“新しい主”が欲しかった──ナナを真似る女、飼いたがる男

nana

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第6話 「どっちが“ナナ”か、やってみて」

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主は、冗談みたいなテンションで言った。
「じゃあさ、今日はゲームしよ」
「二人で“ナナ”、同時にやってみて」

私と彼女。
並べられるようにソファに座らされた。
彼の前に。

テーブルの上には、
何本かのストロー、チューブ調味料、小さな透明カップ。
どれも、かつて私を“ナナ”にした道具たち。

「ナナは昔、これで“うん、美味しいです…”って言ってたよな」
「彼女もそれ、再現できるかな?」

彼はそう言って、笑った。
あくまで軽く、楽しそうに。
でも私の心は、
その一言で凍りつくように痛くなった。

再現、ってなんやろう。
私のあの夜は、ただの“シーン”やったん?
私が震えながら飲み込んだあの感情も、
彼にとっては“もう一度笑えるコンテンツ”なん?

「ナナ、やって」
「君も、いっしょに」
主が指を鳴らした。

私は、もう断ることすら忘れていた。

彼女は嬉しそうだった。
主に並んで何かを求められることが、
まるで“合格通知”みたいに見えたんやろう。

そして、二人で同時に動いた。
チューブを咥え、ストローに口を寄せ、
「おいしいです」と言って、笑ってみせた。

笑い声はなかった。
ただ、主がぽつりと呟いた。

「うわ、これ、選ばれへんなあ」
「どっちがホンマの“ナナ”かわからん」

私は笑った。
笑って、泣きそうになった。

違う。
私は“ナナ”やった。
演じてたんやない。
生きてたんや。

でも、いま隣にいる彼女と並べられた瞬間──
“私はもう終わったんや”って、思った。

彼女の“ナナ”は、
命令に忠実で、素直で、キレイで、
何より“過去を背負ってない”。

でも私の“ナナ”は、
痛みと、羞恥と、敗北でできてる。

私のほうが深いのに。
私のほうが、確かに“ナナ”だったのに。

彼の目には、
もうどちらが本物かなんて、どうでもよかったのかもしれない。

この夜から、
私は“ナナのコピーと同列”にされた。

それは命令より残酷な、
“比較”という罰やった。
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