龍を討つもの、龍となるもの

かみやなおあき

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第二章 なぜ私ではないのか

だったら黙らせたらどうです、どうぞ

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 唇が重なったことによりハイネの言葉は生まれず呼吸も止まり命さえこの時だけは喪われなにもかもが停止する。

 男が感じていたのは静寂さよりも瞼を閉じずに見つめてくるハイネの瞳だけであり、その眼が何を意味しているの
かは思考も止まっている男には分からず、ただ感じたのはそれはこちらに目を閉じさせないためのものであると。

 短いのか長いのか不明な時が続くも男が離れるとハイネも首を後ろに軽く反らした。

 だけどそれは避けるためのものであるというよりも反動のようなものであり、すぐに顔の位置は戻る。

 まるでさっきのあれが無かったかのような微動だに変化のない表情をし、同じ角度で同じ言葉を言おうとしているのが男には分かった。

「だからやめろ」

 哀願じみた声をハイネは無視して同じ笑みで唇を動かそうとする。

 音はあとから、いや声にはしていないはずであるのに、どうしてか男にははっきりと聞こえ届きそうであり、さっき止めた言葉がまた追いかけ追付き、もうすっかりその心に形となって言葉によって届いてしまう前に、男はまた唇の動きを止めるため塞ぎ、今度は吸い込んだ。私はそれを聞いてはならない。

 言葉を吸い込み二度とそのような言葉が出てこない様に。
 男が吸い込んでいくとハイネは驚きから目を見開くも止めずに続けると、その掌と口内の中でなにかが大きな力によって弾ける震動が来てから、ハイネの力が抜けるのが伝わってきた。

 けれども男はハイネの呼吸が止まり力が弱まるのに反して逆になお吸い込み呑み込みだした。
 何か奪い取ろうとするがごとくに喰らうものがごとくに。するとそのうち何かが舌先に触れハイネの心底からの何かがこちらに入って来るのを感じると同時に両掌から全身に急激に力が抜け、すぐさま手と唇が離れ落ちていこうとするハイネの腰と背中にジーナは手を回し支えた。

 抜け殻じみたその軽い身体であるも眼だけには意思が宿り力があった。ハイネは両手をあげ宙で揺らし振った。
 このように手は空いていますよ、というアピールだろうか? 
 無言であるために男が分からずにいると今度は目が笑った、瞳の色が若干変わり熱と笑みが加わり、そうしてそこから生まれる光はなにかを言おうとしているのが伝わってきた。

 これは聞いてはならない何かをまた告げようとしている。
 意思が言葉がまた心に届く、あの言葉が来るのなら、と男は抱き寄せ唇で以ってまたハイネの中に入っていく。

 あの眼が見ないために男は自らの瞼を閉じるとすると連動するようにハイネの瞼も降り始め、自分の瞼が完全に閉じるのと向うの瞼が閉じるのは一緒だとどうしてか信じられた。

 そうすると闇がきて、それから男はハイネの中にいることだけを意識するだけとなった。
 その熱その呼吸その臭い、鼓動によって届く存在という感覚。
 そこに感じる何もかもが、そこにある存在の全てが、触れて反応する心というものが、互いに融け合って結ばれて一つになろうとしていく過程のとけていき落ちて行く感覚を……するとその融合していく闇の世界に音が届き、衝撃とともに瞼が開き光溢れる世界に男は帰還する。

 ハイネは一足先にか既に瞼をあげ目を見開いていた。

 手が放たれ唇が離れると互いの唇から一本の糸が垂れ架かるもすぐに消えた。まるで証拠が消えたかのように。
 
 目を逸らすため横を向くと、机の上に積まれていた紙の山から数枚の紙が床に落ちていただけであった。
 無心のまま見ているとまた一枚音もなく落ちたが、あの闇の世界では確かに音がした。

 それはその陶酔の世界を破り壊すに十分な音であったのに、この光の世界では何もなさぬほどの音。

 あの世界はそれほどまでに脆弱なつくりであったのだろうかと疑問に思いながら紙の山を見ていると、また一枚落ち揺れながら落下していく紙を目で追うとハイネが現れ身を屈めた。ハイネは紙を拾い机に戻す。ただそれだけの動きを男は見ていた。ハイネの表情を探していた。
 
 だがハイネは顔をあげず背を向けたまま尋ねてきた。それを聞いたジーナ我に返ったように思う。随分と懐かしい声を聞いたな、と。

「それで、あれはいったいなんだったのですか?」

 ハイネの声は冷たくさめていた。

「黙らせるため」
「はぁ、ところで私は何か言いましたっけ?」

 ハイネの間の抜けた問いに答えにジーナは苛立ちを覚えた。

「何か言おうとしたからだと」
「だからそれはなんですか?」

 ジーナはいったいこれこそなんだと思うも、改めて考えてもみた。
 ハイネが言おうとしていたのは果たしてあの言葉であったのかと?
 それはただの勘であり思い込みであった可能性もあるものの、ジーナは首を振って思い直した。
 それは有り得ないと。

「言えないが、それは私も言えないことだったから、ハイネにも言わせてはならなかった、そういうことだ」

 言葉には無反応のままハイネは紙を拾い終わり山に戻し、今度は今日の勉強の成果を確認しだしながら聞く。

「何を言って言うのかよく分かりませんが、だからってああやって塞いでいいのですか?」
「両手が塞がっていたから」
「それ、言い訳です」

 ジーナは言葉に詰まるとハイネの背中が嘲笑しているように揺れた。

「だったら離せばよかったじゃないですか。というか強く握っていたのはジーナですよね」
「ハイネの力も強くて」
「馬鹿なこと言わないでくださいよ。女の私があなたより握力が弱いとかありえっこありませんって。いいですか? あれは全部あなたの意志で行ったことです。しかも三度も」

 重い沈黙が場に降りジーナは立ち尽くしたままハイネの背中を見るしかなかったが糾弾するその背中から、また矢が飛んでくる。

「へぇー謝らないのですね。すぐに俺が軽率だった許してくれと言うかと思いきや、だんまり。自分が悪いとは思わないから謝らないと受け取りますよ。となると、あれ? もしかして私に非があると? 私の方が悪いとか思ってません? 原因この私だと、そういうことでいいのですか?」

 そうだよ、と言うようにジーナは反射的に頷いた。ハイネの方が悪いことをしようとしていたと感じていたが、我ながら自分のこの動作に驚くもジーナは安心もしていた。何故ならハイネは振り返っていると思いきや振り返らずに背を向け続けている。だから見てはいない。

「いま、頷きましたよね」

 指摘に心が飛び足も一瞬浮いて無事着地した。どうやってその姿勢で見たというのか? その後頭部に目でもついているのか? そうかもしれない……そうであってもおかしくはない。

「振り返らなくても見えますよ。あなたはそういう人だって知っていますから、いいですよジーナ誤魔化さなくても。でもわざわざ男を下げるようなことだけは言わないでくださいね」

 また静寂が訪れハイネの紙をめくる音だけが辺りに響き、だんだんと大きくなっていくなかでハイネがごく何気ない調子で聞いてきた。

「他の女の人にいつもこういうことするんですよね?」
「するわけないだろ」

 素早く答えると素早く返って来る。

「何ですかその言い方は? するわけないだろ、って現に私にはしている癖に逆に怒ったような言い方して。すると私にならそういうことをしていいと、そう軽く見ているってことですよね?この女は男友達が多いしこういうことをいつもしているんだろうな、と」

「違う、ハイネはそう見ていないしそんなことをする人なはずがない」

 意識が転がり落ちていくようにジーナは深く考えることができなくなり始め、心の今そこにある感情と言葉だけを出さざるを得なくなってきた。それもずっとスピードを速め転がり落ちていく。

