“実況される身体”が、私の名前になった夜

nana

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【第9話】 『「もっと見て」と言えない私は、まだ商品でいたい』

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「見てほしいんじゃなくて、**“買われてる”感じが安心するだけ」──
そう口にした瞬間、自分で吐いた言葉に驚いた。

私は、“もっと見て”と言えない。
その代わりに、
「時間と欲望を使ってでも、私にアクセスしてくる人たち」が、
今日も“誰かの金と性欲”をもって画面を開く。

──私は、商品だった。
“見られること”を望むのではなく、
“見られて当然”の存在として、受け身のまま価値を保っていた。

彼が消えたあの夜から、私は少しずつ壊れはじめた。

配信時間は、どんどん長くなった。
コメント欄に褒め言葉がなくなると、無理やり角度を変えて煽った。
反応が薄いと、声のトーンを上げて演じた。
──それでも、満たされなかった。

どれだけ見られても、
どれだけ“いいね”がついても、
どこかで「また演技したね」と呟く声がないと、
私は、“自分をやってるだけの人”になっていく気がした。

《ナナ、最近ちょっとやりすぎじゃない?》
そんなコメントすら、今の私には快感だった。
「やりすぎてる」って言われることで、
“観察されてる感覚”を補っていた。

ああ、誰か気づいて。
「やりすぎてる私」じゃなく、
「やりすぎるしかなかった私」に気づいて。
──でも、それは客に言うセリフじゃない。

商品は、黙って陳列される。
並べられて、比較されて、
選ばれて、消費されて、飽きられて、
そのサイクルの中にいれば、“安心”は守られる。

「もっと見て」なんて、言ったら終わりだ。
それは、愛を欲しがる人間の言葉だ。

私は今日も、静かにカメラを立ち上げる。
何も期待しないフリをして。
誰かの指示に従うフリをして。
“誰かの欲望の中にいる私”に価値があるように装って。

本当はただ──
「ちゃんと壊れてるね」って、誰かに見届けてほしいだけなのに。

でも、それを言葉にする勇気なんて、
今の私にはまだ、残っていなかった。
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