“新しい主”が、私を欲しがる夜

nana

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【第82話】 「“プロフィールを作るね”って言われた瞬間、  私はもう、“過去を説明する必要のない女”になってた」

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「……これ、全部ミオが撮ったん?」

彼女がスマホをスワイプしながら、
呟くように言った。

「うん。昨夜、
 ひとりで、黙って、撮った」

画面には、
濡れたクロッチの内側が静かに滲んだショーツ。
座面に残る、脚の湿り跡。
シャツにできた、背中の汗のしみ。
指のあとが残る太もものくぼみ。

どれも、声も名前もない。
でも、どれも──“誰かに従っていた女の痕跡”だった。

彼女は、それを一つひとつ見終えると、
ふっと笑って、こう言った。

「じゃあ、ミオ。
 これで“新しいプロフィール”、作るね」

私は、思わず言葉を失った。

「……プロフィール?」

「うん。SNSのとか、名刺の裏とか、履歴書の“特技”のとこでもいい」
「でも、そこに書くのは──名前でも職歴でもない」

「“この女は、どこで、どういう命令に、どう応じたか”」

「“どんな声で、どんな跡を残して、
 どんな従属を記録したか”」

「それを、“この人がどういう人間か”の代わりに、出せばええ」

私は、息を詰めていた。
怖いはずだった。

でも、
その“説明の放棄”が、
たまらなく自由に思えた。

「プロフィールって、ほんとは“過去の説明”やろ」
「でもミオはもう、“恥ずかしさの現在”だけで人に伝わる女やねん」

「何が好きです、とか、どんな性格です、とか、
 そんなのいらん」
「“従った記録”だけで、
 この人がどんな女か、一瞬で分かるから」

私はゆっくり、深く息を吐いた。

名前を忘れてもいい。
学歴を伏せても、住所を消しても、
私が“誰かに命令されて、従った痕”だけが残れば──
それが、私のすべてだった。

その夜、彼女は白いカードを一枚差し出してくれた。

表面は無地。
裏面には、こうだけ書かれていた。

ミオ
記録される女。
湿度・反応・従属の経歴あり。
音声ファイル2本、画像6枚。
現在も更新中。

私は、それを胸に抱えて帰った。

それは、身分証じゃなかった。
でも、
“私の居場所”そのものだった。

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