モンスターだってBLしたいんです

風巻ユウ

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あいつとBLしたい編

49.同人誌即売会終了のお知らせ

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 結局、泣きやめなくて、ぐすんぐすんしながらメトジェの腕の中で寝ました。
 木のくせによく寝る聖樹ですね。自分で自分に呆れます。

 あと、ちょっと泣きすぎじゃないかなあ。
 イベントに来てから毎日泣いているよ。毎日なにかしらの事件が起こるし。某探偵コ〇ンくん並に事件に遭遇しております。

 そんなことを思いながらも、起床。寝起きの頭はおかしなことを考えるものなのです。
 ボーとしながらも今日はもう帰る日だと気づきます。
 そう、我らの祭典は終わったのだ。

 同人誌即売会、終了のお知らせです。

 同人誌を手に入れるのが命題だったこの物語も、これにて閉幕。
 長らくのご愛顧を賜りまして誠に有難う御座いました。
 ということもなく、私の物語はまだもうちょっと続くのです。

 メトジェどこだろう?
 ベッドから抜けて彼を探す。昨夜は抱き締めて寝てくれたはず。ずっと傍にいたはず。
 辺りを見渡すけれど、いない。

 朝日が燦々と差し込む中、サイドボードに見つけたドールを胸に抱えて、立ち尽くす。
 なんせ私、裸なので。ええ、なぜか素っ裸。脱がせたのは性王あんにゃろに違いないのです。

 服も探します。ありません。ドール一体では股間しか隠せません。葉っぱ一枚あればいい人たちだけが仲間です。そんなん嫌だ。

 きょろきょろしてたら扉がコンコン叩かれた。誰ぞ?

「美樹ー起きてる?」

 パフちゃんだ。私、いそいそとドアを開ける。

「わお。美樹ったら裸族」
「服がなくて」
「はい、これ。着てね。あの子のおさがりよ」

 なんとまた聖王の身衣を授かったよ。

「いいの? 前のやつ……なんだかんだで汚しちゃって……」

 服を汚した理由が大っぴらに言えない。恥ずかしい理由だからね。
 だけどパフちゃんはニヨリと笑ってのたまいなさった。

「着衣プレイはいいわよねえ」

 バレておるわ。

「若いんだからいいのよう」

 って、おばちゃん口調で言うけど、中身、前世から数えても婆ちゃんでした彼女も。
 私、小っ恥ずかしい思いしながら服を着る。メトジェのおさがりは、相変わらず高級生地で複雑な模様の刺繍が入っていて着心地抜群です。

「背中向けて。ここの編み込みね、一人じゃできないから着る時は手伝ってもらいなさいね」

 背中に何重も紐が通っているらしく、後ろ手にしても届かない部分に結び目があるようだ。
 一人じゃ着れない服って……さすが聖王様の身衣だぜ。
 他にも横のスリットや袖、なんと靴までも編み込みブーツだった。これだけ編み込まれていると、もう脱ぐこともしたくないんですけども。

「そこは男に脱がせてもらうのよ」

 常識よとばかりにパフちゃんに微笑まれた。地母神の笑み!
 パフちゃん、君はどこまで大らかで人物ができているのか……と、普通の人は思うかもしれない。だが私は知っている。彼女の場合、ただのBL妄想である。

「編み込みを解く度に隙間から差し込まれる手……素肌を撫でられてビクつくからだ……俺の好きにしていいんだったな……そう囁く彼の吐息は甘くて…………」

 朝から妄想お疲れ様です。私も人のこと言えないけど、パフちゃんの妄想は前世から私の妄想を超越しているので、尊敬しか感じません。
 今世でも身近にいてくれてありがとうね。

「パフちゃん、メトジェ知らない?」
「ああ、そうそう、伝言よ。『マクスミリアーンはこれから一ヶ月ほど政務に拘束します聖樹は好きに生きろ』ってエトラ宰相から」
「マジすか」
「マジよ」

 メトジェ一ヶ月軟禁生活か~私、その間は薄い本を読みまくるわ。
 今回のイベントの戦利品、大量にあるから読むの楽しみ。グッズにボイスドラマもあるよ。
 おもしろそうな魔道具も買ってみたんだけど、魔道具って聖王の息がかかっているはずだよね。こうやってイベントで販売されているものってモグリなんじゃないかなあ。その辺をヴィルクローレに聞いてみたい。と、これからしたいことを頭で算段していたら、パフちゃんが朝食をくれた。

