“新しい主”が、私を欲しがる夜

nana

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【第18話】 「従わなかったのに、“それで正解”って言われた」

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「今日は、なんでもいいから“脚”見せて」
夜9時。
彼女からのLINEは、それだけだった。

ミオ用の命令。
日付も曜日も関係ない。
たとえ私がどこにいても、
その言葉が届いた時点で、身体は“従う姿勢”を準備しはじめる。

でも──
その日は、なぜか違った。

鏡の前。
ガウチョパンツの裾を持ち上げようとして、
私はふと、指を止めた。

「……なんで、私が、いちいち送らなあかんのやろ」

理由なんてなかった。
ただ、その日は仕事で疲れてた。
鏡の中の自分が、ちょっとだけ“拒否したい顔”をしてた。

私は初めて、彼女の命令を“スルーした”。

既読はついた。
でも、返信はなかった。

それが余計に、こわかった。

10分。
20分。
30分が過ぎた。

「怒ってるかな」
「もう、“使えない女”って思われたかも」
「でも、あえて逆らったほうが……よかったりして」

そんな妄想が頭をぐるぐる回る。

結局、私は30分後、こう送ってしまった。

「ごめん、今日はなんか、無理やった」

「理由はない。
 でも、ちょっとだけ“従いたくない気分”やった」

「ほんまに、ごめん」

数分後、返信が来た。

「うん、それで正解」

一瞬、意味がわからなかった。

「“従わないミオ”も、見たかったから」
「ていうか、“従いたくないのに従う”って状態の方が、
 あんた苦しそうに見えるし」

「今日は、“自由に逆らう”って感覚を、
 ちょっとだけプレゼントしてあげただけ」

「感謝は、後日回収するけどな」

私はスマホを見つめたまま、声も出なかった。

「逆らう自由」すら、“与えられていた”。
そう気づいた瞬間、
私の中で、ひとつの幻想が崩れた。

私は、反抗したと思っていた。
でもそれすらも、彼女の掌の上だった。

私が“命令に従わなかった日”は、
彼女にとって“命令を受け入れさせた日”と同じだった。

自分が“拒否できる女”でいられた時間すら──
彼女の計算の上だったと知った今、
私にはもう、「自分の意思だった」と思える行動が何ひとつ残っていなかった。

でも──
その絶望すら、
ほんのすこし、心地よかった。
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