256 / 313
第3部 私達でなければならない
せめて心の中では認めて
しおりを挟む
肘鉄を喰らわせるもハイネは些かも動じない。これはそういう女だとジーナはどうしてか安心した。
「会話の順序がおかしくありません? それはもうちょっと後に聞くことですよ」
「……そうか。じゃあいいが、それならなんでここにいるんだ?」
「しばらく立ち止っていましたがなにか考え事でもしていました?」
「いきなりこれだ。私の質問に答えてくれ」
「だって下らないことを聞くんですもの。なんでここにいるんだなんて、そんなの一緒に歩いてきたからに決まっているじゃないですか。私が空から落ちてきたら地中から出てくるわけないですってば」
「私は一緒に歩いた覚えはないぞ」
「より正確に言いますと後ろを歩いていましたね。俗に言う三歩後ろを歩いたということです」
「すると尾行か?」
ジーナが語気を荒げるとハイネは笑顔で受け流す。
「はい尾行です。ふふっ怪しく言うとそうなりますけど気になりません? 知り合いが気難しい顔をしてどこか行こうとしているなんて。だからついつけてしまったわけです」
邪気なく白状しているのを聞くとジーナは自己を再確認しだした。
本当にハイネは私に対して悪意を抱いていないかもしれない。
いまのいままでも彼女は自分に対しては親切にしてくれた……変なことをしたりしてきたせいで妙なことになったりもしたが、基本的にハイネは自分に関してはありがたい存在であることに違いは無い。
こんな人を相手に疑わしく怪しいとそんな心で以って対応をするのは間違いであり、情けないことではないだろうか?
そんなことをしては……ジーナはハイネをまた見つめた。ハイネも見返しその茜色の瞳を真っ直ぐに合わせる。
曇りなく鮮やかなその色彩を見るとジーナはやはりこの女は疑わしいと考えをすぐに戻し確信を深めた。
「ハイネ、私に何か隠し事をしてはいないか?」
「それはもういっぱいいっぱいに隠し事をしていますよ」
こっちがこんなに疑って聞いているのに嘘や誤魔化しを一切しないその返しにジーナはある意味で脅威を覚えるも、ハイネは平然としながら追撃してきた。
「あなたのお疑い通りに私はジーナに対して沢山の隠し事があります。ありますとも、認めます」
ハイネは言いながら一歩近づこうとすると、ジーナは後ずさりをした。だからか二歩目と同時にハイネはジーナを後ずさりさせないためにその手を、取った。
追い詰めようとしているのに追い詰められている。
「あなたが私に問うというのならば、だったら私も聞いちゃいますね。それが公平ですもの。聞きますよ、あなたも私に隠し事をいっぱいしていますよね」
逆流するが如くに記憶が、いつも封印しているはずの記憶が男の頭の中を流れていく。語れない、この世に出してはならない、心と風景。
その逆流の行きつく先は、水源のようにそこから始まりそこで終わったと言える点は、そこに辿り着くとしたら……私は……私は……
「すごく、ドキドキしていますね。こんなに緊張するぐらいの秘密を持っている癖に、私の隠し事を問おうとするなんて、ズルくありませんか? だからこんな仕返しをうけてしまうのですよ」
この女はどこまで知っている……いやどこまで迫ろうとしているのだろう。私の中に入って……なにがしたいのか。
「私には秘密を喋れと言っているのですよね? そうですよジーナ。あなたの予感通り私はあなたを不審に思い尾行しました。はい、バラしましたよ。満足しましたよね? あなたの疑いが立証できて、気持ちいいでしょう? やったねジーナ!」
足の位置も手の位置も身体の位置も顔の位置も前にも後ろにも動いていないというのにジーナにはハイネが一気に距離を詰めているとしか感じられない。
