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第一楽章 憑依

第二十九話 ヴァルナの特徴

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 俺の新たな武器となったこの銃、ヴァルナは思っていた以上の高火力だ。
 急所に当たればほとんど1発で絶命するし、外れても大きなダメージを負わせることが出来る。
 ちなみにヴァルナには安全レバーが無い。
 あったところでなんの役にも立たないからだ。
 ただ俺が失敗したのはホルスターを作るのを忘れていたことだ。
 早く使いたくてから準備まで頭がまわらなかったのだ。
 ちょっと危険だが下への階段付近で作る。
 まず余っていた熊の毛皮を、銃のグリップ部分以外の所を布で覆う。
 接着部を鞄を作った時のように石で接着する。
 下手に裁縫するより何倍もこっちのほうが強度が上だ。
 あとはこれをどこに付けるかだが、腰に付けると刀の紅花と被るので、脚の大腿骨つまり太ももに付けることにする。
 幅3センチメートルにした毛皮を巻き付ける。
 最後の作業は肌に触れる部分の毛を全部なくすことだ。
 毛が刺さって集中出来なくなるからな。
 こうして出来上がったのはレッグホルスターだ。
 これでさあ出発とはいかない。
 なぜならヴァルナの弾がきれそうなのだ。
 1発が強力とはいえ、やはり弾の数の減りは激しいのだ。
 今の俺ではヴァルナの弾を1発作るのに20分程かかる。
 大きさはミリ単位までこだわらないと、銃が詰まって暴発してしまう。
 それに少しでも集中を乱してしまうと暴発してしまう。
 やはり強いものにはそれなりの対価が必要なのだ。

 ▶▶▶▶▶

 大体2時間ぐらい経っただろうか、6発の弾丸を作ることが出来た。
 この弾はいざという時の切り札にしようと思う。
 弾を作るには時間が足りなくなって、ソニアを助けれなくなってしまうからだ。
 階段を降りるとそこは真っ暗だった。
 このダンジョンに入ってから初めて明かりがなくなった。
 俺が鞄から青光石を取り出そうとすると、右の方から視線を感じた。
 すぐさまそちらに光を照らすと、そこには舌を出して近付いてくる蜥蜴がいた。
 上にいたリザードマンとは違い、こいつは四足歩行だ。
 刀で切りかかろうとするが、足がまるで地面とくっついているように動かない。
 足を見ると石化していた。
 理由はただ1つ、前にいるこの蜥蜴だ。
 こいつは多分見たところを自由自在に石化できるのだろう。
 さしずめロックサーペントと言ったところか。
 だが、生憎俺は【錬成】が使える。
【錬成】で足と地面を切り離して、石化した部分を最大まで固める。
 こうすることで欠けたりすることがなくなる。
 俺が動き出したことに驚いて硬直しているロックサーペントを紅花で切ると、頭と胴体に分かれた。
 よし、倒せたな。
 けど、この石化をした足をどうしようか。
 悩んでいると、足元でカサカサっと音がした。
 新たな魔物か、いや視線を感じられなかったぞ。
 下を見てみると……
 ……頭の無いロックサーペントが歩き回っていた。
 かなり気持ちが悪い、もはや見たくない。
 刀を振り下ろして、縦に半分に切る。
 そして核となる魔石を取り出した。
 それで今度こそ動きが止まる。
 はぁ、本当にどうしよう、この石化した足。
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