ってかこの話も同様に気乗り薄なのですよね。では他にどのような候補者が? とお思いでしょうがルーゲン師と比べると一段も二段も三段も劣る方々ばかりで……これでヘイム様が個人的にこの人が! という男がいればいいのですがそれもなく、もうどうしていいのか分からない状態でこのままでは話が詰んでしまうと皆が心配しておりまして……」
嘆きの溜息が吐かれ耳にかかり死を連想させる低温を感じるも、すぐに熱があがり甦った。
「ところがです! そんなヘイム様が今度散策しようかなと言い出したのですよ、この意味分かりますよね」
「分からない」
即答するとハイネは空に向かって息を吐き手を振り首を左右に軽く振った。
「ですけれども、あの御方が龍身になられたのはこの間のあの事件以来なことなうえに、いま現在世界には龍が複数おられるという複雑怪奇な世界情勢なので、そこらへんは正確かつ厳格にすることはできませんし説明も難しく、おまけに不信仰者のジーナさんが現れたりしましたので、その呼び方でも御咎めなしということでしょうね。とりあえずそういうことだとお頭の中にお入れ下さい。私もあなたとの会話ではそちらに合わせます。なんだか悪いことをしているみたいで面白いしそれに戦争前に戻ったみたいで懐かしいですしね」
そういえばルーゲン師にそんなことを教わったような気がしたなとジーナは思い出した。
龍身とは半ば人間ではないのでかつての人の名は必要ないものだということを……
「話は戻しますがヘイム様が可能な限りは外に出て歩きたいなといった発言を女官の一人が耳にしましてね。そこからこの大忙しですよ。あっいま言ってることの意味は分かりますか?」
「さっぱり分からないが庭に出るくらい普通なのでは?」
フフッとハイネの何故か得意げな笑い声が耳元で聞こえた。
こういうやり方が好きなのだなとジーナは少しずつ分かってきた。
「普通そう思いますよね? そう思いますとも。普通なら、ね。ところがどっこいここが普通でないところ。ヘイム様はこちらに移られてからもうしばらくになりますが、一度もそういったことをなされたことがないのです。もっぱら儀式をなさる毎日でごく稀に公用で外出する他は龍の間にてほとんどを過ごされる引きこもり状態でしてね。まぁヘイム様は箱入り型なお姫様、というか一応は末席とはいえ皇女様でもありました上に龍の巫女というお役目をなされておりまして、かなり閉ざされた世界にいたとも言えますけど……あのジーナさん、私の声って大きいですかね?」
大きいどころか耳を近づけないと聞こえないぐらいだと告げるもハイネはもっと小さくしますからもっと近づいてと言われた。
周りを見ると休憩時間に入っているのか誰も働いてはおらず雑談や茶を飲み始めている。誰も近寄ってこないのが救いとはいえ密談じみていてジーナは心中穏やかでなかった。
陰謀の相談じみてはいないか?
