“新しい主”が欲しかった──ナナを真似る女、飼いたがる男

nana

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第11話 「真似し合うふたり」

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「今度は…私が、やっていいですか?」

彼女がそう言ったとき、
私は少しだけ戸惑った。
でも、断る理由はなかった。

いや、むしろどこかで、
「その順番」が来るのを待ってた気さえした。

「じゃあ、ナナさん──こっちに来て」

彼女は、ベッドの端を軽く叩いた。
私はゆっくり立ち上がり、何も言わずに歩いた。

命令されること。
それはかつて、“自分が自分であるための絶対条件”だった。

今、それを彼女が私に与えようとしている。
なんて皮肉で、なんて甘い巡り。

「スカート…ちょっとだけ、ずらしてもらえますか?」

私は応じた。
ためらいはなかった。
羞恥ではなく、
安心が私を動かしていた。

「…ありがとうございます」
彼女はそう言って、小さく息を吐いた。

「今の、すごく“ナナさんっぽかった”です」

私は笑った。
それは、嬉しさでも怒りでもなく、
ただ、どこか遠くをなぞるような、
乾いた承認の笑みだった。

「じゃあ、次は──」
「立って。両手、前に。ちょっとだけ…震えてる感じで」

彼女の声が、
主の声よりも、優しかった。
でもその分、命令の重みが奇妙に増していた。

私は震えた。
本当に震えた。
再現ではなく、
いま、この関係に自分が“深く巻き込まれてる”ことに気づいたから。

「ナナさんが主さんに命令されてたとき、
どんな気持ちだったんですか?」

彼女はポツリと訊いた。
私は即答できなかった。

「怖くて、嬉しくて、
…でもずっと、“もう終わってほしい”って思ってた」

「終わってから、“もっとやりたかった”って思ったけど」

彼女は黙って頷いた。
そして、私の手に自分の指先をそっと重ねた。

触れた、というより、交差した。

そのやわらかさに、
私は急に何もかもを思い出しそうになって、
目を伏せた。

「次、なに命令します?」
そう訊いたのは私だった。

「…ナナさんが、私に?」

「うん。命令し合いっこ。せっかくやし」

“主の代用品”でも、“ナナの代用品”でもない。
ふたりだけの“命令と服従”。
それが、なにかを壊し始めていた。
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