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後日談 カーソン
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『ウォルシンガム家執事カーソン氏からの聞き取りメモ』
――取材にご協力いただきありがとうございます。さっそくですが、御氏の経歴を教えていただけますでしょうか。
「若いころは国の財務局で働いていましたが、四十代にさしかかる時に一念発起しまして。たまたま良いご縁がありまして今の旦那様の元で働き始めました」
――なるほど。意外な経歴ですね。ところでカーソン氏から見たウォルシンガム卿クローヴィスとはどのような方でいらっしゃるのでしょうか。
「今回の取材の核心はそこでしょうか? 旦那様に取材を申し込んで断られていることは存じております」
――はは。鋭いですね。我々の新聞は例の件であの方に嫌われているようですから。
「あの誤報はいただけませんでしたね。旦那様もわたくしも余計な心労を強いられました。ご存知の通り、旦那様には当時、すぐに報道を訂正できない状況にありましたので」
――と、言いますのもやはり王室への脅迫犯が捕まっていなかったからですか。例の令嬢も血筋が王族に連なる方ですし……。帝国皇室との縁談も内密に進める必要があった。
「旦那様は何よりも国のためを思い動いておられました。ご自分のことをも犠牲にするほどに」
――なるほど。あなたはそれを主張されるために取材の申し込みを受けてくださった。
「旦那様からお許しはいただいております。記事にされる際には事前にわたくしと旦那様が原稿の確認をできるよう条件をつけさせていただきましたから」
――承知しております。
「旦那様は汚名をかぶることを恐れない方です。あの方の真意を知る者はあまりにも少ないでしょう。ただ、わたくし個人の観点から見ても旦那様は立派な紳士であると思われますが」
――なるほど。そういえば、宰相閣下は近日辞任される報道が出ておりますので、今後の活動にも注目が集まっておりますが。
「旦那様がなさりたいようにされればよろしいかと思っておりますので、とりたててわたくしめから申し上げることはございません」
――さすがですね。主人の忠臣でいらっしゃる。噂によると、今度こそ結婚なさるとか?
「えぇ、お耳が早い。近くお披露目することになるかと思います。身内だけのささやかなものですが」
――ずばり、どのような女性でしょうか?
「弟子ですね」
――は?
「優秀な官吏となるよう、旦那様とともに鍛え上げましたので。経理の初歩を叩き込んだのはわたくしです。当時はこんな次第になるとは思わず、旦那様をひたすら煩わす元凶のように感じたこともございましたが、しっかりした大人に育ってくれたもので……。結婚式を挙げられる際には感激のあまり咽び泣く予定でございます」
――あの、閣下のお相手の話でしたよね?
「何か問題でも?」
(カーソン氏の無言の圧により取材終了)
(取材メモは以上となる)
担当記者の所感……カーソン氏は終始礼儀正しかった。宰相閣下を裏から支えてきた気概を感じる。最後、宰相閣下のお相手について熱心に語られたものの、意図して情報を撹乱した感もある。やはりウォルシンガム家の使用人たちは鉄壁の守りであった。
――取材にご協力いただきありがとうございます。さっそくですが、御氏の経歴を教えていただけますでしょうか。
「若いころは国の財務局で働いていましたが、四十代にさしかかる時に一念発起しまして。たまたま良いご縁がありまして今の旦那様の元で働き始めました」
――なるほど。意外な経歴ですね。ところでカーソン氏から見たウォルシンガム卿クローヴィスとはどのような方でいらっしゃるのでしょうか。
「今回の取材の核心はそこでしょうか? 旦那様に取材を申し込んで断られていることは存じております」
――はは。鋭いですね。我々の新聞は例の件であの方に嫌われているようですから。
「あの誤報はいただけませんでしたね。旦那様もわたくしも余計な心労を強いられました。ご存知の通り、旦那様には当時、すぐに報道を訂正できない状況にありましたので」
――と、言いますのもやはり王室への脅迫犯が捕まっていなかったからですか。例の令嬢も血筋が王族に連なる方ですし……。帝国皇室との縁談も内密に進める必要があった。
「旦那様は何よりも国のためを思い動いておられました。ご自分のことをも犠牲にするほどに」
――なるほど。あなたはそれを主張されるために取材の申し込みを受けてくださった。
「旦那様からお許しはいただいております。記事にされる際には事前にわたくしと旦那様が原稿の確認をできるよう条件をつけさせていただきましたから」
――承知しております。
「旦那様は汚名をかぶることを恐れない方です。あの方の真意を知る者はあまりにも少ないでしょう。ただ、わたくし個人の観点から見ても旦那様は立派な紳士であると思われますが」
――なるほど。そういえば、宰相閣下は近日辞任される報道が出ておりますので、今後の活動にも注目が集まっておりますが。
「旦那様がなさりたいようにされればよろしいかと思っておりますので、とりたててわたくしめから申し上げることはございません」
――さすがですね。主人の忠臣でいらっしゃる。噂によると、今度こそ結婚なさるとか?
「えぇ、お耳が早い。近くお披露目することになるかと思います。身内だけのささやかなものですが」
――ずばり、どのような女性でしょうか?
「弟子ですね」
――は?
「優秀な官吏となるよう、旦那様とともに鍛え上げましたので。経理の初歩を叩き込んだのはわたくしです。当時はこんな次第になるとは思わず、旦那様をひたすら煩わす元凶のように感じたこともございましたが、しっかりした大人に育ってくれたもので……。結婚式を挙げられる際には感激のあまり咽び泣く予定でございます」
――あの、閣下のお相手の話でしたよね?
「何か問題でも?」
(カーソン氏の無言の圧により取材終了)
(取材メモは以上となる)
担当記者の所感……カーソン氏は終始礼儀正しかった。宰相閣下を裏から支えてきた気概を感じる。最後、宰相閣下のお相手について熱心に語られたものの、意図して情報を撹乱した感もある。やはりウォルシンガム家の使用人たちは鉄壁の守りであった。
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