「一緒に食べましょう」

 ナッツのサラダおいしいなあ。ポリポリ。

「ところで美樹」
「なぁに?」

 もぐもぐ。

「妊娠した?」
「ぶっふぉーーーーーうううううううう」

 突然、なに言い出すんだよパフちゃん。食べてたヒマワリの種っぽいやつ吹き飛ばしちゃったじゃん。

「いやあね。冗談よ」
「冗談に聞こえなかったパフちゃん……ぶっちゃけ、孫の顔見たいとか言い出すんでしょう」
「あら、わかるぅ?」

 ニヨニヨ言わないどくれ。そういえば前世でも新婚の頃に同じようなこと言われたような……。
『美樹の子なら絶対に可愛いから。早く女の子を産んでちょうだい』
 というようなことを予言されたのを思い出した。

「パフちゃん」
「なあに? このサラダのドレッシング美味しいわよね」
「そうですね。じゃなくてですね、前世で、私が女の子を産むと予言したじゃないですか」
「……あら、そういえばそんなこと、あったわね」
「今回のも予言じみて聞こえましたので」
「じゃあ、当たりかもね。嬉しいわ。絶対に可愛がるから、男の子、産んでね」

 ああああああああクリーンヒットな予感……!
 性別を予言された……! もうだめだ……!

 しばらく引き籠ろう。そうしよう。
 幸い、薄い本は大量にあるし。私の養分であるBLに事欠かない。

 *

 帰りもまた、あの魔法陣で帰還。
 入り口だったダンジョンに戻り、またダンジョン探索してから聖王都へと戻った。

 聖王都へ戻る道すがら、ペニョの背中に腐女子ナカーマたちと乗った。
 ペニョはここ数日でまた成長していて、もう立派な一人前の怪鳥に見える。

「ギビチィッッ」
 ────ママぁ おっぷぁいくれー!

 休憩ごとに樹液をねだってきますが、図体はでかいのです。

「あの、聖樹さま……言いにくいのですが、ペニョちゃんの成長速度が異常に早いのって、その樹液の所為なんじゃ……?」

 マリエ、それは私も思っていたことです。
 私の樹液ってば、セッの時の潤滑液にできたり、怪鳥を育てたり、霊験あらたか過ぎですよね。

「あげるのやめた方がいいですか?」

 これ以上、大きくなっても、お得なことがあるとは思えない。強いて言うなら、大人数が背中に乗れるから移動に便利だね。

 ────いやだー! まだまだおっぷぁいうまうましたい! マリエ、余計な事ママに吹き込むんじゃねえ! お仕置きされたいのかぁん?!

「ひいっ」

 んあれ? ペニョったら、なんだかとっても粗暴な言葉遣いでマリエを脅しませんでした?

「マリエ、なんかおかしくないですか?」
「ひえぇ、別に何もおかしくなんかないです」
「マリエ、なんか怯えてませんか?」
「おひぇぇ、そんなことないです。私ペニョちゃんとアレコレなんてしてないです」

 アレコレしちゃったようですね。一体、どうやって……?

 ────くそう、マリエめえ。後でお仕置きしてやるぅ!

「やああぁぁ」

 マリエ逃げた。怪鳥は「ギビィ! ギビチィィ!」って騒いでいる。
 うーん。うちのドラ息子が申し訳御座いません。マリエにはアフターケアしてあげないとなあ。
 そういえばマリエに転生者かどうか聞きたかったのでした。でも昨日はそれどころじゃくて、お話できませんでしたね。そして今も……マリエしばらくこっち寄ってこないと思います。なんてこった。

「ペニョ、いいですかよくお聞き」
 ────なんだよママ、改まって
「やっぱり言葉遣いはそっちが地なんですね。ちょっと粗暴な感じ。もう猫被らなくていいですから、マリエのこときちんとしなさいね」
 ────ぶぅ。わかったよママ

 本当に分かっているのでしょうかねえ。
 ちょっと微妙な心境になりながらも、聖王都へと帰りついたのでした。

「聖樹様、おかえりだ」
「テンチョ、たでーま」

 矛盾食堂の扉を開けば、すかさずテンチョの挨拶の声が響いて嬉しい。

「聖樹様、楽しんできたようだね」

 優しい笑顔の陽生さんが、かけつけ一杯のジュースをくれる。わーい。ごくごく。あ、これバナナジュースみたいな味がする。
 新作だって。新入荷の果物を絞って果汁100%の。うふ~ん、フレッシュぅ。

 陽生さんが店員復帰しているので私の分霊体はもう働いていませんが、テンチョは毎日必ず一杯のジュースを私にくれる。
「お供え物だ」とか言って。崇め奉られている気がする。
 え、聖樹神殿へ入信届け出したの? じゃあテンチョったらマジで私の信者だ。

 そんな訳で今日もお供え物をすするのだ。じゅごー。
 聖王都へ戻ってきてから連日で矛盾食堂に通っています。
 基本は聖樹本体で薄い本を読んでムフフですけど、矛盾食堂のご飯が恋しくなったらここに来ます。

