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第三章 - 癒やせない傷
第24話
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ようやく出会えた神の姿に、ソレイユは思いのほか動揺していた。
突然だったというのはある。ここは何の変哲もない回廊で、立ち入り禁止区域からもそれなりに距離がある。こんなところで出会うなど、全く予想外だった。
しかしそれ以上に、アウレルの神々しい貫禄に圧倒されていた。
まるで空間のすべてを支配されたように、アウレルの放つ空気に飲み込まれている。その存在感の強さは、アウレルの背が高いことだけが原因ではないだろう。
(何かしなきゃ。これを逃したら二度と会えないかもしれない)
そう思うのに、ソレイユの足は縫い付けられたように動かなかった。
それでも何かしなければ。そう思い、ソレイユが無理やり声を絞り出そうとしたそのとき。
「いやあああぁぁぁああ!!!!」
頭が痛くなるような、甲高い絶叫が聞こえた。
同時に解放されたように、ソレイユは体が動くようになった。声の方を見ると、セレーナがアウレルを見て泣き叫んでいた。
付き人が慌ててセレーナに駆け寄る。セレーナは縋るように付き人に抱きついた。
「いやっ、こないで、来ないでぇぇ!!」
「大丈夫です、セレーナ様!近づいてきてはおりません!」
付き人が子供をあやすようにセレーナの背をさする。
セレーナの怯えようはどう見ても異常だ。大きなトラウマを抱えているとしか思えない。
ソレイユの感覚では、多くの男性に囲まれる方が余程恐ろしく感じる。しかし月光の間で見たセレーナは、恍惚とした表情を浮かべていた。セレーナが男性ではなく、アウレル個人を拒絶しているのは明らかだった。
対してアウレルは、全く興味がなさそうにセレーナを眺めている。壁の汚れでも見るような、感情のない瞳だった。
一体アウレルとセレーナの間に何があったのか。ソレイユは状況を飲み込めず、呆然とすることしかできなかった。
セレーナの付き人の女性はアウレルとソレイユを一瞥し、焦ったようにセレーナを抱え上げた。
「し、失礼いたします!」
そう言い切らないうちに、女性はソレイユたちに背を向けて走り出した。
セレーナの泣き声が完全に聞こえなくなったころ、アウレルは小さく溜め息をついた。
「あれに絡まれるとは。災難だったな、太陽の聖女。名はソレイユだったか?」
「あ、はい!こんにちは!」
ソレイユが慌てて姿勢を正すと、アウレルはからっとした笑みを浮かべた。
「かしこまる必要はない。楽にしろ」
命令形の口調とは裏腹に、その声音は非常に親しみやすい。最初に感じた威圧感もなく、セレーナを怯えさせるための演出だったのだろうかとソレイユは思った。
「えっと……。セレーナ様と、なにかあったの?」
ディールスのことも知りたいが、流石にセレーナを無視できず、ソレイユはアウレルに尋ねた。
アウレルはなんでもないことのように「ああ」と言った。
「大したことではない。あの女と関わって、何も起きない方が珍しいからな」
そう言ったアウレルの目は酷く呆れていて、先ほどセレーナにぶつかったときのソレイユのようだった。
皆どうやってセレーナと会話しているのだろうかと思っていたが、最高神が自分と同じ反応をしていることにソレイユは安心した。
「では、私はこれで失礼する」
アウレルはそう言うと、白い布を巻きつけたような服を翻した。
ソレイユははっとして、アウレルの方に首を向ける。
「待って!あなたに聞きたいことがあるの!!」
ソレイユがアウレルの背中に声を掛けるが、アウレルはずんずんと歩いていき、止まる気配がない。
「サターナ、追いかけよう!」
「はい」
(ここで見失うわけにはいかない……!)