「あなたが信頼できる人と見込んでこれから凄い話をしますけれど、これってジーナさんが悪いんですからね。私を信用できない女扱いしたからこっちはこうやって信頼回復に努力しているんですよ。分かってくださいね」
ほんとかなぁ? 早口の小声が耳元で囁かれるので分かった分かったと頷くとハイネの一呼吸の音がまず聞こえた。
「私が思うにです。ヘイム様はルーゲン師とこの御庭を散策するつもりかなと想像します。ジーナさんは当然ルーゲン師とヘイム様の御関係はご存じないですよね?」
その通りでジーナは当然知らない、がルーゲン師のことは少しは知っている。
ジーナは砂漠を越えたあとにシアフィル解放戦線に加わったが、ルーゲン師とはその初期段階から付き合いであり、西の果てから来たというので興味を持ったのがバルツ将軍のもとにいた彼である。
ソグ教団では最も将来を期待される若き俊英であり既に「師」という地位に就き幹部の一員であることから考えるに……
「龍の祭祀集団であるソグ教団の未来の指導者となるものと龍となるものが結ばれる……こうなれば教科書通りだが」
「おっ! これに関しては勘が鋭いですね! そうですとも。これから我々が中央に戻りヘイム様が龍となるわけです。これはあの龍祖が行いし建国をもう一度ということに他なりません。そのためにはまず原点に戻り、龍と教団も一体化し再出発するべき! というのがソグ教団側の主張でしょう。このジーナさんにだって分かるこの正統性のある単純明快な論理。これにて一件落着、な展開には残念ながら暗雲が立ち込めております。実のところヘイム様は口には出さないものの私達の見る限りこの話には気乗り薄なのですよ。ヘイム様の御一族の方々もこの話は申し分ないという反応なのですが、御本人があまり興味がなさげで」
なんだつまりは結婚話か、とジーナもまた興味なさげに額を撫でた。
「でも妙な話だな。本人がどう言おうが基本的に結婚というのは一族や共同体の関係や都合で決めることだと思うのだが、中央やソグは違うのか?」
問うとハイネの饒舌が途切れそれから勢いのよい息がジーナの耳に当たり驚き飛び上がるとにぎやかな笑い声が追って来た。
「ごめんなさい。すごくお堅い言葉が出てきたからついおかしくなっちゃって。確かにジーナさんはそんな論理の世界の人っぽいですよね。でも今は混乱期ですよ。貴族も庶民も融合されて新しいなにかが生まれようとしている一種の変革の時代の途上。その新しい世界に向かって最前線で戦っている人の口から前時代的な古い秩序感が出て来るのが面白くて。ほらキルシュやブリアンさんとか自由じゃないですか。ジーナさんはああいうのがもしかしてお嫌いで?」
「あれは結婚が確定しているみたいだからいいんじゃないのか?」
「またそんなお堅いことを。けどまぁそうですよね。ジーナさんが俺は自由だ!好きな女と結婚せずに遊ぶだけ遊ぶんだぜ!なんて発想があるようにまるで見えませんしね。それで話を戻しますと、あっ近づいてください」
またさっきの姿勢に戻る間にジーナは考える。この話ってそんなに秘密にしないといけないことなのか? 何を恐れているのか?
「もちろん結婚には身内の都合が優先されることもあります。特にお姫様でしたらそうでしょう。しかしヘイム様は龍身様でもあるためにここがややこしくなってしまいましてね。現在のヘイム様の御意志とは龍身様の御意志とイコールなのです。だから誰もヘイム様に何かを強要できないし命ぜられないのですよ。ヘイム様の御一族の方々はもうヘイム様とは誰も呼べずに小娘扱いできずに龍身様という扱いですからね。そんな中で唯一ご意見できるといえば後見人であり龍の騎士であるシオン様やマイラ様なのですが……これは私の見立てですけれども、シオン様もヘイム様のお気持ちを汲み取ってかこの話も同様に気乗り薄なのですよね。では他にどのような候補者が? とお思いでしょうがルーゲン師と比べると一段も二段も三段も劣る方々ばかりで……これでヘイム様が個人的にこの人が! という男がいればいいのですがそれもなく、もうどうしていいのか分からない状態でこのままでは話が詰んでしまうと皆が心配しておりまして……」
嘆きの溜息が吐かれ耳にかかり死を連想させる低温を感じるも、すぐに熱があがり甦った。
「ところがです! そんなヘイム様が今度散策しようかなと言い出したのですよ、この意味分かりますよね」
「分からない」
即答するとハイネは空に向かって息を吐き手を振り首を左右に軽く振った。
0
あなたにおすすめの小説
「がっかりです」——その一言で終わる夫婦が、王宮にはある
柴田はつみ
恋愛
妃の席を踏みにじったのは令嬢——けれど妃の心を折ったのは、夫のたった一言だった
王太子妃リディアの唯一の安らぎは、王太子アーヴィンと交わす午後の茶会。だが新しく王宮に出入りする伯爵令嬢ミレーユは、妃の席に先に座り、殿下を私的に呼び、距離感のない振る舞いを重ねる。
リディアは王宮の礼節としてその場で正す——正しいはずだった。けれど夫は「リディア、そこまで言わなくても……」と、妃を止めた。
「わかりました。あなたには、がっかりです」
微笑んで去ったその日から、夫婦の茶会は終わる。沈黙の王宮で、言葉を失った王太子は、初めて“追う”ことを選ぶが——遅すぎた。
そのご寵愛、理由が分かりません
秋月真鳥
恋愛
貧乏子爵家の長女、レイシーは刺繍で家計を支える庶民派令嬢。
幼いころから前世の夢を見ていて、その技術を活かして地道に慎ましく生きていくつもりだったのに——
「君との婚約はなかったことに」
卒業パーティーで、婚約者が突然の裏切り!
