ナナはなぜ壊れたのか⑤——誰も知らない場所で、また堕ちていく

nana

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第130話「声だけの支配」

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ある夜、
私はベッドに寝転びながら、
スマホをいじっていた。

なんとなく、退屈だった。

普通にサークルも行って、
友達とも遊んで。

それなりに「普通」をやれているはずなのに、
どこか、
心の奥が満たされなかった。

(なんか……物足りへん)

スクロールしているうちに、
ふと、目に留まった。

匿名チャットサイト。

「趣味の合う人、気軽に通話しませんか?」

そんな書き込み。

(……ちょっとだけ)

好奇心だけだった。

軽い気持ちで、
チャットを送った。

返事はすぐに来た。

「よかったら、スカイプで話そう。」

知らない人。
顔も、年齢も、わからない。

でも、
それが──

怖いよりも、
どこか、
甘くゾクゾクした。



スカイプ通話がつながった。

「こんばんは。」

落ち着いた、
低い男の声だった。

姿は見えない。
画面はオフのまま。

ただ、
声だけが、耳に響いた。

(……知らん人の声)

(でも、なんか、……心地いい)

「ナナちゃん、何してたの?」

「……ベッドで、ゴロゴロしてた。」

ぽつりぽつりと話すうちに、
少しずつ緊張がほぐれた。

でも──

「今、何着てる?」

ふいに、
そんな言葉が落ちてきた。

(……え)

戸惑った。

でも、
なぜか、拒否する気持ちは起きなかった。

「……Tシャツと、ショートパンツ。」

小さく答えた。

「ふうん。想像しただけで、ドキドキするな。」

くすっと笑う声。

耳元に、直接吹きかけられたみたいに、
背筋がゾクッと震えた。

(やばい)

(なにこれ……)

でも、
怖くはなかった。

それどころか──

(……ナナ、また、疼いてる)

声だけの存在に、
命令される。

見えない相手に、
支配される。

それが、
たまらなく、
甘く感じた。

「ナナちゃん、今、……Tシャツ、めくってみて?」

優しい声で、
でも確かな命令で。

私は、
言われるままに、
Tシャツの裾を指でつまんだ。

震えながら、
めくり上げた。

「──えらいね。」

優しく、
褒めるような声。

(……見られてないのに)

(命令されるだけで、こんな……)

声だけの支配。

名前も、顔も知らない相手に。

ナナは、
じわじわと支配される快感に、
静かに堕ちていった。

──つづく。
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