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第3部 私達でなければならない
食ってよいと言ったら?
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言いながらヘイムは花弁をジーナの手に乗せる。
「えっ私が食べるのですか?」
「そんなわけないだろうに。妾の口に入れるのだ。なんだその顔は当たり前だろう? さっきは指を入れたのだから今度はバラを入れる。そういうことだろうに」
どういうことだろうに、とジーナは呟きながらも青い花弁を指先で摘んだ。
「またそなたの指を噛んだら駄目か?」
「駄目です」
「不許可か。ではもうせぬ」
ヘイムの口が開きその中へ花弁を入れるその刹那にジーナは戦慄に似た何かを背中で感じるとヘイムと目が合いすぐに指を離すと、口が勢いよく閉まった。
上下の歯と歯がかち合う音は小さいというのにジーナの耳奥にまで残響となって伝わっていく。
「惜しい。いや冗談だ。指が出ていくまで待っておったぞ。それにしても花喰いか。これはこれでいいかもしれんな」
いまの戦慄は? とジーナは恐怖とは違うその感情について考えているとヘイムは新たにもう一つの花弁を抓み取った。
「そんなに旨いのですか?」
「その旨さの比較対象はそなたの指となのか?」
「そんなの比べるまでもない」
「そうか! 自分の指の方が圧倒的だというのだな。大した男だな」
「私はそんな妙な自信を持つナルシストな男ではないです」
「そこは、どうだろうな、そなたは中々結構に……まぁいい、ほら」
なにがそうなのかと思っているとヘイムは青いバラを持ち上げておりジーナは目を見開いた。
「驚いてどうする? そなたにも食わせてやる」
「いえ、いらないです」
「ほれやっぱりそうではないか。さぞかし自分の指の味に自信があるようだな。妾にご自慢の指を咥えさせるだけある。あとでシオンに報告せねばなるまい」
「いただきます。薔薇の方が絶対に旨いので私の指の話はどうかご内密に」
慌ててそう言いながらジーナが座るとヘイムは満足げに頷く。
「分かればいい。妾だってな口の中に指を入れられたなんて妙な話をシオンにして困惑させたくはない。だがそなたの態度次第ではつい口が滑って言ってしまうかもしれぬ。つまりはこのことを言うか言うまいかの全てはそちらの態度にかかっているということだ。とりあえずこの場においてあまり不快な逆らい方をせぬようにな。つまり妾のご機嫌を取れということだ。そなたにとっては大変だろうから、やれ」
あなたの口にではなく龍の口に指を入れたのだが、と思うものの言えるはずもなくジーナは口を閉ざすと、それを肯定だと受け止めたヘイムは青薔薇を指をジーナの口へと更に近づける。
「念のためにもう一度聞くが、何故妾の口の中に指を入れた?」
答える気もないジーナは口を閉ざしたままであった。
「あい分かった。そなたが答えるわけがなかったな。もういい、口をあけよ」
薔薇の花の香りを感じると自動的に口が開きヘイムの指が入ってくるときにジーナは気が付いた。
なんで自分の手で食べますと言わなかったのか?
またこうも思った、ヘイムはどうして自分の指で食べさせようとするのか……口内に薔薇の匂いが広がると同時に顎に衝撃が来た。
「理由を言えぬのなら別にもうよい。同じことをするまでだ」
口内に指がそのままの意味で指しこまれている、とジーナは歯の先でヘイムの人差し指を感じながら狼狽する。
「頭を動かすではないぞ。指が傷ついてしまうからな」
眼の前の女が何を言っているのか分からぬまま口を開こうとするも顎の下には何かが……感触から左手首と分かるも押されているために大きく開くことができず、それどころか抵抗に精一杯な状況となった。
「そなたにはこれを噛み切れる力が、ある」
自分の言葉がここでどうして返ってくるのか? どうしてそんなことを言うのか? 聞いていたのか? とジーナは混乱しながらも口を開ける努力をしながら思った。
「ジーナは妾に喰われたがっていたのか? と妾は考察したところだ。間違えていても怒るではないぞ。元はと言えば何も言わず説明しないそなたが悪いのだからな」
いや聞いていなかったな、とジーナは思いまたなんでこの行動に繋がるのか分かるはずもなかった。
「人に喰われるという体験は、いや他の動物からだってそうだがしたことが無いからこの際やろうと思ってこうしたが……こんなものか食われるというのは。違うそうではないな……食わせると言った方が正解か。そうだな。自分の身を人に喰わせる。こんなことは初めてだ」
また意味不明なことをとジーナは改めて考える。頭を引けないし首を振ってはならない、どうする?
