ナナはなぜ壊れたのか③——少女が、少女を脱ぎ捨てるまで

nana

文字の大きさ
7 / 36

第60話 「光のなかで、もう一度生まれる」

しおりを挟む
初めてのステージは、
思った以上に眩しかった。

体育館の簡易ステージ。
ライトは控えめで、
客席もクラスメートばかり。

それでも、
私には、
眩しすぎた。

何日も練習した振り付け。
何度も繰り返したフォーメーション。

リハーサルでは平気だったのに、
本番前、
ステージ袖で待っていると、
膝が震えた。

喉がカラカラに渇く。

耳の奥で、
心臓の音が暴れていた。

──また、壊れるかもしれない。

そんな予感が、
身体の奥をかすめた。

でも、
私は、逃げなかった。

ここまで来たんだ。

怖い。
でも、
逃げたくなかった。

「いくで、ナナ!」

先輩の声が聞こえた。

音楽が流れる。

ステージに、踏み出す。

ライトが当たる。

眩しくて、
何も見えなかった。

でも。

私は、
一歩、また一歩、
カラダを動かした。

リズムに合わせて、
ステップを踏む。

腕を伸ばす。

ターンする。

そのたびに、
カラダが、
心が、
熱く震えた。

誰が見てるかなんて、もうどうでもよかった。

誰かに見られることを恐れていた私が、
今、
自分から、
光の中へ飛び込んでいる。

カラダが動くたび、
私は、
自分自身に近づいていく気がした。

痛みも。
傷も。
恥も。

全部、
今この瞬間、
音と光に溶けていく。

私は、
この場所で、
もう一度、生まれようとしていた。

ステージが終わったとき、
拍手が聞こえた。

耳の奥が、
じんじんと響いた。

私は、
ぜいぜいと息を切らしながら、
ステージ袖に駆け戻った。

仲間たちの笑顔。
背中を叩かれる感触。

私は、
笑っていた。

心の底から、
笑っていた。

まだ、私は壊れたままかもしれない。

でも、
それでもいい。

私は、
このカラダで、
この心で、
もう一度、何かを掴みたかった。

春の体育館の、
少し埃っぽい空気の中。

私は、
確かに、
また、ひとつ、
生まれ変わった。

──つづく。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

上司、快楽に沈むまで

赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。 冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。 だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。 入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。 真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。 ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、 篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」 疲労で僅かに緩んだ榊の表情。 その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。 「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」 指先が榊のネクタイを掴む。 引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。 拒むことも、許すこともできないまま、 彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。 言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。 だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。 そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。 「俺、前から思ってたんです。  あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」 支配する側だったはずの男が、 支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。 上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。 秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。 快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。 ――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。

同じアパートに住む年上未亡人美女は甘すぎる。

ピコサイクス
青春
大学生の翔太は、一人暮らしを始めたばかり。 真下の階に住むのは、落ち着いた色気と優しさを併せ持つ大人の女性・水無瀬紗夜。 引っ越しの挨拶で出会った瞬間、翔太は心を奪われてしまう。 偶然にもアルバイト先のスーパーで再会した彼女は、翔太をすぐに採用し、温かく仕事を教えてくれる存在だった。 ある日の仕事帰り、ふたりで過ごす時間が増えていき――そして気づけば紗夜の部屋でご飯をご馳走になるほど親密に。 優しくて穏やかで――その色気に触れるたび、翔太の心は揺れていく。 大人の女性と大学生、甘くちょっぴり刺激的な同居生活(?)がはじまる。

カクヨムでアカウント抹消されました。

たかつき
エッセイ・ノンフィクション
カクヨムでアカウント抹消された話。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

久々に幼なじみの家に遊びに行ったら、寝ている間に…

しゅうじつ
BL
俺の隣の家に住んでいる有沢は幼なじみだ。 高校に入ってからは、学校で話したり遊んだりするくらいの仲だったが、今日数人の友達と彼の家に遊びに行くことになった。 数年ぶりの幼なじみの家を懐かしんでいる中、いつの間にか友人たちは帰っており、幼なじみと2人きりに。 そこで俺は彼の部屋であるものを見つけてしまい、部屋に来た有沢に咄嗟に寝たフリをするが…

真面目な女性教師が眼鏡を掛けて誘惑してきた

じゅ〜ん
エッセイ・ノンフィクション
仲良くしていた女性達が俺にだけ見せてくれた最も可愛い瞬間のほっこり実話です

処理中です...