“新しい主”が、私を欲しがる夜

nana

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【第38話】 「なにもされてないのに──“濡れてみて”って命令された」

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「今日はさ、ほんまに、なんもせえへんから」

そう言って彼女は、
ソファに寝転がってスマホをいじっていた。

私は床に膝をついて、彼女の足元に控えている。

「でも──ひとつだけ、お願いしてええ?」
「触れへんし、見ぇへんし、声も出さへんけど」
「……それでも“勝手に濡れてくれる”と、嬉しいなあって」

私は驚かなかった。
でも、身体は静かに反応していた。

“してもらう快感”に慣れきった身体が、
**「なにもないまま命令される」**ことの恐ろしさと悦びを、
ちゃんと知っていた。

「わたしのこと、ちょっと考えてみて?」
「いつもミオが濡れてるときって、
 なんか、“怖いけど好き”って気持ちあったやろ?」

「それ、思い出すだけで──
 身体って、勝手に“過去の支配”を再生するんよ」

「……ほら、
 いま、下着、ちょっと冷たくなってない?」

私は何も言えなかった。
けれど、自分の体温が下腹部に集まり、
じんわりと濡れ始めているのを感じていた。

触れていない。
声もかけられていない。
刺激はゼロ。

でも、**「命令だけで濡れている自分」**に気づいた瞬間、
息が詰まった。

「すごいな。
 なんにもしてないのに、
 ミオの身体、“期待”だけで濡れてる」

「“濡れろ”って言われただけで反応する身体って──
 もう、わたしのもの通り越して、“作品”やわ」

彼女が近づいてきた。

指先が、私に触れるふりだけする。
実際には、一切接触していない。
なのに、私の腰がかすかに浮いた。

「触れられる予感だけ」で、
自分が“気持ちよくなる準備”をしていた。

「ねえ、ミオ。
 わたし、今日ひとつもあなたを触ってないんやで?」

「でも、あんたの身体、
 “今から濡れます”って、素直に答えてくれた」

「これ、“快感の自動再生”っていうんよ」
「もはや、“調教”じゃない。
 これは、“祈り”に近い反応やね」

私は、頷いた。
涙がこぼれそうになった。

自分の身体が、
もはや欲望ではなく、“記憶と命令”で動いている。

そしてその事実に、
どこか、救われている自分がいた。
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