と呼吸をしてみると口の中で花の香りと知らない何かの匂いが広がった。
その何かが何かであることをジーナは分かっているのだが、考えないようにした。考えてはならない。絶対に駄目だ、と。
「今の状態でも痛くはないな」
下顎が押されている状況が続き歯は震え徐々に圧迫されており指は深めに噛まれているというのにヘイムの表情には苦痛を滲ませてはいなかった。
「このままもう少し噛まれても痛みは来なそうだな。どうしてだろうなジーナ。妾は我慢強くはないし、なにしろ痛いのなんて大嫌いな性分であるのに、何も感じんぞ」
歯が若干一段下がり指への食い込みがもっと深くなる。だけどまだヘイムには変化が生じない。
「おかしいな。もしかしたら……痛覚がもう麻痺しているとかはどうだ? だがそれではないか。今朝の寝起き後に足の上に本を落したら床を転がり回るほど痛がったからそれはないな。しかしこのままでは……」
ジーナへヘイムの左手首の力が増すのを顎で感じた。
「そなたの歯で妾の指は食い千切られてしまうな」
他人事のような声にジーナはヘイムを見ると軽く笑った。
「おいおいなんだその顔は。怯えるのではない。さっき同じ目をしていたが、変な話だな。自分の指を食わせる時も妾の指を食うときも同じ目をしおって。最初に手を、ではなく指を出したのはそっちだというのにな。しかしそなたは食わせたくもないし食いたくもないようだが、でも、なぁ、おい教えよ、もしくは考えてくれ、それはどうしてだ?」
奇妙な言葉であるのにジーナの頭は静かに思考が突然透き通った。どうして自分はこのまま口を閉じるのを拒絶しているのだろうか?
「なぁジーナ聞いてくれ。そのまま考えながら聞いてくれ。もしもな妾が食っていいと言ったらとしたら、そうだ肉を血を許可すると言ったらどうする? 逆であるのならな、妾ならなさっきそのこと言われたらな……そう許可をされたとしたらな……」
あの時は許可をしなかったが、もし次あるとしたら、私は許可をするのか?
そしてもしも……もしもヘイムが求め、両方が納得したとしたら……それよりもなによりも、自分はヘイムの指を……ヘイムをこのまま自分の……だがジーナの思考は結論に辿り着く前に口が開いてしまいまとまりかけていたなにかは胡散霧消してしまった。
その霧の向うにヘイムは苦笑いをしていた。
「冗談だ冗談。要はこんな仕返しだ。これに懲りたら二度と指を勝手に人の口の中に入れないことだな。おっこうしてみると中々に痛そうな歯痕であるな。ほほぉこれは確かに頑張れば噛み千切られてしまうかもしれぬな」
自らの指をまじまじと見つめながらヘイムはそう言うとジーナはその手を取り、自分の方へ引いた。
「これは私があなたを傷つけた痕です」
「なんだ? 所有権でも主張しているのか? まるで獣みたいだな」
「えっ私が食べるのですか?」
「そんなわけないだろうに。妾の口に入れるのだ。なんだその顔は当たり前だろう? さっきは指を入れたのだから今度はバラを入れる。そういうことだろうに」
どういうことだろうに、とジーナは呟きながらも青い花弁を指先で摘んだ。
「またそなたの指を噛んだら駄目か?」
「駄目です」
「不許可か。ではもうせぬ」
ヘイムの口が開きその中へ花弁を入れるその刹那にジーナは戦慄に似た何かを背中で感じるとヘイムと目が合いすぐに指を離すと、口が勢いよく閉まった。
上下の歯と歯がかち合う音は小さいというのにジーナの耳奥にまで残響となって伝わっていく。
「惜しい。いや冗談だ。指が出ていくまで待っておったぞ。それにしても花喰いか。これはこれでいいかもしれんな」
いまの戦慄は? とジーナは恐怖とは違うその感情について考えているとヘイムは新たにもう一つの花弁を抓み取った。
「そんなに旨いのですか?」
「その旨さの比較対象はそなたの指となのか?」
「そんなの比べるまでもない」
「そうか! 自分の指の方が圧倒的だというのだな。大した男だな」
「私はそんな妙な自信を持つナルシストな男ではないです」
「そこは、どうだろうな、そなたは中々結構に……まぁいい、ほら」
なにがそうなのかと思っているとヘイムは青いバラを持ち上げておりジーナは目を見開いた。
「驚いてどうする? そなたにも食わせてやる」
「いえ、いらないです」
「ほれやっぱりそうではないか。さぞかし自分の指の味に自信があるようだな。妾にご自慢の指を咥えさせるだけある。あとでシオンに報告せねばなるまい」
「いただきます。薔薇の方が絶対に旨いので私の指の話はどうかご内密に」
慌ててそう言いながらジーナが座るとヘイムは満足げに頷く。
「分かればいい。妾だってな口の中に指を入れられたなんて妙な話をシオンにして困惑させたくはない。だがそなたの態度次第ではつい口が滑って言ってしまうかもしれぬ。つまりはこのことを言うか言うまいかの全てはそちらの態度にかかっているということだ。とりあえずこの場においてあまり不快な逆らい方をせぬようにな。つまり妾のご機嫌を取れということだ。そなたにとっては大変だろうから、やれ」
あなたの口にではなく龍の口に指を入れたのだが、と思うものの言えるはずもなくジーナは口を閉ざすと、それを肯定だと受け止めたヘイムは青薔薇を指をジーナの口へと更に近づける。
「念のためにもう一度聞くが、何故妾の口の中に指を入れた?」
答える気もないジーナは口を閉ざしたままであった。
「あい分かった。そなたが答えるわけがなかったな。もういい、口をあけよ」
薔薇の花の香りを感じると自動的に口が開きヘイムの指が入ってくるときにジーナは気が付いた。
なんで自分の手で食べますと言わなかったのか?