え? 政略結婚しなくていいの? ラッキー!
領地に帰ってスローライフしよう!
そう思っていたのに、皇帝陛下が現れて——
「婚約破棄されたのなら、わたしが求婚してもいいよね?」
……は???
お金持ちどころか、国ごと背負ってる人が、なんでわたくしに!?
刺繍を褒められ、皇宮に連れて行かれ、気づけば妃教育まで始まり——
気高く冷静な陛下が、なぜかわたくしにだけ甘い。
でもその瞳、どこか昔、夢で見た“あの少年”に似ていて……?
夢と現実が交差する、とんでもスピード婚約ラブストーリー!
理由は分からないけど——わたくし、寵愛されてます。
※毎朝6時、夕方18時更新!
※他のサイトにも掲載しています。
結婚初夜、「何故彼女が死んでお前が生きているんだ」と夫に言われました
ましゅぺちーの
恋愛
侯爵令嬢のアリサは婚約者だった王太子テオドールと結婚した。
ちょうどその半年前、アリサの腹違いの妹のシアは不慮の事故で帰らぬ人となっていた。
王太子が婚約者の妹のシアを愛していたのは周知の事実だった。
そんな彼は、結婚初夜、アリサに冷たく言い放った。
「何故彼女が死んでお前が生きているんだ」と。
捨てられた王妃は情熱王子に攫われて
きぬがやあきら
恋愛
厳しい外交、敵対勢力の鎮圧――あなたと共に歩む未来の為に手を取り頑張って来て、やっと王位継承をしたと思ったら、祝賀の夜に他の女の元へ通うフィリップを目撃するエミリア。
貴方と共に国の繁栄を願って来たのに。即位が叶ったらポイなのですか?
猛烈な抗議と共に実家へ帰ると啖呵を切った直後、エミリアは隣国ヴァルデリアの王子に攫われてしまう。ヴァルデリア王子の、エドワードは影のある容姿に似合わず、強い情熱を秘めていた。私を愛しているって、本当ですか? でも、もうわたくしは誰の愛も信じたくないのです。
疑心暗鬼のエミリアに、エドワードは誠心誠意向に向き合い、愛を得ようと少しずつ寄り添う。一方でエミリアの失踪により国政が立ち行かなくなるヴォルティア王国。フィリップは自分の功績がエミリアの内助であると思い知り――
ざまあ系の物語です。
田舎暮らしの貧乏令嬢、幽閉王子のお世話係になりました〜七年後の殿下が甘すぎるのですが!〜
侑子
恋愛
「リーシャ。僕がどれだけ君に会いたかったかわかる? 一人前と認められるまで魔塔から出られないのは知っていたけど、まさか七年もかかるなんて思っていなくて、リーシャに会いたくて死ぬかと思ったよ」
十五歳の時、父が作った借金のために、いつ魔力暴走を起こすかわからない危険な第二王子のお世話係をしていたリーシャ。
弟と同じ四つ年下の彼は、とても賢くて優しく、可愛らしい王子様だった。
お世話をする内に仲良くなれたと思っていたのに、彼はある日突然、世界最高の魔法使いたちが集うという魔塔へと旅立ってしまう。
七年後、二十二歳になったリーシャの前に現れたのは、成長し、十八歳になって成人した彼だった!
