【完結】愛しき冷血宰相へ別れの挨拶を

川上桃園

文字の大きさ
23 / 27

後日談 カーソン

しおりを挟む
『ウォルシンガム家執事カーソン氏からの聞き取りメモ』

――取材にご協力いただきありがとうございます。さっそくですが、御氏の経歴を教えていただけますでしょうか。

「若いころは国の財務局で働いていましたが、四十代にさしかかる時に一念発起しまして。たまたま良いご縁がありまして今の旦那様の元で働き始めました」

 ――なるほど。意外な経歴ですね。ところでカーソン氏から見たウォルシンガム卿クローヴィスとはどのような方でいらっしゃるのでしょうか。

「今回の取材の核心はそこでしょうか? 旦那様に取材を申し込んで断られていることは存じております」

 ――はは。鋭いですね。我々の新聞は例の件であの方に嫌われているようですから。

「あの誤報はいただけませんでしたね。旦那様もわたくしも余計な心労を強いられました。ご存知の通り、旦那様には当時、すぐに報道を訂正できない状況にありましたので」

 ――と、言いますのもやはり王室への脅迫犯が捕まっていなかったからですか。例の令嬢も血筋が王族に連なる方ですし……。帝国皇室との縁談も内密に進める必要があった。

「旦那様は何よりも国のためを思い動いておられました。ご自分のことをも犠牲にするほどに」

 ――なるほど。あなたはそれを主張されるために取材の申し込みを受けてくださった。

「旦那様からお許しはいただいております。記事にされる際には事前にわたくしと旦那様が原稿の確認をできるよう条件をつけさせていただきましたから」

 ――承知しております。

「旦那様は汚名をかぶることを恐れない方です。あの方の真意を知る者はあまりにも少ないでしょう。ただ、わたくし個人の観点から見ても旦那様は立派な紳士であると思われますが」

 ――なるほど。そういえば、宰相閣下は近日辞任される報道が出ておりますので、今後の活動にも注目が集まっておりますが。

「旦那様がなさりたいようにされればよろしいかと思っておりますので、とりたててわたくしめから申し上げることはございません」

 ――さすがですね。主人の忠臣でいらっしゃる。噂によると、今度こそ結婚なさるとか?

「えぇ、お耳が早い。近くお披露目することになるかと思います。身内だけのささやかなものですが」

 ――ずばり、どのような女性でしょうか?

「弟子ですね」

 ――は?

「優秀な官吏となるよう、旦那様とともに鍛え上げましたので。経理の初歩を叩き込んだのはわたくしです。当時はこんな次第になるとは思わず、旦那様をひたすら煩わす元凶のように感じたこともございましたが、しっかりした大人に育ってくれたもので……。結婚式を挙げられる際には感激のあまり咽び泣く予定でございます」

 ――あの、閣下のお相手の話でしたよね?

「何か問題でも?」

(カーソン氏の無言の圧により取材終了)

(取材メモは以上となる)

 担当記者の所感……カーソン氏は終始礼儀正しかった。宰相閣下を裏から支えてきた気概を感じる。最後、宰相閣下のお相手について熱心に語られたものの、意図して情報を撹乱した感もある。やはりウォルシンガム家の使用人たちは鉄壁の守りであった。
しおりを挟む
感想 7

あなたにおすすめの小説

【完結】幼い頃から婚約を誓っていた伯爵に婚約破棄されましたが、数年後に驚くべき事実が発覚したので会いに行こうと思います

菊池 快晴
恋愛
令嬢メアリーは、幼い頃から将来を誓い合ったゼイン伯爵に婚約破棄される。 その隣には見知らぬ女性が立っていた。 二人は傍から見ても仲睦まじいカップルだった。 両家の挨拶を終えて、幸せな結婚前パーティで、その出来事は起こった。 メアリーは彼との出会いを思い返しながら打ちひしがれる。 数年後、心の傷がようやく癒えた頃、メアリーの前に、謎の女性が現れる。 彼女の口から発せられた言葉は、ゼインのとんでもない事実だった――。 ※ハッピーエンド&純愛 他サイトでも掲載しております。

探さないでください。旦那様は私がお嫌いでしょう?

雪塚 ゆず
恋愛
結婚してから早一年。 最強の魔術師と呼ばれる旦那様と結婚しましたが、まったく私を愛してくれません。 ある日、女性とのやりとりであろう手紙まで見つけてしまいました。 もう限界です。 探さないでください、と書いて、私は家を飛び出しました。