「今度はそっちが教えてくださいよ」
声は大きくもまた小さくもなっていないのに、近づきよく聞こえる。
「あなたは何をしようとしているのですか?」
手首を掴むハイネの手はそこへの力が消え、中へと入り、掴む。ジーナは自分のなかの何かが捉えられたと感じる。
「私には話せと聞くのに自分のことは話さないっておかしいですよね?あなたは、いっぱい……いっぱいに……私に何も語りませんし見せもしません。そんなに私には話したく、ないのですか?」
問いから訴えへ好奇心から怒りへとその心が変わっていくのを見つめながらジーナは考える。
もしも話したとしたら……ここで話したら……私はいったいに……どうなってしまうのか……男は身体が浮くような感覚に包まれだしその変化に気付くかのようにハイネが口を開く。
「もちろん話しても良いですし。俺には秘密なんてない、って隠していいんですよ。あるいは……あるいは……その……嘘を吐いたって」
目が覚めるようにしてジーナの足は地に着きハイネの手を引き、身体を顔を近づけさせた。
「私はハイネに嘘を吐きたくない」
紅い夕陽をジーナは見る。そのハイネの瞳に宿った色をあの日の景色を重ねながら、見た。
その色は一瞬瞳の中で燃え上がるように色を走らせ、やがてすぐに元の色へと帰っていった。
「なんで私には嘘を吐きたくないんですか?」
帰着点には嘲る声と皮肉そうな表情がいた。そんなことは分からないとジーナは口にせずに思った。
「それってあなた的に誠実ってこと? まぁそう考えているでしょうけども、でもごめんなさい。私にはその感覚は分かりませんね。そんなの子供っぽくてイヤです」
「私は子供っぽいところがあるから、まぁ」
「はい。そこは同意します。なんだ、その自覚ってあったんですね。別に嘘を吐いてもいいじゃないですか。真実ってそんなに面白いものではないですし。嘘は嘘として受け止めるのも楽しいことではありますよ」
「私はそういうのが嫌だし、それにハイネは私が嘘を吐いているとすぐに見破るだろうから」
「それはもう簡単に分かりましょう。別にこれは私だけが分かるということではありませんよ。ジーナってほら子供っぽいから嘘を吐いているってすぐに分かりますし。けど今のは多くの人がやるであろう、俺は隠していることなんて無い!と大声で言い切ればこちらはそれ以上は追求しませんし、これが手っ取り早く片付くし楽ですよ。それなのにそれをしないってのが実にあなたらしいですし、まさかあなたのテクニックですか?」
「なんだそのテクニックというのは。そんなことをして私にいったい何の得があるんだ?」
聞かれるとハイネはしばし沈思しそれから身体を傾かせながらジーナを下から覗き込むようにしながら、答えた。
「……さぁ? 私にはまるで分りません。ちっとも分かりません」
嘘を、ついているとジーナは珍しくハイネの言葉が理解できた。
だが嘘だとは分かるものの、その理由は分からず尋ねもしなかった。
「けどあなたはそうするのが正解かもしれませんね。嘘がつけないし下手という分かりやすく悟られやすい心を持っている癖に、なんでかどこか捻じくれて複雑化している心があなたですからね。ここでバレバレな誤魔化しを覚えたらこれはもう大迷惑でしょう。これ以上面倒な人にならないでくださいね」
面倒? それはこちらの台詞だと返そうとすると微笑むハイネの顔が目に入り、口が閉じ言葉が止まる。
「あなたは隠し事をいっぱい抱えていても私はあなたの言葉を信じていますから」
「そうか……」
ジーナは言い、ハイネも言った。
「はい、そうです」
なにがそうかで、なにがそうですなのか、言った自分もハイネの答えも意味が不明のままジーナは自然に頷きそうになる首を慌てて横に振った。
縦に振ったら負けだとでも?