以前とは全く違う姿に戸惑うリーシャ。
その上、七年も音沙汰がなかったのに、彼は昔のことを忘れていないどころか、とんでもなく甘々な態度で接してくる。
一方、自分の息子ではない第二王子を疎んで幽閉状態に追い込んでいた王妃は、戻ってきた彼のことが気に入らないようで……。
皇帝陛下の寵愛は、身に余りすぎて重すぎる
若松だんご
恋愛
――喜べ、エナ! お前にも縁談が来たぞ!
数年前の戦で父を、病で母を亡くしたエナ。
跡継ぎである幼い弟と二人、後見人(と言う名の乗っ取り)の叔父によりずっと塔に幽閉されていたエナ。
両親の不在、後見人の暴虐。弟を守らねばと、一生懸命だったあまりに、婚期を逃していたエナに、叔父が(お金目当ての)縁談を持ちかけてくるけれど。
――すまないが、その縁談は無効にさせてもらう!
エナを救ってくれたのは、幼馴染のリアハルト皇子……ではなく、今は皇帝となったリアハルト陛下。
彼は先帝の第一皇子だったけれど、父帝とその愛妾により、都から放逐され、エナの父のもとに身を寄せ、エナとともに育った人物。
――結婚の約束、しただろう?
昔と違って、堂々と王者らしい風格を備えたリアハルト。驚くエナに妻になってくれと結婚を申し込むけれど。
(わたし、いつの間に、結婚の約束なんてしてたのっ!?)
記憶がない。記憶にない。
姉弟のように育ったけど。彼との別れに彼の無事を願ってハンカチを渡したけれど! それだけしかしてない!
都会の洗練された娘でもない。ずっと幽閉されてきた身。
若くもない、リアハルトより三つも年上。婚期を逃した身。
後ろ盾となる両親もいない。幼い弟を守らなきゃいけない身。
(そんなわたしが? リアハルト陛下の妻? 皇后?)
ずっとエナを慕っていたというリアハルト。弟の後見人にもなってくれるというリアハルト。
エナの父は、彼が即位するため起こした戦争で亡くなっている。
だから。
この求婚は、その罪滅ぼし? 昔世話になった者への恩返し?
弟の後見になってくれるのはうれしいけれど。なんの取り柄もないわたしに求婚する理由はなに?
ずっと好きだった彼女を手に入れたかったリアハルトと、彼の熱愛に、ありがたいけれど戸惑いしかないエナの物語。
王女の中身は元自衛官だったので、継母に追放されたけど思い通りになりません
きぬがやあきら
恋愛
「妻はお妃様一人とお約束されたそうですが、今でもまだ同じことが言えますか?」
「正直なところ、不安を感じている」
久方ぶりに招かれた故郷、セレンティア城の月光満ちる庭園で、アシュレイは信じ難い光景を目撃するーー
激闘の末、王座に就いたアルダシールと結ばれた、元セレンティア王国の王女アシュレイ。
アラウァリア国では、新政権を勝ち取ったアシュレイを国母と崇めてくれる国民も多い。だが、結婚から2年、未だ後継ぎに恵まれないアルダシールに側室を推す声も上がり始める。そんな頃、弟シュナイゼルから結婚式の招待が舞い込んだ。
第2幕、連載開始しました!
お気に入り登録してくださった皆様、ありがとうございます! 心より御礼申し上げます。
以下、1章のあらすじです。
アシュレイは前世の記憶を持つ、セレンティア王国の皇女だった。後ろ盾もなく、継母である王妃に体よく追い出されてしまう。
表向きは外交の駒として、アラウァリア王国へ嫁ぐ形だが、国王は御年50歳で既に18人もの妃を持っている。
常に不遇の扱いを受けて、我慢の限界だったアシュレイは、大胆な計画を企てた。
それは輿入れの道中を、自ら雇った盗賊に襲撃させるもの。
サバイバルの知識もあるし、宝飾品を処分して生き抜けば、残りの人生を自由に謳歌できると踏んでいた。
しかし、輿入れ当日アシュレイを攫い出したのは、アラウァリアの第一王子・アルダシール。
盗賊団と共謀し、晴れて自由の身を望んでいたのに、アルダシールはアシュレイを手放してはくれず……。
アシュレイは自由と幸福を手に入れられるのか?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる