龍を討つもの、龍となるもの

かみやなおあき

文字の大きさ
184 / 313
第二章 なぜ私ではないのか

龍の死を想像してはならない

しおりを挟む
 祈祷の声は一向に盛り下がることなく絶え間なく朝から始まり夜の静けさを破り、祈りを封じ込めようかという闇は松明の大火によって照らされ、夜も闇も静寂さに抵抗するかのような儀式を経ることその幾日か、その甲斐もあったかどうかもしくは伴うかのように明るい戦況報告が次々舞い込んで来た。

「朗報に継ぐ朗報は良いことですけど」

 シオンが嬉し気であるのに自分が妙な気分となっていることに気づいた。

「そのうち大きな悲報がやってくるかもしれないと思うと浮かれていられませんね」

「大丈夫だシオン。この調子では終わりまでずっと朗報が続いて最後は、勝利しました! となるよ」

 対照的に、というかあえて明るく振る舞っているのかマイラは笑いながら応じた。

 そらはもちろん願っていますが、とシオンは胸に滲む不安の色を気にしないようにするもその広がりに目をやった。

 確かに不安要素はどこにも無かった。戦いは熾烈を極めているものの、包囲された中央の軍は悲愴的なものであり、最後の戦いをどう自らの美しさを歴史に残すべきか、とそれだけを考えての攻撃を繰り返しているようにも見えた。

「戦いの途中で四度目になる降伏勧告の合図を送るも返事はなしの礫だ。中央の龍は意思表示ができない状態か座して死す覚悟なのかもしれない。軍の戦いはその意を汲んでの殉死ともみえる」

 マイラの予想が本当なら中央側にはもう交渉相手は存在しないということでありこのまま最後まで殲滅する他ないことになる。

「中央の龍は……皇子は一人で何もかもを決めたがる男だったからな。敢えて意見を言うものはもう中央にはいまい」

 それを何とか補佐していたのが自分で……と言外に言ってはいたがシオンはそこには触れなかった。

 この自分の夫となる男がかつて中央の皇子の付き人兼親友であったことを、そしてそのことは今の自分が龍身の護衛兼親友であることと表裏一体なこととなっていることを。

 また一通が届き封を開けるとハイネからの報告であり前線の様子や戦況の詳細が述べられており、バルツからのものとは大きな違いがなくこれによって前線の優勢が確定したとシオンは胸を撫で下ろした。

「……こういう報告書だととても賢い子だと思うのですけどね」

「どうしたの? ハイネ君は昔から賢い子じゃないか」

「いえ、まぁそうですけど、はい、あの子は頭は良いですよ」

 独り言をマイラに聞かれたために慌てて歯切れの悪い返事をしながらもう一度手紙に目を落した。

 その俯瞰的ともいえる客観性に羅列されおまけに数字も駆使した分析。

 この高度な能力を伺わせる報告にシオンは信頼を寄せているが、同時に不信感も湧いた。

 なんで自分自身にこの能力を使ってくれないのか? 厳密に言うとあの男に関してだけ客観性と計算による分析を放棄してしまうのか。解せぬ……

 そうだ、よそう。あんな男のことで悩みたくもない、とシオンはマイラに手紙を渡した。

「うむ。ハイネ君の報告は今回も素晴らしいね。正面へ攻勢をかけている第一隊は損害数が軽微なことから昼前には、は昨日のことだが突破し、後続の第三隊第四隊が城内の各拠点を制圧しだし、敵戦力の減少とこちらの無傷の予備兵力を考えればあくる朝までにはほぼ形勢は決定する流れだと。いつもの分析通りならこれで決まりだ。おまけに今回の戦いは勝手知ったる中央の城のことだしこうなってくれれば今日か明日には勝利しましたとの報告も来よう」

「勝利とは、つまり……龍の間で」

 シオンがそう言うと楽観的なマイラの顔が悲しみに沈む色となった。言葉には出さずともそれで自分は失言をしたと気づいたシオンが謝った。

「ごっごめんなさい」

「謝ることは無い。これから起こることについては俺が受け入れなくてはならないのだからな。事の詳細はバルツ将軍やハイネ君からではなく同行しているルーゲンからまずこちらに届けられる。俺はそれを龍身様と大僧正のもとに持っていくのだが、公式発表はもう決定しているんだ。『偽龍は攻勢前に亡くなっていた』とね。たとえどのような報告が来ようと、終わったのならこれ以外のを出すことは無い。そしてあの御二人も無事に終わったのなら詳細は聞きたくはないと言ったらそれまでだ。それ以上の無理強いなどできない」

 龍身様に大僧正も龍の死といったものは穢れだとして知りたくはないという可能性をシオンは感じた。

 それほどまでに罪深いこと……いいやそういう次元の話ではない。

 ひとつの呪いともいうべきものであり、それをこの人は抱え込むというのなら。

「マイラ様、完了の報告が届きましたらこの私にもお見せください」

 シオンがそう言うとマイラは鋭い眼つきとなった。

「あなたは見てはならない」

「龍の騎士だからですか?」

「それもあるがあなたは私の婚約者であってそのような罪に染まらずに」

 シオンはその言葉を遮るようにマイラの手を抑え握るとその睨む眼は驚きに開かれた。

「あなたが罪深くなっても私だけはそうは思いません。あなたも私が罪深いものとなってもそうは思わないはずです。それが苦しみであるのなら共有いたしましょう」

 その手をシオンは自分の喉元へと持っていった。手が冷たく震えていることにシオンは悲しみを覚えた。

「そうだな……ああそうだ。俺が見るのならあなたも見た方がいいな。シオンは俺の従姉妹でも可愛い恋人でもなく、俺の妻で宰相夫人となるのだからね」

「えっ? 私は可愛い恋人の地位を捨てるつもりは毛頭ありませんよ」

 冗談でなく本気で言っているのにマイラが苦笑いしたのをシオンは逆に睨み付け、このことを将来取り出すために記憶に刻んでおいた。

「ありがとう。龍身様は詳細を聞くことはないかもしれないから、その代わりシオンが把握しておく必要は確かにあるだろう。報告書で正面門を突破したと書いてあったから今頃は龍の間に行くものたちが行動を開始しているだろう。その中央の龍の処置だが上二人と俺との話し合いの結果として可能な限り生捕にするという方針となった」

 そうだろうな、とシオンは内心で思った。龍を殺せ、とはあの二人の口から出るとは思えない。そう言わざるを得ない立場にあるということは、つまりはその次の方針を言ったのは当然……

「生捕が不可能な場合はやむを得ないこととして任務を受けた隊で処置する……卑怯な言い方だが仕方がない、現場に丸投げってことだ。事が終わったらさっきの公式発表をし全てが終わる。そう戦争が終わり、君は髪を伸ばす」

 不謹慎であると思いながらもシオンは寂しげに笑うもその心は締め付けられていた。龍の死というそのイメージによって。

 可能なら、という曖昧で優柔不断な指示はそのイメージから逃れるためのものであるが、自分はこの人と同じことを考え逃げてはならないとシオンは心の中でしっかりと言葉にする。

 私達は龍を殺す指示をしたのだ、と。すると血の香りが脳内に漂い眩暈がしたものの堪えた。

 これからその血を実際に見て浴びる人達がいるのだからと。

「あのマイラ様。そもそも生捕にしてそのあとはどうするおつもりで? 遠くに放つというわけにもいきませんよね?」

「……地下迷宮がある。そこに向かって」

 地下迷宮? とシオンは首を捻った。それは中央の城の真下にある古代の迷宮であり過去に何度か探索はされたものの、広大かつ複雑なために未だ全容を把握しきれていない文字通りの迷宮。どうも龍との関係が深いとのことらしいが……

「でも地下牢というものではないのですよ?」

「しかしそこ以外にないのだ。だいたいがだ、今回のような事態こそが過去に一度しかなくそれについての記録も大半が失われている。龍を捕え閉じ込める……前例などあっては困るのだけれどな」

