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【第12話】 「あんたが“名乗る”必要なんか、もうないよ」
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その日、私は何の前触れもなく名前を変えられた。
待ち合わせでもなければ、電話でもない。
いつものように彼女とLINEをしていたとき、
ふいに投げかけられた。
「今日から、“ミオ”って呼ぶな」
“ミオ”──聞き覚えのない響きだった。
特別な意味もなさそうで、でも、明らかに“私じゃない”感じがした。
「ナナでも、シオリでもなくて、
なんか、“新しく壊れそうな女の名前”って感じやん?」
その言葉に、私は指が止まった。
壊れそうな女──
私が、そんなふうに見えているのか。
いや、たぶんもうとっくに、そうなっていたのかもしれない。
「ミオ、今日さ、
部屋で一番“惨めに見える服”着て、自撮りして送って」
惨めに見える服。
その言葉を受け取って、私はクローゼットを開けた。
着飾るための服じゃなく、
「自分を下げるための服」を探すなんて、人生で初めてだった。
着古した部屋着。
毛玉のついたTシャツ。
中途半端に透けた、古いパジャマのズボン。
鏡に映った自分を見たとき、
確かに“ミオ”という名前が似合う気がした。
写真を撮って、送信。
数秒で返ってきたメッセージ。
「ああ、ええやん。
それ、“ナナ”じゃ無理やったね」
「“ナナ”は、“下がる”ことに罪悪感ありすぎるから」
「でも“ミオ”なら、最初からそこにいる感じする」
私はスマホを握ったまま、目を閉じた。
“そこ”って、どこ?
“下がる”って、なに?
問いは浮かんだのに、
答えようとする思考が、
彼女のたった一言に塗りつぶされていった。
夜。
寝る前、LINEがもう一通届いた。
「ナナ、シオリ、ミオ──
あんた、どの名前でも反応するようになったな」
「そろそろ自分で“名乗る”必要なんか、なくなってきたんちゃう?」
「呼ばれたとおりに従って、
“そのときの名前”で恥かいてくれたら、それでええよ」
そのメッセージを読んで、
私はスマホを抱えたまま、布団に沈んだ。
自分で自分を呼べないって、
こんなにも、静かで確かな“敗北”なんや。
でも──
その敗北に、
少しだけ安堵している自分がいた。
待ち合わせでもなければ、電話でもない。
いつものように彼女とLINEをしていたとき、
ふいに投げかけられた。
「今日から、“ミオ”って呼ぶな」
“ミオ”──聞き覚えのない響きだった。
特別な意味もなさそうで、でも、明らかに“私じゃない”感じがした。
「ナナでも、シオリでもなくて、
なんか、“新しく壊れそうな女の名前”って感じやん?」
その言葉に、私は指が止まった。
壊れそうな女──
私が、そんなふうに見えているのか。
いや、たぶんもうとっくに、そうなっていたのかもしれない。
「ミオ、今日さ、
部屋で一番“惨めに見える服”着て、自撮りして送って」
惨めに見える服。
その言葉を受け取って、私はクローゼットを開けた。
着飾るための服じゃなく、
「自分を下げるための服」を探すなんて、人生で初めてだった。
着古した部屋着。
毛玉のついたTシャツ。
中途半端に透けた、古いパジャマのズボン。
鏡に映った自分を見たとき、
確かに“ミオ”という名前が似合う気がした。
写真を撮って、送信。
数秒で返ってきたメッセージ。
「ああ、ええやん。
それ、“ナナ”じゃ無理やったね」
「“ナナ”は、“下がる”ことに罪悪感ありすぎるから」
「でも“ミオ”なら、最初からそこにいる感じする」
私はスマホを握ったまま、目を閉じた。
“そこ”って、どこ?
“下がる”って、なに?
問いは浮かんだのに、
答えようとする思考が、
彼女のたった一言に塗りつぶされていった。
夜。
寝る前、LINEがもう一通届いた。
「ナナ、シオリ、ミオ──
あんた、どの名前でも反応するようになったな」
「そろそろ自分で“名乗る”必要なんか、なくなってきたんちゃう?」
「呼ばれたとおりに従って、
“そのときの名前”で恥かいてくれたら、それでええよ」
そのメッセージを読んで、
私はスマホを抱えたまま、布団に沈んだ。
自分で自分を呼べないって、
こんなにも、静かで確かな“敗北”なんや。
でも──
その敗北に、
少しだけ安堵している自分がいた。
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