「あの、言葉にしなくてもいいですが、せめて心の中では認めたらどうです?」
「なにが?」
「会話の順序がおかしくありません? それはもうちょっと後に聞くことですよ」
「……そうか。じゃあいいが、それならなんでここにいるんだ?」
「しばらく立ち止っていましたがなにか考え事でもしていました?」
「いきなりこれだ。私の質問に答えてくれ」
「だって下らないことを聞くんですもの。なんでここにいるんだなんて、そんなの一緒に歩いてきたからに決まっているじゃないですか。私が空から落ちてきたら地中から出てくるわけないですってば」
「私は一緒に歩いた覚えはないぞ」
「より正確に言いますと後ろを歩いていましたね。俗に言う三歩後ろを歩いたということです」
「すると尾行か?」
ジーナが語気を荒げるとハイネは笑顔で受け流す。
「はい尾行です。ふふっ怪しく言うとそうなりますけど気になりません? 知り合いが気難しい顔をしてどこか行こうとしているなんて。だからついつけてしまったわけです」
邪気なく白状しているのを聞くとジーナは自己を再確認しだした。
本当にハイネは私に対して悪意を抱いていないかもしれない。
いまのいままでも彼女は自分に対しては親切にしてくれた……変なことをしたりしてきたせいで妙なことになったりもしたが、基本的にハイネは自分に関してはありがたい存在であることに違いは無い。
こんな人を相手に疑わしく怪しいとそんな心で以って対応をするのは間違いであり、情けないことではないだろうか?
そんなことをしては……ジーナはハイネをまた見つめた。ハイネも見返しその茜色の瞳を真っ直ぐに合わせる。
曇りなく鮮やかなその色彩を見るとジーナはやはりこの女は疑わしいと考えをすぐに戻し確信を深めた。
「ハイネ、私に何か隠し事をしてはいないか?」
「それはもういっぱいいっぱいに隠し事をしていますよ」
こっちがこんなに疑って聞いているのに嘘や誤魔化しを一切しないその返しにジーナはある意味で脅威を覚えるも、ハイネは平然としながら追撃してきた。
「あなたのお疑い通りに私はジーナに対して沢山の隠し事があります。ありますとも、認めます」
ハイネは言いながら一歩近づこうとすると、ジーナは後ずさりをした。だからか二歩目と同時にハイネはジーナを後ずさりさせないためにその手を、取った。
追い詰めようとしているのに追い詰められている。
「あなたが私に問うというのならば、だったら私も聞いちゃいますね。それが公平ですもの。聞きますよ、あなたも私に隠し事をいっぱいしていますよね」
逆流するが如くに記憶が、いつも封印しているはずの記憶が男の頭の中を流れていく。語れない、この世に出してはならない、心と風景。
その逆流の行きつく先は、水源のようにそこから始まりそこで終わったと言える点は、そこに辿り着くとしたら……私は……私は……
「すごく、ドキドキしていますね。こんなに緊張するぐらいの秘密を持っている癖に、私の隠し事を問おうとするなんて、ズルくありませんか? だからこんな仕返しをうけてしまうのですよ」
この女はどこまで知っている……いやどこまで迫ろうとしているのだろう。私の中に入って……なにがしたいのか。
「私には秘密を喋れと言っているのですよね? そうですよジーナ。あなたの予感通り私はあなたを不審に思い尾行しました。はい、バラしましたよ。満足しましたよね? あなたの疑いが立証できて、気持ちいいでしょう? やったねジーナ!」
足の位置も手の位置も身体の位置も顔の位置も前にも後ろにも動いていないというのにジーナにはハイネが一気に距離を詰めているとしか感じられない。
「今度はそっちが教えてくださいよ」
声は大きくもまた小さくもなっていないのに、近づきよく聞こえる。
「あなたは何をしようとしているのですか?」
手首を掴むハイネの手はそこへの力が消え、中へと入り、掴む。ジーナは自分のなかの何かが捉えられたと感じる。
「私には話せと聞くのに自分のことは話さないっておかしいですよね?あなたは、いっぱい……いっぱいに……私に何も語りませんし見せもしません。そんなに私には話したく、ないのですか?」
問いから訴えへ好奇心から怒りへとその心が変わっていくのを見つめながらジーナは考える。