「龍を殺すということも、前例はないということになっていますよね」

 血の香りが全身に広がるもシオンは敢えてそう言い全身に力を入れた。

 マイラの顔に緊張が広がるも、重くゆっくりであるがその口が開かれた。

「前回の龍の内乱も公式発表では龍の自然死となっているが、殺されたのだろうとは軽く想像はできる」

 軽くというのにあまりにも重々しい言い方であるものの、これが精一杯であるように椅子の背もたれに息を吹きながらマイラは全体重をかけた。

「だがその際の詳細は一切残っていない。当時のトップ周辺のみがそれを知り墓場まで持っていったのだろうが」

「宰相夫人もそれを知っていたでしょうね」

「おいおいそれだとまるで歴史が繰り返しているみたいじゃないか」

 繰り返し、とシオンは口の中でその言葉を舌の上にて転がした。そのざわっとした異質感に不快感。

 いますぐ呑み込もうとは思えずいつまでも舐めまわすも、それは溶けることもなく小さくなることもなくそのまま口の中に残るその、違和感。

 吐き出そうにも吐き出せず口の中に残すものの思えばそれはいつ口の中に入れたのか思い出せないが、あるいはこうかもしれない。

 はじめからずっとそこにあり、いまはじめて、気づいたのかもしれない。

「確認したいのですがマイラ様。龍を殺めた場合はそのものはどうなってしまうのでしょうか? ここは触れないわけにはいけませんので、聞きます」

「……ここは想像を絶することであるとしか言えないんだ。俺自身の想像力が貧困であるといえるのだが、傷つけることすら考えるのが難しい。これはシオンもそうだしましてや大僧正すら答えには窮するだろう。この国の信徒には不可能だ、と」

 なら可能なのは一人しかいない。都合の良いことに信徒ではないものが前線にいる。龍への敬意がゼロどころかどこか敵意すらある反抗的なものが。

 しかし……いったいあの者は何者なのだ? 龍の内戦直後にわざわざ砂漠を越えて中央にやってきたうえにこちら側に立って戦うだなんて。

 金か地位ではなく戦い続けるあの不可思議にそのうえ私の大切な人を、とシオンは固まった。

 ジーナへの連想だというのに、いま、シオンとヘイムの顔が思い浮かんだということに。何故ヘイムが顔を出す。

「……私の予想では第二隊がその任務を命ぜられたと思うのですが」

「ここまできたら隠しても仕方がないな。そうだよ第二隊だ。ルーゲンの推薦によってバルツ将軍が承認した。そういえばあの隊は例の元龍の護衛の異人がいるみたいだが、その彼ならできるかもしれないな」

 できるであろうとシオンは湧き上がる信頼感に複雑な気持ちを受け止めた。彼なら龍を討つことができるかもしれない。

 だがそのできるとやってはならないという間には深い溝があり、そこを彼は……考えるとシオンの頭の中でまた血の香りに満ち、何かを刺しているジーナの背中が見えた。

 あの剣で以って、倒れ伏す何かを。そうではなくて紛れもなくあれは、龍であろう、いや龍である。

 血を浴びたものは果たして……その罪は……

「……龍殺しの罪とは」

 口から言葉が零れ落ちると声が遠くから聞こえた。

「しっかりしろシオン!おい聞こえるか?」

 それから背中に衝撃が来て、ようやく叩かれているということが分かると音と痛みが同時にきた。

「あっあのマイラ!? やっやめて叩かないで、痛い」

 訴えると手が止まり泣き声が聞こえた。

「急に息を止めて固まっているからひょっとして死んだんじゃないかと、痛かっただろう、すまない」

 安堵と悲しみを混ぜた顔色のマイラのあまり重くない身体におぶさってきたがシオンの困惑は消えず増すばかりだった。

 少し考え事をしただけなのにまさかそんなことになるとは。龍と血のイメージのせいだということか?

「心配をかけてごめんなさい。あのねマイラ。私はさっき龍の死をイメージしました。だからこうなったというのは、ありえましょうか」

 マイラの身体が一度震え、それから黙ってその背中から離れ、軽くなった。

「有り得るかもしれないな。特に君は龍身様に近い上に関係も深い。よりダメージも大きくなってしまうのだろう。思えばそれは龍の防衛能力かもしれない。龍は我々の意識に力を及ぼす。例えばその中に龍を傷つけてはならないという命令があるとしたらどうだろう。それどころかその死を想像すらしてはならないと……龍の側近には強く働きかけているとしたら」

 こうなってしまう。臣民の叛乱が起きようが側近の裏切りがあろうが、龍は生きて勝つ。

 その方法は他の全てに勝る防衛能力とシオンは思うと同時に自分でもおかしなことと思いながらも、言った。

「ではどうやって倒せばいいのでしょう?」

 そんなのは分かっているのに、何故問うのだろうか?

「俺の仮定が正しければやはり無信仰者の手によるしかないな」

 そんなことは分かっている。

「そうだとしたら、では前回はどうやって?」

 そんなことは知っているはずなのに。

「無信仰者かもしくは……龍はまだその力を用いていなかったのでは」

 そうではない、分かっているはずだ。ジーナが二度やる、やるのだとしたら……その先は

「その下手人は罪に問われるのですか?」

「当然問わない。第二隊は表彰されはしないが陰で恩賞が与えられる予定だ。他の隊のよりもずっと多めのがだな」

 ジーナはその褒美を手にしてどこに行くのかといえば

「西の果てに旅立てるほどの褒賞が出たらいいですね」

「こらこらシオン。怖いこと言うな。それは態の良い追放になってしまうだろうに」

 追放になってしまう? 龍の宰相殿は何を言っているのか? 私達は実際に……

「うっ……」

「大丈夫かシオン?いや、もうこの話は今日は止そう。あまりにも刺激が強すぎる」

 刺激が強いどころかこの思考の混乱はなんだろうとシオンは頭の中身を整理したかったが、自分のではない記憶が混在していることにまた混乱をした。これはいったい誰のものだ?

 私にいったいなにを伝えようとしているのか?

 考えているとシオンは卓上の封筒に目が止った。ヘイムから預かった手紙。ジーナ宛ての返信。

 ヘイムは現在龍身として儀式の中心にいてその場から離れることができない。

 明朝これを配達員に渡すわけだが、手が伸び封を切り手紙を広げると、二枚目の下半分にかなりの余白がある。

 お約束の検閲をしたためにそれを覚えていたのであるが、シオンは躊躇なく筆をとり加筆をしだした。

「どうしたシオン? 急に手紙を書き出すなんて」

「ちょっと書き足すことを思いつきまして」

「でもそれは龍身様のものでは?」

「ああこれは私たち二人で書いているのですよ」

 そうなのかとマイラは納得した顔になりシオンはその表情に愛しさを覚えた。

 この人は私の言うことはすぐに信じてくれるからこんなにも心安く信用ができると、シオンは思った。

 書き足しは大したことではないがあの胸騒ぎが予兆だとすれば、私にだけ知らせてくれた何かであるとすれば、ヘイムがあの状態であるのならこうする以外にない、とシオンはヘイムにそっくりまねた文章を書きながら不思議な焦燥感のなかにいた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

「がっかりです」——その一言で終わる夫婦が、王宮にはある

柴田はつみ
恋愛
妃の席を踏みにじったのは令嬢——けれど妃の心を折ったのは、夫のたった一言だった 王太子妃リディアの唯一の安らぎは、王太子アーヴィンと交わす午後の茶会。だが新しく王宮に出入りする伯爵令嬢ミレーユは、妃の席に先に座り、殿下を私的に呼び、距離感のない振る舞いを重ねる。 リディアは王宮の礼節としてその場で正す——正しいはずだった。けれど夫は「リディア、そこまで言わなくても……」と、妃を止めた。 「わかりました。あなたには、がっかりです」 微笑んで去ったその日から、夫婦の茶会は終わる。沈黙の王宮で、言葉を失った王太子は、初めて“追う”ことを選ぶが——遅すぎた。

そのご寵愛、理由が分かりません

秋月真鳥
恋愛
貧乏子爵家の長女、レイシーは刺繍で家計を支える庶民派令嬢。 幼いころから前世の夢を見ていて、その技術を活かして地道に慎ましく生きていくつもりだったのに—— 「君との婚約はなかったことに」 卒業パーティーで、婚約者が突然の裏切り! え? 政略結婚しなくていいの? ラッキー! 領地に帰ってスローライフしよう! そう思っていたのに、皇帝陛下が現れて—— 「婚約破棄されたのなら、わたしが求婚してもいいよね?」 ……は??? お金持ちどころか、国ごと背負ってる人が、なんでわたくしに!? 刺繍を褒められ、皇宮に連れて行かれ、気づけば妃教育まで始まり—— 気高く冷静な陛下が、なぜかわたくしにだけ甘い。 でもその瞳、どこか昔、夢で見た“あの少年”に似ていて……? 夢と現実が交差する、とんでもスピード婚約ラブストーリー! 理由は分からないけど——わたくし、寵愛されてます。 ※毎朝6時、夕方18時更新! ※他のサイトにも掲載しています。

完結 辺境伯様に嫁いで半年、完全に忘れられているようです   

ヴァンドール
恋愛
実家でも忘れられた存在で 嫁いだ辺境伯様にも離れに追いやられ、それすら 忘れ去られて早、半年が過ぎました。

結婚初夜、「何故彼女が死んでお前が生きているんだ」と夫に言われました

ましゅぺちーの
恋愛
侯爵令嬢のアリサは婚約者だった王太子テオドールと結婚した。 ちょうどその半年前、アリサの腹違いの妹のシアは不慮の事故で帰らぬ人となっていた。 王太子が婚約者の妹のシアを愛していたのは周知の事実だった。 そんな彼は、結婚初夜、アリサに冷たく言い放った。 「何故彼女が死んでお前が生きているんだ」と。

捨てられた王妃は情熱王子に攫われて

きぬがやあきら
恋愛
厳しい外交、敵対勢力の鎮圧――あなたと共に歩む未来の為に手を取り頑張って来て、やっと王位継承をしたと思ったら、祝賀の夜に他の女の元へ通うフィリップを目撃するエミリア。 貴方と共に国の繁栄を願って来たのに。即位が叶ったらポイなのですか?  猛烈な抗議と共に実家へ帰ると啖呵を切った直後、エミリアは隣国ヴァルデリアの王子に攫われてしまう。ヴァルデリア王子の、エドワードは影のある容姿に似合わず、強い情熱を秘めていた。私を愛しているって、本当ですか? でも、もうわたくしは誰の愛も信じたくないのです。  疑心暗鬼のエミリアに、エドワードは誠心誠意向に向き合い、愛を得ようと少しずつ寄り添う。一方でエミリアの失踪により国政が立ち行かなくなるヴォルティア王国。フィリップは自分の功績がエミリアの内助であると思い知り―― ざまあ系の物語です。

田舎暮らしの貧乏令嬢、幽閉王子のお世話係になりました〜七年後の殿下が甘すぎるのですが!〜

侑子
恋愛
「リーシャ。僕がどれだけ君に会いたかったかわかる? 一人前と認められるまで魔塔から出られないのは知っていたけど、まさか七年もかかるなんて思っていなくて、リーシャに会いたくて死ぬかと思ったよ」  十五歳の時、父が作った借金のために、いつ魔力暴走を起こすかわからない危険な第二王子のお世話係をしていたリーシャ。  弟と同じ四つ年下の彼は、とても賢くて優しく、可愛らしい王子様だった。  お世話をする内に仲良くなれたと思っていたのに、彼はある日突然、世界最高の魔法使いたちが集うという魔塔へと旅立ってしまう。  七年後、二十二歳になったリーシャの前に現れたのは、成長し、十八歳になって成人した彼だった!  以前とは全く違う姿に戸惑うリーシャ。  その上、七年も音沙汰がなかったのに、彼は昔のことを忘れていないどころか、とんでもなく甘々な態度で接してくる。  一方、自分の息子ではない第二王子を疎んで幽閉状態に追い込んでいた王妃は、戻ってきた彼のことが気に入らないようで……。

皇帝陛下の寵愛は、身に余りすぎて重すぎる

若松だんご
恋愛
――喜べ、エナ! お前にも縁談が来たぞ! 数年前の戦で父を、病で母を亡くしたエナ。 跡継ぎである幼い弟と二人、後見人(と言う名の乗っ取り)の叔父によりずっと塔に幽閉されていたエナ。 両親の不在、後見人の暴虐。弟を守らねばと、一生懸命だったあまりに、婚期を逃していたエナに、叔父が(お金目当ての)縁談を持ちかけてくるけれど。 ――すまないが、その縁談は無効にさせてもらう! エナを救ってくれたのは、幼馴染のリアハルト皇子……ではなく、今は皇帝となったリアハルト陛下。 彼は先帝の第一皇子だったけれど、父帝とその愛妾により、都から放逐され、エナの父のもとに身を寄せ、エナとともに育った人物。 ――結婚の約束、しただろう? 昔と違って、堂々と王者らしい風格を備えたリアハルト。驚くエナに妻になってくれと結婚を申し込むけれど。 (わたし、いつの間に、結婚の約束なんてしてたのっ!?) 記憶がない。記憶にない。 姉弟のように育ったけど。彼との別れに彼の無事を願ってハンカチを渡したけれど! それだけしかしてない! 都会の洗練された娘でもない。ずっと幽閉されてきた身。 若くもない、リアハルトより三つも年上。婚期を逃した身。 後ろ盾となる両親もいない。幼い弟を守らなきゃいけない身。 (そんなわたしが? リアハルト陛下の妻? 皇后?) ずっとエナを慕っていたというリアハルト。弟の後見人にもなってくれるというリアハルト。 エナの父は、彼が即位するため起こした戦争で亡くなっている。 だから。 この求婚は、その罪滅ぼし? 昔世話になった者への恩返し? 弟の後見になってくれるのはうれしいけれど。なんの取り柄もないわたしに求婚する理由はなに? ずっと好きだった彼女を手に入れたかったリアハルトと、彼の熱愛に、ありがたいけれど戸惑いしかないエナの物語。

王女の中身は元自衛官だったので、継母に追放されたけど思い通りになりません

きぬがやあきら
恋愛
「妻はお妃様一人とお約束されたそうですが、今でもまだ同じことが言えますか?」 「正直なところ、不安を感じている」 久方ぶりに招かれた故郷、セレンティア城の月光満ちる庭園で、アシュレイは信じ難い光景を目撃するーー 激闘の末、王座に就いたアルダシールと結ばれた、元セレンティア王国の王女アシュレイ。 アラウァリア国では、新政権を勝ち取ったアシュレイを国母と崇めてくれる国民も多い。だが、結婚から2年、未だ後継ぎに恵まれないアルダシールに側室を推す声も上がり始める。そんな頃、弟シュナイゼルから結婚式の招待が舞い込んだ。 第2幕、連載開始しました! お気に入り登録してくださった皆様、ありがとうございます! 心より御礼申し上げます。 以下、1章のあらすじです。 アシュレイは前世の記憶を持つ、セレンティア王国の皇女だった。後ろ盾もなく、継母である王妃に体よく追い出されてしまう。 表向きは外交の駒として、アラウァリア王国へ嫁ぐ形だが、国王は御年50歳で既に18人もの妃を持っている。 常に不遇の扱いを受けて、我慢の限界だったアシュレイは、大胆な計画を企てた。 それは輿入れの道中を、自ら雇った盗賊に襲撃させるもの。 サバイバルの知識もあるし、宝飾品を処分して生き抜けば、残りの人生を自由に謳歌できると踏んでいた。 しかし、輿入れ当日アシュレイを攫い出したのは、アラウァリアの第一王子・アルダシール。 盗賊団と共謀し、晴れて自由の身を望んでいたのに、アルダシールはアシュレイを手放してはくれず……。 アシュレイは自由と幸福を手に入れられるのか?

処理中です...