“新しい主”が、私を欲しがる夜

nana

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【第83話】 「“ある人に見せたよ”って言われた瞬間、  私は“自分の何が伝わったのか”を想像することで、  全身が濡れていくのを止められな

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彼女は、紅茶を淹れながら言った。
本当に、何でもないことのように。

「昨日さ、ミオのプロフィール、ちょっと見せた」

私は思わず、カップを持つ手を止めた。

「……誰に?」

「んー、まぁ“知ってる人”やけど、
 別にミオの顔も名前も知らん。
 でも、“この女の存在だけ気になる”って反応やったよ」

喉が詰まりそうだった。

私があの夜、録音した声。
撮った湿った跡。
名もなき証拠の束。

それが、誰かの目に晒された。
“ナナでもミオでもない、ただの従属体として”。

「……何見せたん?」

「一枚だけ。
 あの座面に残った、濡れた跡の写真」

「でもさ、わたし何も説明してへん。
 ただ“彼女のプロフィール”って言っただけ」

「そしたら、相手、“あ、分かった”って」

分かった、って何。
何が分かるん。
私のなにを、どのくらい、どんなふうに──。

そう考えた瞬間、
自分の内側で熱がぐつぐつと沸き始めた。

「ミオ」
「ちゃんと、“存在だけで通じる女”になったんやで」

「言い訳も、演出もいらん」
「ただ“従った痕”を見せるだけで、
 人に“ああ、この人は支配されてるんやな”って思わせられるんやから」

私は、怖かった。
でも、
その“説明なしで理解される倒錯”に、
体の奥が反応しているのを隠せなかった。

名前を知られていないのに、
本質だけを見抜かれたこと。

それが、
たまらなく、うれしかった。

その夜、眠れなかった。
彼女の知り合い──誰? 男? 女?
どんな顔? どんな手つき?
どんな顔で、私のプロフィールを見た?

想像すればするほど、
**“私はもう、誰かのなかで存在してしまっている”**という感覚が、
全身を濡らしていった。
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