もしも話したとしたら……ここで話したら……私はいったいに……どうなってしまうのか……男は身体が浮くような感覚に包まれだしその変化に気付くかのようにハイネが口を開く。
「もちろん話しても良いですし。俺には秘密なんてない、って隠していいんですよ。あるいは……あるいは……その……嘘を吐いたって」
目が覚めるようにしてジーナの足は地に着きハイネの手を引き、身体を顔を近づけさせた。
「私はハイネに嘘を吐きたくない」
紅い夕陽をジーナは見る。そのハイネの瞳に宿った色をあの日の景色を重ねながら、見た。
その色は一瞬瞳の中で燃え上がるように色を走らせ、やがてすぐに元の色へと帰っていった。
「なんで私には嘘を吐きたくないんですか?」
帰着点には嘲る声と皮肉そうな表情がいた。そんなことは分からないとジーナは口にせずに思った。
「それってあなた的に誠実ってこと? まぁそう考えているでしょうけども、でもごめんなさい。私にはその感覚は分かりませんね。そんなの子供っぽくてイヤです」
「私は子供っぽいところがあるから、まぁ」
「はい。そこは同意します。なんだ、その自覚ってあったんですね。別に嘘を吐いてもいいじゃないですか。真実ってそんなに面白いものではないですし。嘘は嘘として受け止めるのも楽しいことではありますよ」
「私はそういうのが嫌だし、それにハイネは私が嘘を吐いているとすぐに見破るだろうから」
「それはもう簡単に分かりましょう。別にこれは私だけが分かるということではありませんよ。ジーナってほら子供っぽいから嘘を吐いているってすぐに分かりますし。けど今のは多くの人がやるであろう、俺は隠していることなんて無い!と大声で言い切ればこちらはそれ以上は追求しませんし、これが手っ取り早く片付くし楽ですよ。それなのにそれをしないってのが実にあなたらしいですし、まさかあなたのテクニックですか?」
「なんだそのテクニックというのは。そんなことをして私にいったい何の得があるんだ?」
聞かれるとハイネはしばし沈思しそれから身体を傾かせながらジーナを下から覗き込むようにしながら、答えた。
「……さぁ? 私にはまるで分りません。ちっとも分かりません」
嘘を、ついているとジーナは珍しくハイネの言葉が理解できた。
だが嘘だとは分かるものの、その理由は分からず尋ねもしなかった。
「けどあなたはそうするのが正解かもしれませんね。嘘がつけないし下手という分かりやすく悟られやすい心を持っている癖に、なんでかどこか捻じくれて複雑化している心があなたですからね。ここでバレバレな誤魔化しを覚えたらこれはもう大迷惑でしょう。これ以上面倒な人にならないでくださいね」
面倒? それはこちらの台詞だと返そうとすると微笑むハイネの顔が目に入り、口が閉じ言葉が止まる。
「あなたは隠し事をいっぱい抱えていても私はあなたの言葉を信じていますから」
「そうか……」
ジーナは言い、ハイネも言った。
「はい、そうです」
なにがそうかで、なにがそうですなのか、言った自分もハイネの答えも意味が不明のままジーナは自然に頷きそうになる首を慌てて横に振った。
縦に振ったら負けだとでも?
「あの、言葉にしなくてもいいですが、せめて心の中では認めたらどうです?」
「なにが?」
0
あなたにおすすめの小説
「がっかりです」——その一言で終わる夫婦が、王宮にはある
柴田はつみ
恋愛
妃の席を踏みにじったのは令嬢——けれど妃の心を折ったのは、夫のたった一言だった
王太子妃リディアの唯一の安らぎは、王太子アーヴィンと交わす午後の茶会。だが新しく王宮に出入りする伯爵令嬢ミレーユは、妃の席に先に座り、殿下を私的に呼び、距離感のない振る舞いを重ねる。
リディアは王宮の礼節としてその場で正す——正しいはずだった。けれど夫は「リディア、そこまで言わなくても……」と、妃を止めた。
「わかりました。あなたには、がっかりです」
微笑んで去ったその日から、夫婦の茶会は終わる。沈黙の王宮で、言葉を失った王太子は、初めて“追う”ことを選ぶが——遅すぎた。
そのご寵愛、理由が分かりません
秋月真鳥
恋愛
貧乏子爵家の長女、レイシーは刺繍で家計を支える庶民派令嬢。
幼いころから前世の夢を見ていて、その技術を活かして地道に慎ましく生きていくつもりだったのに——
「君との婚約はなかったことに」
卒業パーティーで、婚約者が突然の裏切り!
