異世界でもギターしかなかった

bbbcat

文字の大きさ
7 / 28
第1巻 異世界でもギターしかなかった ~迷わずの森とバーウの村~

第7話「種族混合村と大合唱」

しおりを挟む
************************************
  
 「ついたぞ!!」

 ピーネの道案内でたどり着いた村は、
それは、村と言うにはかなりおそまつなものではあった。
    
 森の中の少し開けた空間をおそらく爪や牙であろう、邪魔な位置にある木を雑にへし折り、太くとがった幹と根が、そのままになっているのが所々見受けられる。
 
 家と思われる建物も、石や鉄などの鋼材も、布等の繊維素材も使わず、何者かが、ただ木の上を陣地として所有していたり、鳥の巣の様に木を編んでドーム状にしている様な家ばかりだ。

 そして、確かに魔物の村であることは間違いない。
そこまで広くないであろうこの集落を見渡せば、耳がとがって緑色をしている者や、豚の顔をした巨漢がいたり、水の様な生き物だっている。

 まさに日本にはいなかった、ラノベに出てくるような「ザ モンスター」というような生き物ばかりであった。

「ここがピーネの村か……。」
幸はこの世界は、まだこの「迷わずの森」しか知らないので、元の世界と比べる事は出来ても、これがこの異世界でのどの程度の文明力なのかは全く図れない。

 ただ、何か加工したのであろう道具や工具、皿や壺の様な陶材も見当たらない。
だとすると、ここには人間のような文明人はおらず、やはりそれが作れる人間の知恵、技術の偉大さを、幸は何となく感じた。
   
「幸!待ってろ!俺も家から取ってくる!」
ピーネはそういってバサバサと翼を仰いで幸から離れていく。
    
「え!?ちょっちょっと待ってよ!」
独りにされた幸は叫ぶ。

    
             ”ギャオース!!!”


 幸が叫んだせいか、魔物達がどんどん集まって来た。
先ほどから見えていた者達のほかにも、身体が馬で人の身体がある者や、自分の身体よりも遥かに大きな蜘蛛も現れた。

 さらに後方からは角が生えて一つ目の大男が歩いて来る。

 混合村と呼ばれ、はぶれた物共が集まるとピーネが言っていたが、同じ種族である魔物は、なるほど、1人として見受けられなかった。
   
「ひぃ~!!」
幸は、先ほどはピーネ、たった一人にすらゲームオーバーを覚悟していたのに、これほどの数の魔物と対峙するのは恐怖でしかない。

 しかもピーネはどこかに飛び去った。

 幸は恐れながらも、これしかないとばかりに抱えていた物を見る。
そして緑の相棒を演奏するポジションに構えた。
        

            「B E F# G#m7♪」


 奏でられた音はキーの音から始まり綺麗に循環しまたキーに戻る優しいコード進行。
 物悲しさはなく元気に、そしてその中に温かな優しさが包まれたメロディー。

 幸はそれを巧みなアルペジオで優しくつま弾いた。

    

                「~♪」

    

「なんだこれは!?」

「美しい!」

「気持ちいい」

魔物の奇声が次々に言語化され、幸の耳に届く。

   

                「~♪♪」

   

「最高だ!!」

「涙が勝手に溢れてくる」

 この規模の村なら、余裕で端から端まで届いていく。
いつしか村の生物全員が、幸の元まで寄って来て音楽を聞き入っていた。

  
              「ピロポン♪パロポン♪」


 そんな時、上空から弦楽器が小気味良いリズムを蓄えて鳴る。
幸はギターを弾きながら上空を見る。

 ピーネだった。

 幸を置いて飛び去ったピーネは、"ハープ"を自分の家から取って戻って来たのだ。

 着地したピーネのハープは、ギターに寄り添う様に爪弾かれ、幸のギターの輪郭が強くなっていく。

          "文明の力がないこの村に何故ハープが?"

 と言うクエスチョンは後述する事になるが、ハーピーのハープ、その音色も幸のギターと重なり、キラキラと光を帯びて村中に伝わって行く。


 幸はニヤニヤが止まらない。


 誰かと演奏を披露するのは、幸にとって人生で2回目だが、一人で弾くより10倍楽しいのは既に知っている。

 村は幸せに包まれていつしか全員肩を組み歌い出す。


「WOW!!さぁ輪になって踊ろう!!らららららすぐに分かるから!!」
と言わんばかりにゴブリンやオークやスライム達は高らかにみんなで歌い出すのだ。


 幸も嬉しくなって、ギターを止めない。



            「~♪」

   

 幸とピーネの2重奏は、この村の全ての魔物を虜にした。

 幸の笑顔は村中の魔物を笑顔にした。

 そして大合唱を巻き起こしたところで、最後の小節も弾き切っていた。

   