「あーそうですかぁ。でもそう見ている割りには、やることは正反対なんですね。そう思っているのにあなたは私にやる。自分がやる分には許されるとでも勘違いしている。大いなる勘違いさん」

 紙をめくる音が妙に大きな音を立ててジーナの耳に入り、剥き出してささくれ立っている心に当たり痛めつけ、苛立ちを募らせていく。そんなことはやめろ、とジーナは強く思う。そんなことは今やることではない、とハイネの背中を睨み付ける、

 今することは、と思い浮かぶことはただ一つ、私を見ろということで……だがどうして?

「だったら私も他の人にやろうかな。あなたがしたことを私から誰かに頼んで、三度繰り返して」
「駄目だ」

 痛みは傷を生みだし血が吹き出しあたりを染めていく意識のなかジーナは声を吐くとハイネの背中は完全に停止したように見えた。それから叫び返してくる。

「あなたに何の権利があって私に指図するのですか?」
「私だからだ」

 無意識が加速しジーナはもう何も考えずに言葉を放つとハイネはもはや堪え切れぬというように嘲笑混じりの声がさらに高くなっていく。

「支離滅裂すぎですよ。話せば話すほどボロが出てみっともないですよ。あなたは議論をしたり説得するタイプじゃありませんよね。無意味ですからいい加減黙ったらどうです?」

 心の奥底で何かが弾けるその衝動でジーナは歩き出した。

「あなたは私にとってのなんだと言うのですか?」

 ハイネの声を聴きながらジーナは思い感じる。その声の響きがどうしてか怒っているように聞こえない、と。
 拒絶にも撥ねつけも聞こえずに自分を呼ぶような声でもあると。
 その足はすぐにハイネの背中は近づいた。気づいているはずなのにハイネは振り返りはしなかった。

「近寄らないでください」

 抵抗を耳にしながらジーナはハイネのその肩に手を乗せ引くと、
 その身体はされるがままに力に合わせ回転しハイネの表情が現れこちらを向いた。
 予想通りの冷淡極まる表情がそこにあったがジーナはそんなところなど見ていない。

 見たのはその眼。
 あの日と同じ夕暮れの色をした瞳の色。
 惹きつけてやまないその暗さが滲む朱の輝きに導かれるようにジーナはまた一歩進む。
 
「怒りました? 殴りたいですか?」

 問いに男は首を振りながらハイネをまた引き寄せる。空気を包み込むように懐に入り互いの身体が密接し合った。

「私はこうしたい」

 またハイネの後頭部に手を掛け引くと呼吸と共に漏れ熱い息が口と頬に当たり掠め後方へと流れて行った。
 ハイネのその隠しきれない心の熱はそのまま冷めることは無く男の心を煽る。

「私とハイネとなら、許される」
「なんですかそれ、いつも通り非論理的ですね」

 無感情な声であるのに息だけは増々感情の如くに熱を上げていく。だから男も習い感情を込めずに行う。

「ハイネ、黙って」
「私うるさいですか? だったら黙らせたらどうです、どうぞ」

 とまた両手を宙に回すも男はそんなものなど見てはおらずに、瞳だけをただ見つめていた。

「なら瞼を閉じて」

 命じられるとハイネは言われるがまま儚げに瞼を降ろし瞳を隠した。
 そして行き場を失ったかのような両の掌は男の後ろ首に回り、捕える。

「これがそういう意味であるのなら、何も問題はありませんよね」

 どのような意味であるのか男には分からず答えることができずにいた。

「ですよね?」

 後頭部にかかるハイネの両の手に力が加わり引き寄せる。
 抗うことができずに近づいてくるハイネの唇を見ながら男はそうだとの合図の代わりに瞼を閉じ、再び闇の世界に入ると、声が聞こえた。

「終わったら勉強を再開しますから、そのつもりで」

 それから温もりでないハイネの熱が身体のなかに侵入してきた。
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