俺たちは、ナナを“見ていただけ”だった──笑いの裏で壊れてたもの

nana

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第二話:俺、あいつの“限界”に一番近かった気がする

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ナナのこと、今思い出すとき、
まず浮かぶのは──
笑ってた顔やなくて、目ぇやねん。

こっちがゲラゲラ笑ってんのに、
ナナの目ぇだけ、妙に静かでさ。
なんていうんやろ、
“熱がない”っていうか、
“感情を一個だけ引き出しにしまってる”みたいな。



でも俺は、それが面白かったんや。

「うわ、その目やば」
「はい、名演技入りました~!」
って、カメラ向けて、またひと笑い。

主が命令出すたび、
俺がそれを茶化して、
ナナが応えて、
それをまた俺らが笑って。
あの空気の中じゃ、それが正解やった。



でもな、今こうやって振り返ると、
ナナの目、
たぶんあれ、“助けて”って言ってたんちゃうかなって。



いや、ちゃうな。
「助けて」じゃない。
“気づいて”や。

笑っててもええ。
からかっててもええ。
でも、せめて、
「お前、しんどいやろ?」って一回だけ、
誰かに言ってほしかったんちゃうかなって。



俺は、それができへんかった。
むしろ一番、やってへんかった。

ラップ芯の“キス芸”のときも、
わざび直舐めのときも、
Tシャツに氷入れるときも、
「ナイス演出!」って叫んでたの、俺や。



ナナが犬みたいに床を這って、
ポテチくわえて顔あげたとき、
「うわ、もう芸人やん!」って言ったの、俺や。

…でもな、
ナナ、あのときちょっとだけ顔ひきつってたんよ。

今さら、忘れられへん。



俺はナナの“限界”を、
笑いのふりして撫で回してたんかもしれん。

あいつの“ぎりぎりのライン”に、
一番近いとこで笑ってたの、
俺なんよな。



ほんまは、
あいつ、よくやってたよ。
ようやく、今ならそう言える。



でもそれを、
あのときの俺は、
「ようやったな」って言葉で済ませられへんかった。

“面白い”に逃げた。
気まずさを、“ノリ”に変えた。



そして今、
ナナの名前を思い出すたび、
俺の中の“あの夜の俺”が、
笑いながら黙るんよ。

黙って、目ぇ伏せてんねん。



ごめんな、ナナ。

お前の“目”に気づいてて、
何もせんかったん、俺やったわ。
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