   「「「「パチパチパチパチ」」」」


 村の魔物達が怒号の様な拍手と共に、


   「「「「「お前はもう俺たちの仲間だ!」」」」」

 心が一つになった瞬間である。

 幸は気持ちよさの中にトリップしていく。

……。

……やっぱりライブって最高。

…………目の前がまだ真っ白に揺らめいて輝いてんだ。

………………。

…………。

……。

**************************************
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

第2の人生は、『男』が希少種の世界で

赤金武蔵
ファンタジー
 日本の高校生、久我一颯(くがいぶき)は、気が付くと見知らぬ土地で、女山賊たちから貞操を奪われる危機に直面していた。  あと一歩で襲われかけた、その時。白銀の鎧を纏った女騎士・ミューレンに救われる。  ミューレンの話から、この世界は地球ではなく、別の世界だということを知る。  しかも──『男』という存在が、超希少な世界だった。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

唯一無二のマスタースキルで攻略する異世界譚~17歳に若返った俺が辿るもう一つの人生~

専攻有理
ファンタジー
31歳の事務員、椿井翼はある日信号無視の車に轢かれ、目が覚めると17歳の頃の肉体に戻った状態で異世界にいた。 ただ、導いてくれる女神などは現れず、なぜ自分が異世界にいるのかその理由もわからぬまま椿井はツヴァイという名前で異世界で出会った少女達と共にモンスター退治を始めることになった。

転生貴族の領地経営〜現代日本の知識で異世界を豊かにする

ファンタジー
ローラシア王国の北のエルラント辺境伯家には天才的な少年、リーゼンしかしその少年は現代日本から転生してきた転生者だった。 リーゼンが洗礼をしたさい、圧倒的な量の加護やスキルが与えられた。その力を見込んだ父の辺境伯は12歳のリーゼンを辺境伯家の領地の北を治める代官とした。 これはそんなリーゼンが異世界の領地を経営し、豊かにしていく物語である。

テンプレ最強勇者に転生したら魔女が妻になった

紡識かなめ
ファンタジー
七つの大陸、それぞれを支配する“七大魔女”── 魔力あふれる世界《アルセ=セフィリア》は、魔女たちによる統治と恐怖に覆われていた。 だが、その支配に終止符を打つべく、一人の男が立ち上がる。 名はルーク・アルヴェイン。伝説の勇者の血を引く名家の出身でありながら、前世はただの社畜。 高い魔力と最強の肉体、そして“魔女の核を斬ることのできる唯一の剣”を手に、彼は世界を平和にするという使命にすべてを捧げていた。 ──しかし、最初に討伐した《闇の魔女・ミレイア》はこう言った。 「あなたの妻になります。魔女の掟ですから」 倒された魔女は魔力を失い、ただの美少女に。 しかもそのまま押しかけ同居!? 正妻宣言!? 風呂場に侵入!? さらには王女や別の魔女まで現れて、なぜか勇者をめぐる恋のバトルロイヤルが始まってしまう!

スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜

かの
ファンタジー
 世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。  スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。  偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。  スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!  冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!

異世界ビルメン~清掃スキルで召喚された俺、役立たずと蔑まれ投獄されたが、実は光の女神の使徒でした~

松永 恭
ファンタジー
三十三歳のビルメン、白石恭真(しらいし きょうま)。 異世界に召喚されたが、与えられたスキルは「清掃」。 「役立たず」と蔑まれ、牢獄に放り込まれる。 だがモップひと振りで汚れも瘴気も消す“浄化スキル”は規格外。 牢獄を光で満たした結果、強制釈放されることに。 やがて彼は知らされる。 その力は偶然ではなく、光の女神に選ばれし“使徒”の証だと――。 金髪エルフやクセ者たちと繰り広げる、 戦闘より掃除が多い異世界ライフ。 ──これは、汚れと戦いながら世界を救う、 笑えて、ときにシリアスなおじさん清掃員の奮闘記である。

異世界でぺったんこさん!〜無限収納5段階活用で無双する〜

KeyBow
ファンタジー
 間もなく50歳になる銀行マンのおっさんは、高校生達の異世界召喚に巻き込まれた。  何故か若返り、他の召喚者と同じ高校生位の年齢になっていた。  召喚したのは、魔王を討ち滅ぼす為だと伝えられる。自分で2つのスキルを選ぶ事が出来ると言われ、おっさんが選んだのは無限収納と飛翔!  しかし召喚した者達はスキルを制御する為の装飾品と偽り、隷属の首輪を装着しようとしていた・・・  いち早くその嘘に気が付いたおっさんが1人の少女を連れて逃亡を図る。  その後おっさんは無限収納の5段階活用で無双する!・・・はずだ。  上空に飛び、そこから大きな岩を落として押しつぶす。やがて救った少女は口癖のように言う。  またぺったんこですか?・・・

処理中です...