ナナはなぜ壊れたのか④——晒されることに、私は生きた

nana

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第111話「また、晒される夜」

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数日後。
私は、また彼氏に誘われた。

「今度、みんなで飲み会やるから。ナナも来てや。」

軽いノリだった。
あのハロウィンの夜のことは、
まるでなかったかのように。

(……大丈夫やんな?)

(さすがに、もうあんなバニーとかは……)

そう自分に言い聞かせて、
私は、待ち合わせ場所へ向かった。

飲み会の店は、個室じゃなくて、大きなホールみたいな居酒屋だった。
ハロウィンの時と違って、普通の私服で来てる人ばかり。

(よかった……)

少しだけ、ホッとした。

でも。

彼氏が、
にやにやしながら手提げ袋を出してきたとき、
胸がギュッと縮んだ。

「ナナ、今日の衣装、これな。」

差し出されたのは──

メイド服。

しかも、
普通のメイド服じゃなかった。

超ミニ丈。
肩出し。
スカートはひらひらで、
しゃがんだら、全部見えそうなやつ。

(……えぐ……)

「なあ、着てや?」

彼氏が、
悪びれもせず笑った。

「絶対似合うって。ナナやからできるやつやん。」

「……」

逃げる空気じゃなかった。

周りの友達たちも、
「見たい見たい!」
「ナナ頼むわー!」
と盛り上がってる。

(またや……)

(また、あのときみたいに……)

胸がぎゅうっと締めつけられる。

でも、
その奥で、
じわじわと疼くものがあった。

(……見られたい)

(また、晒されたい)

(もっと、壊れたい──)

私は、
そっと頷いた。

トイレで着替えた。

肩を大きく出した、白と黒のミニスカメイド。
脚は丸出し。
胸元もひらひらと揺れて、
どこを見ても隠しきれない。

鏡に映る自分を見て、
顔が真っ赤になった。

でも──

──ゾクッ。

心の奥が、
甘く、痺れた。

(ナナ……終わってるな……)

(でも、それが、気持ちいい……)

私は、
震える手でスカートを整え、
飲み会のホールに戻った。

ガラガラ。

ドアを開けた瞬間、
歓声が上がった。

「うおおおおお!!!」

「やばいやばいやばい!!」

「天使すぎるやろ!!」

みんなの視線が、
一斉に私に突き刺さる。

スマホを向ける人。
爆笑する人。
真顔で見つめる人。

(また、や……)

(また、この感覚や……)

足がガクガク震えた。
手も、心臓も、全部が震えてた。

でも。

(──もっと、見て)

(もっと、もっと、私を壊して)

誰にも頼まれてないのに、
私は、自分から一歩、前に出た。

スカートの裾がふわりと揺れた。

膝までしかないメイド服。
無防備な肩。
剥き出しの脚。

みんなが、
笑いながら、
スマホを向けながら、
私を見てる。

その視線が、
怖くて、
恥ずかしくて、
気持ちよくて──

──たまらなかった。

私は、
笑われながら、
写真を撮られながら、
この夜、
また一段と深く、
堕ちていった。

──つづく。
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