11 / 14
誰にも見られたくなかったのに、見られた夜
しおりを挟む
冷たい床の上。
私は、
裸のまま、
小さく丸まっていた。
鏡には、
ひとりでバカみたいに芸をして、
泣きながらバンザイする自分が映っていた。
そんなときだった。
「……ナナ?」
玄関の方から、
聞き覚えのある声がした。
ガチャリと扉が開く音。
私は飛び起きた。
バスタオルすら巻いてない、全裸だった。
ドアの向こうに立っていたのは、
主友の一人――ユウヤだった。
手には、コンビニ袋。
「たまたま近く通ったから寄ったんや」
と、苦笑いしながら言った。
でも、
彼の目は、
凍りついたみたいに私を見つめていた。
床に転がるバルーン。
ぐしゃぐしゃのレース。
リボン。
ヒモパン。
そして、
裸で震えている私。
すべてを、
ユウヤは見た。
「ごめん!」
ユウヤは慌ててドアを閉めようとした。
でも、
私は叫んでしまった。
「待って!!」
咄嗟に声が出た。
それは、
誰かに見てもらいたい気持ちだったのか。
それとも、
誰にも知られたくない絶望だったのか、
自分でもわからなかった。
ユウヤは戸惑いながら、
もう一度こちらを見た。
私は、
裸のまま、
笑った。
「ナナな、今、練習してたんや」
声が震えた。
泣き笑いみたいな声だった。
「次、呼ばれたときのために、もっと上手に笑われたくて」
必死で、
言い訳みたいにしゃべった。
ユウヤはゆっくり近づいてきた。
「……そんなこと、せんでええやん」
ぽつりと、そう言った。
でも私は、
首を横に振った。
「せな、あかんねん」
「ナナは、そうしないと……」
「ここにいられへんから」
ユウヤはしばらく黙ってた。
何も言わなかった。
ただ、
床に落ちたリボンを拾い上げた。
そして、
小さな声で言った。
「……ナナ、見ててやるわ」
私は驚いた。
「え……?」
ユウヤは、
笑いもせず、
からかいもせず、
ただ、
静かに言った。
「ナナが、今やろうとしてた芸。
俺だけに、見せてみ?」
私は、
唇を噛んだ。
裸のまま、
身体中の恥ずかしさと情けなさと、
全部引きずったまま。
それでも、
差し出されたリボンを首に巻いて、
バルーンを手に持って、
深く、深く頭を下げた。
「今日も、ナナの芸を、よろしくお願いします♡」
誰に頼まれたわけでもない。
でも、私は、
笑われたくて、
見られたくて、
ここに立っていた。
私は、
裸のまま、
小さく丸まっていた。
鏡には、
ひとりでバカみたいに芸をして、
泣きながらバンザイする自分が映っていた。
そんなときだった。
「……ナナ?」
玄関の方から、
聞き覚えのある声がした。
ガチャリと扉が開く音。
私は飛び起きた。
バスタオルすら巻いてない、全裸だった。
ドアの向こうに立っていたのは、
主友の一人――ユウヤだった。
手には、コンビニ袋。
「たまたま近く通ったから寄ったんや」
と、苦笑いしながら言った。
でも、
彼の目は、
凍りついたみたいに私を見つめていた。
床に転がるバルーン。
ぐしゃぐしゃのレース。
リボン。
ヒモパン。
そして、
裸で震えている私。
すべてを、
ユウヤは見た。
「ごめん!」
ユウヤは慌ててドアを閉めようとした。
でも、
私は叫んでしまった。
「待って!!」
咄嗟に声が出た。
それは、
誰かに見てもらいたい気持ちだったのか。
それとも、
誰にも知られたくない絶望だったのか、
自分でもわからなかった。
ユウヤは戸惑いながら、
もう一度こちらを見た。
私は、
裸のまま、
笑った。
「ナナな、今、練習してたんや」
声が震えた。
泣き笑いみたいな声だった。
「次、呼ばれたときのために、もっと上手に笑われたくて」
必死で、
言い訳みたいにしゃべった。
ユウヤはゆっくり近づいてきた。
「……そんなこと、せんでええやん」
ぽつりと、そう言った。
でも私は、
首を横に振った。
「せな、あかんねん」
「ナナは、そうしないと……」
「ここにいられへんから」
ユウヤはしばらく黙ってた。
何も言わなかった。
ただ、
床に落ちたリボンを拾い上げた。
そして、
小さな声で言った。
「……ナナ、見ててやるわ」
私は驚いた。
「え……?」
ユウヤは、
笑いもせず、
からかいもせず、
ただ、
静かに言った。
「ナナが、今やろうとしてた芸。
俺だけに、見せてみ?」
私は、
唇を噛んだ。
裸のまま、
身体中の恥ずかしさと情けなさと、
全部引きずったまま。
それでも、
差し出されたリボンを首に巻いて、
バルーンを手に持って、
深く、深く頭を下げた。
「今日も、ナナの芸を、よろしくお願いします♡」
誰に頼まれたわけでもない。
でも、私は、
笑われたくて、
見られたくて、
ここに立っていた。
0
あなたにおすすめの小説
あるフィギュアスケーターの性事情
蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。
しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。
何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。
この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。
そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。
この物語はフィクションです。
実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
屈辱と愛情
守 秀斗
恋愛
最近、夫の態度がおかしいと思っている妻の名和志穂。25才。仕事で疲れているのかとそっとしておいたのだが、一か月もベッドで抱いてくれない。思い切って、夫に聞いてみると意外な事を言われてしまうのだが……。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる