“新しい主”が欲しかった──ナナを真似る女、飼いたがる男

nana

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第1話 「彼の“新しいナナ”に会った日」

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「ほんまに久しぶりやなあ」
彼はそう言って、私のことを抱きしめた。
駅前のカフェ、午後3時。
笑顔のまま、彼はあの頃と変わらなかった。

ただ──横に、別の女の子が座っていた。



年下っぽい。まだ20代。
髪は巻いてて、口元にはずっと愛想笑いがある。
でも私が一番気になったのは、
彼女の手の動きや、うなずき方や、言葉の選び方。

それがあまりにも、
昔の“ナナ”に似すぎてた。



「この子さ、なんかナナに似てるんよ」
彼は笑いながら言った。
「最初びっくりしたわ。仕草とか、笑い方とか。
俺、“またナナとやり直せるんちゃうかな”って思ったくらい」

彼女は少し照れて、私の方を見て会釈した。
何か言いかけたけど、私には聞こえなかった。



「ナナ」って、私の名前ちゃうかったん?
あの頃、主にそう呼ばれていた私だけの名前。
それを“他の誰か”に使われたとき、
自分の居場所がひとつ消えた気がした。



彼は続ける。
「最近、ちょっとずつ“ナナ”やってもらってんねん」
「ラップの芯のやつとか、服の中の氷のとか、ほら、懐かしいやろ?」

懐かしい。
でも同時に、私だけの“恥ずかしい記憶”が、他人にコピーされてるような気がした。



彼女が“ナナ”をやってるってことは、
私はもう、その役を降ろされたってことなんやろうか。

ナナを演じることは、
私の中では“痛みと快感”がぐちゃぐちゃに混ざった記憶やった。

それを、「上手やねん」って他人に話されるのは、
自分の傷を、“誰かの遊び道具”にされたみたいな感覚やった。



「今度また、三人で遊ぼな」
そう言われたとき、私は笑って「うん」と答えた。
でも心の中では、
“次のステージ”が始まってしまったことを感じてた。

過去をなぞらせてくる彼と、
私を真似る彼女と、
忘れられた“本物のナナ”としての私。



これはもう、再会なんかやなかった。
“私が不要になるプロセス”の始まりやった。
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