「あ、聖樹さま。これから私たち旅に出るからさ。挨拶したかったんだ。ここで会えて良かったよ」

 バルボラが声をかけてくれました。私は丁度、食堂の入口扉を潜ったところで、バルボラたち腐女子ナカーマは食事を摂って今から出かけるところだったみたいです。

「冒険ですか? なんのクエストです?」
「護衛だよ。孤立した村まで荷物を届ける商人の護衛」とバルボラ。
「私たちがイベント行ってる間にさ、大きな地震があったんだって。それで土砂崩れが起きて山間の村までの道が閉ざされちゃったんだ」

 デニサの言葉に私、ハッとする。

「村までは迂回すれば入る道があるけどぉ、そっちの道はモンスターが出るらしくて護衛が必要になったそうよぅ」

 ヤルシュカの説明で得心しました。
 モンスターから商人を守るクエストが発生したわけですが、これ、私のせいだ。
 イベ中の地震ってやつ、完っ璧に私の暴走じゃないですか。それで迷惑を被っている人たちがいるということだ。
 やっちまったごめんなさい……!

 責任持って私もそのクエストに参加します。
 そう言えば、イベント終わったら稼いで義援金をとか考えていたのでした。
 今こそ支援の時! と、立ち上がったわけですが、護衛クエした後にも、でるわでるわ、私が暴走したことで各地に被害があった事実。
 そのせいで被った損害がね……。本当にすまねえ。
 聖王政府も災害手当に事業手当も出して、ライフラインの復旧を急いでいるみたいですが、末端の村々まではなかなか手が届かない様子。
 私は復興現場へ行って瓦礫運びや荷運びなど、クエストにないものも進んでお手伝いしました。

 自分の尻は自分で拭くのです!

 幸い、死者の報告はなかったけれど、傷を負った人は多数。家屋が傷んで危ないので避難所生活という人も見かけ、大いに反省。
 クエストで得たお金はもちろん義援金に。特に親が怪我して働けなくなってしまった子供たちへ優先的に送りたくて、聖母神殿を訪れました。

 聖母神殿には元より孤児施設があって、親のいない子供の面倒を看ているそうです。
 孤児施設併設の神殿は多いらしく、聖樹神殿も小規模ながら親のいない子たちをお世話しているという。
 知らなかった。御神木なのに知らなかったよ。私はなんという、のほほんした木なのか……!

 この機会に一番活動していらっしゃる聖母神殿を見学させてもらおうそうしよう。

「たのもー! 聖樹ですよ!」

 勢い込んで入ったらば、

「まあまあ、遠路はるばるようこそいらっしゃいナ♡ 聖樹たん可愛いわ♡ おばさんのお膝においでおいで♡」

 聖母様にとっても可愛がられました。
 聖母様の愛が溢れて語尾にハート文字が見えるぜええ。
 て、幻覚じゃない? マジでハート付いてるの? ハート付けるのはハート喘ぎの時だけじゃないの?
 こういう場合もあるのですね。様々な表現方法に、おつ!

 私、多少細身ですが15-6歳に見合う体格なのですけども、聖母ミッダカリヤ様は大変ふくよかな御方でして、軽々と私の体を持ち上げ「おひえええ」ふわっと柔らかいお膝に乗せてくださいました。

 あったけえ……癒されるぅ…………。
 癒し手である聖樹を癒すとは、さすが初代聖王ムトジャイルの母上です。

「んまあ♡ うちの子のこと好きなのね愛してくれてたのね♡ んまあまあまあ♡」

 愛が凶器ってこういう場合に使うのでしょうか。失恋した相手のおかんから語られる恋の思ひ出ぽろぽろ……。
 心を無にして聞き流します。
 どうして私の初恋がモロバレなのかというと、聖母パワーで私の履歴を覗き視たとかスゲエこと言っておりました。
 頭の上、空中に履歴書が出るの? ステータスオープンみたいに?
 パフちゃんといい、私が好きになる人の母は、他人のプライバシーを直に視れる人ばかりですね。

 心を無に……
「ムトジャイルなら今遊びに来てるわよ♡ 呼んだげる♡」
 ……できなかった。

 この後に会ったムトジャイルが千年ぶり過ぎて眩しかった。キラキラでした。王子様かよ。いえ、初代聖王でしたね……。なんにせよ尊い。私の初恋は永遠に輝いていた。私の心の中に。

 というわけで、なんだか浮気した気分にもなったので、聖母神殿を早々にお暇しました。寄付金だけ置いて。

「今の聖王と仲良くね」

 ムトジャイルの声が哀愁の背中に響くぜ。振り返らずに、去りました。
 聖母神殿エモい。もう来ない。くすん。
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