愛されなかった公爵令嬢のやり直し

ましゅぺちーの
恋愛
オルレリアン王国の公爵令嬢セシリアは、誰からも愛されていなかった。 母は幼い頃に亡くなり、父である公爵には無視され、王宮の使用人達には憐れみの眼差しを向けられる。 婚約者であった王太子と結婚するが夫となった王太子には冷遇されていた。 そんなある日、セシリアは王太子が寵愛する愛妾を害したと疑われてしまう。 どうせ処刑されるならと、セシリアは王宮のバルコニーから身を投げる。 死ぬ寸前のセシリアは思う。 「一度でいいから誰かに愛されたかった。」と。 目が覚めた時、セシリアは12歳の頃に時間が巻き戻っていた。 セシリアは決意する。 「自分の幸せは自分でつかみ取る!」 幸せになるために奔走するセシリア。 だがそれと同時に父である公爵の、婚約者である王太子の、王太子の愛妾であった男爵令嬢の、驚くべき真実が次々と明らかになっていく。 小説家になろう様にも投稿しています。 タイトル変更しました!大幅改稿のため、一部非公開にしております。

私の容姿は中の下だと、婚約者が話していたのを小耳に挟んでしまいました

山田ランチ
恋愛
想い合う二人のすれ違いラブストーリー。 ※以前掲載しておりましたものを、加筆の為再投稿致しました。お読み下さっていた方は重複しますので、ご注意下さいませ。 コレット・ロシニョール 侯爵家令嬢。ジャンの双子の姉。 ジャン・ロシニョール 侯爵家嫡男。コレットの双子の弟。 トリスタン・デュボワ 公爵家嫡男。コレットの婚約者。 クレマン・ルゥセーブル・ジハァーウ、王太子。 シモン・グレンツェ 辺境伯家嫡男。コレットの従兄。 ルネ ロシニョール家の侍女でコレット付き。 シルヴィー・ペレス 子爵令嬢。 〈あらすじ〉  コレットは愛しの婚約者が自分の容姿について話しているのを聞いてしまう。このまま大好きな婚約者のそばにいれば疎まれてしまうと思ったコレットは、親類の領地へ向かう事に。そこで新しい商売を始めたコレットは、知らない間に国の重要人物になってしまう。そしてトリスタンにも女性の影が見え隠れして……。  ジレジレ、すれ違いラブストーリー

その結婚は、白紙にしましょう

香月まと
恋愛
リュミエール王国が姫、ミレナシア。 彼女はずっとずっと、王国騎士団の若き団長、カインのことを想っていた。 念願叶って結婚の話が決定した、その夕方のこと。 浮かれる姫を前にして、カインの口から出た言葉は「白い結婚にとさせて頂きたい」 身分とか立場とか何とか話しているが、姫は急速にその声が遠くなっていくのを感じる。 けれど、他でもない憧れの人からの嘆願だ。姫はにっこりと笑った。 「分かりました。その提案を、受け入れ──」 全然受け入れられませんけど!? 形だけの結婚を了承しつつも、心で号泣してる姫。 武骨で不器用な王国騎士団長。 二人を中心に巻き起こった、割と短い期間のお話。

女性として見れない私は、もう不要な様です〜俺の事は忘れて幸せになって欲しい。と言われたのでそうする事にした結果〜

流雲青人
恋愛
子爵令嬢のプレセアは目の前に広がる光景に静かに涙を零した。 偶然にも居合わせてしまったのだ。 学園の裏庭で、婚約者がプレセアの友人へと告白している場面に。 そして後日、婚約者に呼び出され告げられた。 「君を女性として見ることが出来ない」 幼馴染であり、共に過ごして来た時間はとても長い。 その中でどうやら彼はプレセアを友人以上として見れなくなってしまったらしい。 「俺の事は忘れて幸せになって欲しい。君は幸せになるべき人だから」 大切な二人だからこそ、清く身を引いて、大好きな人と友人の恋を応援したい。 そう思っている筈なのに、恋心がその気持ちを邪魔してきて...。 ※ ゆるふわ設定です。 完結しました。

年増令嬢と記憶喪失

くきの助
恋愛
「お前みたいな年増に迫られても気持ち悪いだけなんだよ!」 そう言って思い切りローズを突き飛ばしてきたのは今日夫となったばかりのエリックである。 ちなみにベッドに座っていただけで迫ってはいない。 「吐き気がする!」と言いながら自室の扉を音を立てて開けて出ていった。 年増か……仕方がない……。 なぜなら彼は5才も年下。加えて付き合いの長い年下の恋人がいるのだから。 次の日事故で頭を強く打ち記憶が混濁したのを記憶喪失と間違われた。 なんとか誤解と言おうとするも、今までとは違う彼の態度になかなか言い出せず……

〖完結〗あんなに旦那様に愛されたかったはずなのに…

藍川みいな
恋愛
借金を肩代わりする事を条件に、スチュワート・デブリン侯爵と契約結婚をしたマリアンヌだったが、契約結婚を受け入れた本当の理由はスチュワートを愛していたからだった。 契約結婚の最後の日、スチュワートに「俺には愛する人がいる。」と告げられ、ショックを受ける。 そして契約期間が終わり、離婚するが…数ヶ月後、何故かスチュワートはマリアンヌを愛してるからやり直したいと言ってきた。 設定はゆるゆるの、架空の世界のお話です。 全9話で完結になります。

処理中です...