え? 政略結婚しなくていいの? ラッキー!
領地に帰ってスローライフしよう!
そう思っていたのに、皇帝陛下が現れて——
「婚約破棄されたのなら、わたしが求婚してもいいよね?」
……は???
お金持ちどころか、国ごと背負ってる人が、なんでわたくしに!?
刺繍を褒められ、皇宮に連れて行かれ、気づけば妃教育まで始まり——
気高く冷静な陛下が、なぜかわたくしにだけ甘い。
でもその瞳、どこか昔、夢で見た“あの少年”に似ていて……?
夢と現実が交差する、とんでもスピード婚約ラブストーリー!
理由は分からないけど——わたくし、寵愛されてます。
※毎朝6時、夕方18時更新!
※他のサイトにも掲載しています。
結婚初夜、「何故彼女が死んでお前が生きているんだ」と夫に言われました
ましゅぺちーの
恋愛
侯爵令嬢のアリサは婚約者だった王太子テオドールと結婚した。
ちょうどその半年前、アリサの腹違いの妹のシアは不慮の事故で帰らぬ人となっていた。
王太子が婚約者の妹のシアを愛していたのは周知の事実だった。
そんな彼は、結婚初夜、アリサに冷たく言い放った。
「何故彼女が死んでお前が生きているんだ」と。
捨てられた王妃は情熱王子に攫われて
きぬがやあきら
恋愛
厳しい外交、敵対勢力の鎮圧――あなたと共に歩む未来の為に手を取り頑張って来て、やっと王位継承をしたと思ったら、祝賀の夜に他の女の元へ通うフィリップを目撃するエミリア。
貴方と共に国の繁栄を願って来たのに。即位が叶ったらポイなのですか?
猛烈な抗議と共に実家へ帰ると啖呵を切った直後、エミリアは隣国ヴァルデリアの王子に攫われてしまう。ヴァルデリア王子の、エドワードは影のある容姿に似合わず、強い情熱を秘めていた。私を愛しているって、本当ですか? でも、もうわたくしは誰の愛も信じたくないのです。
疑心暗鬼のエミリアに、エドワードは誠心誠意向に向き合い、愛を得ようと少しずつ寄り添う。一方でエミリアの失踪により国政が立ち行かなくなるヴォルティア王国。フィリップは自分の功績がエミリアの内助であると思い知り――
ざまあ系の物語です。
田舎暮らしの貧乏令嬢、幽閉王子のお世話係になりました〜七年後の殿下が甘すぎるのですが!〜
侑子
恋愛
「リーシャ。僕がどれだけ君に会いたかったかわかる? 一人前と認められるまで魔塔から出られないのは知っていたけど、まさか七年もかかるなんて思っていなくて、リーシャに会いたくて死ぬかと思ったよ」
十五歳の時、父が作った借金のために、いつ魔力暴走を起こすかわからない危険な第二王子のお世話係をしていたリーシャ。
弟と同じ四つ年下の彼は、とても賢くて優しく、可愛らしい王子様だった。
お世話をする内に仲良くなれたと思っていたのに、彼はある日突然、世界最高の魔法使いたちが集うという魔塔へと旅立ってしまう。
七年後、二十二歳になったリーシャの前に現れたのは、成長し、十八歳になって成人した彼だった!
以前とは全く違う姿に戸惑うリーシャ。
その上、七年も音沙汰がなかったのに、彼は昔のことを忘れていないどころか、とんでもなく甘々な態度で接してくる。
一方、自分の息子ではない第二王子を疎んで幽閉状態に追い込んでいた王妃は、戻ってきた彼のことが気に入らないようで……。
皇帝陛下の寵愛は、身に余りすぎて重すぎる
若松だんご
恋愛
――喜べ、エナ! お前にも縁談が来たぞ!