またこうも思った、ヘイムはどうして自分の指で食べさせようとするのか……口内に薔薇の匂いが広がると同時に顎に衝撃が来た。
「理由を言えぬのなら別にもうよい。同じことをするまでだ」
口内に指がそのままの意味で指しこまれている、とジーナは歯の先でヘイムの人差し指を感じながら狼狽する。
「頭を動かすではないぞ。指が傷ついてしまうからな」
眼の前の女が何を言っているのか分からぬまま口を開こうとするも顎の下には何かが……感触から左手首と分かるも押されているために大きく開くことができず、それどころか抵抗に精一杯な状況となった。
「そなたにはこれを噛み切れる力が、ある」
自分の言葉がここでどうして返ってくるのか? どうしてそんなことを言うのか? 聞いていたのか? とジーナは混乱しながらも口を開ける努力をしながら思った。
「ジーナは妾に喰われたがっていたのか? と妾は考察したところだ。間違えていても怒るではないぞ。元はと言えば何も言わず説明しないそなたが悪いのだからな」
いや聞いていなかったな、とジーナは思いまたなんでこの行動に繋がるのか分かるはずもなかった。
「人に喰われるという体験は、いや他の動物からだってそうだがしたことが無いからこの際やろうと思ってこうしたが……こんなものか食われるというのは。違うそうではないな……食わせると言った方が正解か。そうだな。自分の身を人に喰わせる。こんなことは初めてだ」
また意味不明なことをとジーナは改めて考える。頭を引けないし首を振ってはならない、どうする?
と呼吸をしてみると口の中で花の香りと知らない何かの匂いが広がった。
その何かが何かであることをジーナは分かっているのだが、考えないようにした。考えてはならない。絶対に駄目だ、と。
「今の状態でも痛くはないな」
下顎が押されている状況が続き歯は震え徐々に圧迫されており指は深めに噛まれているというのにヘイムの表情には苦痛を滲ませてはいなかった。
「このままもう少し噛まれても痛みは来なそうだな。どうしてだろうなジーナ。妾は我慢強くはないし、なにしろ痛いのなんて大嫌いな性分であるのに、何も感じんぞ」
歯が若干一段下がり指への食い込みがもっと深くなる。だけどまだヘイムには変化が生じない。
「おかしいな。もしかしたら……痛覚がもう麻痺しているとかはどうだ? だがそれではないか。今朝の寝起き後に足の上に本を落したら床を転がり回るほど痛がったからそれはないな。しかしこのままでは……」
ジーナへヘイムの左手首の力が増すのを顎で感じた。
「そなたの歯で妾の指は食い千切られてしまうな」
他人事のような声にジーナはヘイムを見ると軽く笑った。
「おいおいなんだその顔は。怯えるのではない。さっき同じ目をしていたが、変な話だな。自分の指を食わせる時も妾の指を食うときも同じ目をしおって。最初に手を、ではなく指を出したのはそっちだというのにな。しかしそなたは食わせたくもないし食いたくもないようだが、でも、なぁ、おい教えよ、もしくは考えてくれ、それはどうしてだ?」
奇妙な言葉であるのにジーナの頭は静かに思考が突然透き通った。どうして自分はこのまま口を閉じるのを拒絶しているのだろうか?
「なぁジーナ聞いてくれ。そのまま考えながら聞いてくれ。もしもな妾が食っていいと言ったらとしたら、そうだ肉を血を許可すると言ったらどうする? 逆であるのならな、妾ならなさっきそのこと言われたらな……そう許可をされたとしたらな……」
あの時は許可をしなかったが、もし次あるとしたら、私は許可をするのか?
そしてもしも……もしもヘイムが求め、両方が納得したとしたら……それよりもなによりも、自分はヘイムの指を……ヘイムをこのまま自分の……だがジーナの思考は結論に辿り着く前に口が開いてしまいまとまりかけていたなにかは胡散霧消してしまった。
その霧の向うにヘイムは苦笑いをしていた。
「冗談だ冗談。要はこんな仕返しだ。これに懲りたら二度と指を勝手に人の口の中に入れないことだな。おっこうしてみると中々に痛そうな歯痕であるな。ほほぉこれは確かに頑張れば噛み千切られてしまうかもしれぬな」
自らの指をまじまじと見つめながらヘイムはそう言うとジーナはその手を取り、自分の方へ引いた。
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