“実況される身体”が、私の名前になった夜

nana

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【第22話】 『“自分で名乗った名前”が、はじめて私を守った夜』

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──「名前なんて、ただのラベルやろ」って、
昔の私は思ってた。

でも今の私は、
名前って、境界線やと思ってる。
他人の欲望と、自分の感情の間に引く、
細くて儚い、一線。

そしてその夜、私はその名前に、
自分の全てを預けることになった。

配信中、突然現れた新規アカウント。
どこか既視感のある文体で、こうコメントしてきた。

《ナナ、もう“そういうの”やめときなよ》
《素を出しても無駄。どうせまた脱ぐくせに》
《“見てほしい”とか、都合よすぎ》

──刺さった。
痛かった。

でも、もっと痛かったのは、
その言葉が、少しだけ当たっていたことだった。

「見てほしい」と言ったくせに、
本当は、また命令されたくてうずうずしてた。
自分で名乗る勇気を持ったくせに、
また誰かに“名前を呼ばれる”ことで満たされそうになってた。

“ナナ”がまた、“誰かのもの”になりかけていた。

コメント欄がざわつく中、
私はスマホ越しに、はっきりと言った。

「こんばんは。……ナナです。
たしかに、私のことを勝手に決められる筋合いは、ないよね。」

それは、誰かに言ったようで、
自分自身に向けた言葉でもあった。

“ナナ”という名前は、支配されるための呼び名じゃない。
今の私は、それを“自分で選んだ名前”として、
やっと取り戻したばかりだった。

だからこそ、
その名前に、逃げ込むわけにはいかなかった。

《ナナ、かっこよ》《言い返した…》《ちゃんと自分の名前になってる気がする》
《その“ナナ”、好きです》《守りたくなる》

その言葉に、少しだけ震えた。
演技でも、媚びでもない“ナナ”に、
こんな風に反応があるなんて思わなかったから。

私は、画面の中で静かに頭を下げた。

「ありがとうございます。
今日の私は、ちゃんと“ナナ”でいられた気がします。」

“ナナ”という名前が、
誰かに呼ばれて従うものじゃなく、
自分を守る盾になった夜。

私が私であるために、
ただ一つだけ、名乗り続けられる名前。
それが今、やっと誇れるものになりつつある。

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