数年前の戦で父を、病で母を亡くしたエナ。
跡継ぎである幼い弟と二人、後見人(と言う名の乗っ取り)の叔父によりずっと塔に幽閉されていたエナ。
両親の不在、後見人の暴虐。弟を守らねばと、一生懸命だったあまりに、婚期を逃していたエナに、叔父が(お金目当ての)縁談を持ちかけてくるけれど。
――すまないが、その縁談は無効にさせてもらう!
エナを救ってくれたのは、幼馴染のリアハルト皇子……ではなく、今は皇帝となったリアハルト陛下。
彼は先帝の第一皇子だったけれど、父帝とその愛妾により、都から放逐され、エナの父のもとに身を寄せ、エナとともに育った人物。
――結婚の約束、しただろう?
昔と違って、堂々と王者らしい風格を備えたリアハルト。驚くエナに妻になってくれと結婚を申し込むけれど。
(わたし、いつの間に、結婚の約束なんてしてたのっ!?)
記憶がない。記憶にない。
姉弟のように育ったけど。彼との別れに彼の無事を願ってハンカチを渡したけれど! それだけしかしてない!
都会の洗練された娘でもない。ずっと幽閉されてきた身。
若くもない、リアハルトより三つも年上。婚期を逃した身。
後ろ盾となる両親もいない。幼い弟を守らなきゃいけない身。
(そんなわたしが? リアハルト陛下の妻? 皇后?)
ずっとエナを慕っていたというリアハルト。弟の後見人にもなってくれるというリアハルト。
エナの父は、彼が即位するため起こした戦争で亡くなっている。
だから。
この求婚は、その罪滅ぼし? 昔世話になった者への恩返し?
弟の後見になってくれるのはうれしいけれど。なんの取り柄もないわたしに求婚する理由はなに?
ずっと好きだった彼女を手に入れたかったリアハルトと、彼の熱愛に、ありがたいけれど戸惑いしかないエナの物語。
王女の中身は元自衛官だったので、継母に追放されたけど思い通りになりません
きぬがやあきら
恋愛
「妻はお妃様一人とお約束されたそうですが、今でもまだ同じことが言えますか?」
「正直なところ、不安を感じている」
久方ぶりに招かれた故郷、セレンティア城の月光満ちる庭園で、アシュレイは信じ難い光景を目撃するーー
激闘の末、王座に就いたアルダシールと結ばれた、元セレンティア王国の王女アシュレイ。
アラウァリア国では、新政権を勝ち取ったアシュレイを国母と崇めてくれる国民も多い。だが、結婚から2年、未だ後継ぎに恵まれないアルダシールに側室を推す声も上がり始める。そんな頃、弟シュナイゼルから結婚式の招待が舞い込んだ。
第2幕、連載開始しました!
お気に入り登録してくださった皆様、ありがとうございます! 心より御礼申し上げます。
以下、1章のあらすじです。
アシュレイは前世の記憶を持つ、セレンティア王国の皇女だった。後ろ盾もなく、継母である王妃に体よく追い出されてしまう。
表向きは外交の駒として、アラウァリア王国へ嫁ぐ形だが、国王は御年50歳で既に18人もの妃を持っている。
常に不遇の扱いを受けて、我慢の限界だったアシュレイは、大胆な計画を企てた。
それは輿入れの道中を、自ら雇った盗賊に襲撃させるもの。
サバイバルの知識もあるし、宝飾品を処分して生き抜けば、残りの人生を自由に謳歌できると踏んでいた。
しかし、輿入れ当日アシュレイを攫い出したのは、アラウァリアの第一王子・アルダシール。
盗賊団と共謀し、晴れて自由の身を望んでいたのに、アルダシールはアシュレイを手放してはくれず……。
アシュレイは自由と幸福を手に入れられるのか?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる