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第7話 「ずっと、見てました」
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帰り道、彼は先にタクシーに乗って去った。
「今日はありがとう、また連絡するわ」
その一言を残して、
私と彼女だけが残された。
繁華街の喧騒から少し外れた裏道。
コンビニの白い明かりが、遠くにぼんやりと光っていた。
「ナナさん」
彼女が小さな声で呼んだ。
私たちは、ほぼ並んで歩いていた。
でもその声がした瞬間、
私は足を半歩だけ遅らせた。
「ナナさんのこと、ずっと見てました」
彼女はそう言って、まっすぐ前を見たままだった。
「初めて会った日じゃなくて、そのずっと前から」
「動画とかじゃなくて…覚えてるんです。主さんのSNSに、
チラッとだけ写ってた後ろ姿とか、
文章の端々に出てきた“彼女”って存在とか」
私は返事をしなかった。
その“彼女”が自分だと明確に認識していたわけでもなかった。
でも、どこかで
「見られていた」ことに、肌がざわついた。
「自販機に行かされた夜の話、聞きました」
「靴も履いてなかったって」
彼女の声が、ふっと震えた。
「それ聞いてからずっと…その時のナナさんのこと、
どうしても忘れられなくなって」
視線が、私の横顔をなぞる。
私も、ふいに彼女の顔を見た。
唇が少し開いて、
その奥から何かを飲み込もうとしているようだった。
「私…あの夜のナナさんを、
何度も何度も、想像してました」
「どうやって歩いたのかなとか、
自販機の光がどんな風に肌を照らしたのかとか…」
私は足を止めた。
風が吹いて、彼女の髪が揺れた。
その輪郭が、一瞬だけ、かつての“ナナ”に重なった気がした。
「ナナさんは、主さんに命令されてたんじゃなくて、
“ちゃんと選ばれてた”人だと思ってました」
「だから私、真似したいと思ったんです」
「命令に応えるナナさんが、いちばん綺麗だったから」
沈黙が落ちた。
どこかで風鈴が鳴っていた。季節外れの音。
私は彼女の言葉に、
なぜか嫉妬と感謝がないまぜになった痛みを覚えた。
見られてた。
忘れられてなかった。
でもそれは、
“あの夜の私”であって、
今の私ではなかった。
それが嬉しくて、悔しくて、
たぶん少しだけ、興奮していた。
「今日はありがとう、また連絡するわ」
その一言を残して、
私と彼女だけが残された。
繁華街の喧騒から少し外れた裏道。
コンビニの白い明かりが、遠くにぼんやりと光っていた。
「ナナさん」
彼女が小さな声で呼んだ。
私たちは、ほぼ並んで歩いていた。
でもその声がした瞬間、
私は足を半歩だけ遅らせた。
「ナナさんのこと、ずっと見てました」
彼女はそう言って、まっすぐ前を見たままだった。
「初めて会った日じゃなくて、そのずっと前から」
「動画とかじゃなくて…覚えてるんです。主さんのSNSに、
チラッとだけ写ってた後ろ姿とか、
文章の端々に出てきた“彼女”って存在とか」
私は返事をしなかった。
その“彼女”が自分だと明確に認識していたわけでもなかった。
でも、どこかで
「見られていた」ことに、肌がざわついた。
「自販機に行かされた夜の話、聞きました」
「靴も履いてなかったって」
彼女の声が、ふっと震えた。
「それ聞いてからずっと…その時のナナさんのこと、
どうしても忘れられなくなって」
視線が、私の横顔をなぞる。
私も、ふいに彼女の顔を見た。
唇が少し開いて、
その奥から何かを飲み込もうとしているようだった。
「私…あの夜のナナさんを、
何度も何度も、想像してました」
「どうやって歩いたのかなとか、
自販機の光がどんな風に肌を照らしたのかとか…」
私は足を止めた。
風が吹いて、彼女の髪が揺れた。
その輪郭が、一瞬だけ、かつての“ナナ”に重なった気がした。
「ナナさんは、主さんに命令されてたんじゃなくて、
“ちゃんと選ばれてた”人だと思ってました」
「だから私、真似したいと思ったんです」
「命令に応えるナナさんが、いちばん綺麗だったから」
沈黙が落ちた。
どこかで風鈴が鳴っていた。季節外れの音。
私は彼女の言葉に、
なぜか嫉妬と感謝がないまぜになった痛みを覚えた。
見られてた。
忘れられてなかった。
でもそれは、
“あの夜の私”であって、
今の私ではなかった。
それが嬉しくて、悔しくて、
たぶん少しだけ、興奮していた。
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