ソレイユは勢いよく駆け出した。基本的に大聖堂内を走ってはいけないが、そんなことは気にしていられない。
呼び止められたら全力で逃げ切ろう。そして後で謝ろう。
人にぶつからないよう注意しながら、ソレイユは人生最高速度でアウレルを追いかけた。
突然だったというのはある。ここは何の変哲もない回廊で、立ち入り禁止区域からもそれなりに距離がある。こんなところで出会うなど、全く予想外だった。
しかしそれ以上に、アウレルの神々しい貫禄に圧倒されていた。
まるで空間のすべてを支配されたように、アウレルの放つ空気に飲み込まれている。その存在感の強さは、アウレルの背が高いことだけが原因ではないだろう。
(何かしなきゃ。これを逃したら二度と会えないかもしれない)
そう思うのに、ソレイユの足は縫い付けられたように動かなかった。
それでも何かしなければ。そう思い、ソレイユが無理やり声を絞り出そうとしたそのとき。
「いやあああぁぁぁああ!!!!」
頭が痛くなるような、甲高い絶叫が聞こえた。
同時に解放されたように、ソレイユは体が動くようになった。声の方を見ると、セレーナがアウレルを見て泣き叫んでいた。
付き人が慌ててセレーナに駆け寄る。セレーナは縋るように付き人に抱きついた。
「いやっ、こないで、来ないでぇぇ!!」
「大丈夫です、セレーナ様!近づいてきてはおりません!」
付き人が子供をあやすようにセレーナの背をさする。
セレーナの怯えようはどう見ても異常だ。大きなトラウマを抱えているとしか思えない。
ソレイユの感覚では、多くの男性に囲まれる方が余程恐ろしく感じる。しかし月光の間で見たセレーナは、恍惚とした表情を浮かべていた。セレーナが男性ではなく、アウレル個人を拒絶しているのは明らかだった。
対してアウレルは、全く興味がなさそうにセレーナを眺めている。壁の汚れでも見るような、感情のない瞳だった。
一体アウレルとセレーナの間に何があったのか。ソレイユは状況を飲み込めず、呆然とすることしかできなかった。
セレーナの付き人の女性はアウレルとソレイユを一瞥し、焦ったようにセレーナを抱え上げた。
「し、失礼いたします!」
そう言い切らないうちに、女性はソレイユたちに背を向けて走り出した。
セレーナの泣き声が完全に聞こえなくなったころ、アウレルは小さく溜め息をついた。
「あれに絡まれるとは。災難だったな、太陽の聖女。名はソレイユだったか?」
「あ、はい!こんにちは!」
ソレイユが慌てて姿勢を正すと、アウレルはからっとした笑みを浮かべた。
「かしこまる必要はない。楽にしろ」
命令形の口調とは裏腹に、その声音は非常に親しみやすい。最初に感じた威圧感もなく、セレーナを怯えさせるための演出だったのだろうかとソレイユは思った。
「えっと……。セレーナ様と、なにかあったの?」
ディールスのことも知りたいが、流石にセレーナを無視できず、ソレイユはアウレルに尋ねた。
アウレルはなんでもないことのように「ああ」と言った。
「大したことではない。あの女と関わって、何も起きない方が珍しいからな」
そう言ったアウレルの目は酷く呆れていて、先ほどセレーナにぶつかったときのソレイユのようだった。
皆どうやってセレーナと会話しているのだろうかと思っていたが、最高神が自分と同じ反応をしていることにソレイユは安心した。
「では、私はこれで失礼する」
アウレルはそう言うと、白い布を巻きつけたような服を翻した。
ソレイユははっとして、アウレルの方に首を向ける。
「待って!あなたに聞きたいことがあるの!!」
ソレイユがアウレルの背中に声を掛けるが、アウレルはずんずんと歩いていき、止まる気配がない。
「サターナ、追いかけよう!」
「はい」
(ここで見失うわけにはいかない……!)
ソレイユは勢いよく駆け出した。基本的に大聖堂内を走ってはいけないが、そんなことは気にしていられない。
呼び止められたら全力で逃げ切ろう。そして後で謝ろう。
人にぶつからないよう注意しながら、ソレイユは人生最高速度でアウレルを追いかけた。
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