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【第14話】 「ねえ、“その名前”で呼ばれるの、興奮したやろ?」
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彼女からのお誘いは、突然だった。
「週末、うちの友達とカラオケ行くねん。
一人だけ、女呼ぼうと思って。
ミオ、来る?」
“ミオ”という名前で送られてきた時点で、
私の返事は決まっていた。
「行く」
カラオケルームに入ると、
彼女の男友達二人がすでにソファに座っていた。
軽く会釈を交わし、私は自然に笑っていたけれど──
自分が「ミオ」として見られていることが、
身体の奥でチクチク刺さっていた。
彼女は何も言わない。
「紹介しよか?」とも、「彼女やねん」とも言わない。
ただ、私が“誰かの女”であることだけは、
誰の目にも明らかだった。
飲み物が届いて、1杯目が空いた頃。
彼女がふいに、こう言った。
「ミオ、歌って」
私は少し笑って、「えー」と言いながらリモコンを取った。
曲を選びながら、心の奥で思っていた。
“ナナ”だったら、ここで絶対歌わなかった。
“シオリ”なら、黙って従った。
でも“ミオ”は──ちょっと、楽しんでる。
歌いながら、
私はふと彼女の視線を感じた。
ニヤつきもせず、からかいもせず、
ただ、「命令通りに動く人間」を確認する目で私を見ていた。
2曲目を歌い終えたあと、
彼女がこっそり私の耳元でささやいた。
「今、“ミオ”って名前で歌わされた自分に、
ちょっとだけ興奮してたやろ?」
私は思わず、笑ってしまった。
図星すぎて、反論すらできなかった。
「やっぱそうなんや」
彼女はグラスを揺らしながら、続けた。
「“その名前”で見られるときの自分が、
一番“自分”らしくなる感覚ってあるよな」
彼女の友達がトイレに立ったとき、
彼女はスマホを取り出して、こう言った。
「今、“その顔”で自撮りして。
“名前で反応した顔”ってやつ」
言われるままに、私はスマホを構えた。
でもどこをどう切り取ればいいのか、わからなかった。
だから、
わざと、“わからない顔”をした。
その瞬間、彼女がぽつりと呟いた。
「ナナのときは、そんな顔しなかったのにな」
帰り道。
一緒にエレベーターを待ちながら、彼女が言った。
「名前って、見られ方を変えるよな」
「ミオって呼んだ瞬間、
ナナが“従うことを前提にされた女”の顔になるんやもん」
私は黙ったまま、ガラスに映る自分を見た。
たしかに、“ナナ”の顔ではなかった。
でも、“誰の顔”かも、わからなかった。
名前だけで人格が変わるなら、
もう私は、自分を持っていないのかもしれない。
でもそれが──
ちょっとだけ、楽だった。
「週末、うちの友達とカラオケ行くねん。
一人だけ、女呼ぼうと思って。
ミオ、来る?」
“ミオ”という名前で送られてきた時点で、
私の返事は決まっていた。
「行く」
カラオケルームに入ると、
彼女の男友達二人がすでにソファに座っていた。
軽く会釈を交わし、私は自然に笑っていたけれど──
自分が「ミオ」として見られていることが、
身体の奥でチクチク刺さっていた。
彼女は何も言わない。
「紹介しよか?」とも、「彼女やねん」とも言わない。
ただ、私が“誰かの女”であることだけは、
誰の目にも明らかだった。
飲み物が届いて、1杯目が空いた頃。
彼女がふいに、こう言った。
「ミオ、歌って」
私は少し笑って、「えー」と言いながらリモコンを取った。
曲を選びながら、心の奥で思っていた。
“ナナ”だったら、ここで絶対歌わなかった。
“シオリ”なら、黙って従った。
でも“ミオ”は──ちょっと、楽しんでる。
歌いながら、
私はふと彼女の視線を感じた。
ニヤつきもせず、からかいもせず、
ただ、「命令通りに動く人間」を確認する目で私を見ていた。
2曲目を歌い終えたあと、
彼女がこっそり私の耳元でささやいた。
「今、“ミオ”って名前で歌わされた自分に、
ちょっとだけ興奮してたやろ?」
私は思わず、笑ってしまった。
図星すぎて、反論すらできなかった。
「やっぱそうなんや」
彼女はグラスを揺らしながら、続けた。
「“その名前”で見られるときの自分が、
一番“自分”らしくなる感覚ってあるよな」
彼女の友達がトイレに立ったとき、
彼女はスマホを取り出して、こう言った。
「今、“その顔”で自撮りして。
“名前で反応した顔”ってやつ」
言われるままに、私はスマホを構えた。
でもどこをどう切り取ればいいのか、わからなかった。
だから、
わざと、“わからない顔”をした。
その瞬間、彼女がぽつりと呟いた。
「ナナのときは、そんな顔しなかったのにな」
帰り道。
一緒にエレベーターを待ちながら、彼女が言った。
「名前って、見られ方を変えるよな」
「ミオって呼んだ瞬間、
ナナが“従うことを前提にされた女”の顔になるんやもん」
私は黙ったまま、ガラスに映る自分を見た。
たしかに、“ナナ”の顔ではなかった。
でも、“誰の顔”かも、わからなかった。
名前だけで人格が変わるなら、
もう私は、自分を持っていないのかもしれない。
でもそれが──
ちょっとだけ、楽だった。
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