恋する獣たちのメルクマール

風巻ユウ

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番外

ノエリオ・ピノが初めて来た日。

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本編を書く前に、一番最初に書いたお試しSSです。
ピノかわいい(*´ᴗ`*)

。゚.o。*:.●。.:*。゚.o。*:.●。.:*。゚.o。*:.●





星が夜空にいっぱいの日、『苔庭のイタチ亭』にきたんだぞ。
店主のテオじーは、うちのじー様の知りあいってゆってた。
じー様いなくなったから、俺はここにきた。

「この小さい白兎はノエリオ・ピノ君。私の知り合いの息子さんです。皆さん、今夜からこの子を宜しくお願いしますね」

って、テオじーが俺のこと紹介してくれた。
でも待って。俺、小さくないんだぞ。これでも身長170あるんだぞ。
垂れてる兎耳20センチいれてだけどな!

「ちっせー」と、店員のスカイ・オリーヴってやつがいう。

俺ぷんぷんした。

「お前、それ煙草だろ。可愛い顔して煙草吸っちゃいけないんだぞ」

俺の住んでた地域だと、未成年の喫煙は禁止だ。
見たところ、このスカイってやつは黒猫耳ついてるから俺とは違う地域出身だろうけど未成年っぽい。
大きな猫目に小さな顔。金髪は柔らかそうで首が細い。身長は俺よりあるみたい。悔しいことに視線をやや上にあげなければいけない身長差。けど、けど、こいつ絶対に未成年だ!

俺20歳で成人してるから、兄貴風吹かせて注意した。
そしたらスカイのやつ、煙草の煙吐き出して俺の顔、真正面からかけてきたんだ。

「ぷあっ?! けむりっ、くさーっ」
「黙れチビ。俺の事、可愛いとか言ったら嬲るから」
「なぶる?! 理不尽!? ごほごほっ」

俺、こんな暴挙受けたの初めて。煙に咳き込みながら涙目だ。
煙で前見えなくてふらふら。机の角に足の小指ぶつけた。痛いいいい
垂れてる兎耳が、より一層に垂れてきた。垂れ耳、ぎゅっと掴んで背中丸める。
うええん第一夜目にして俺めげそう。

そんな俺の背中に、温かい手が触れた。

「よしよし、痛かったね。でも、そんな格好してると可愛いお尻が狙われちゃうよ。もっとも俺は前の小ぶりそうなゾウさんにしか興味ないけど」

「ゾウさん?」

見上げたら美しい顔した兎耳お兄さん。俺と違って兎耳垂れてない。
もう一人の店員ウィル・アシュレイだ。顔だけじゃなくて体つきもシュッとしててキレイ。そして高身長。
う、羨ましくなんかないんだからなっ。

「どこがゾウさん?」

と聞き返したら、ウィルは両手で顔を隠した。
「ふふふ面白い」って声聞こえるから、どうやら笑っているらしい。
な、なにがツボったの?

更に「今夜 から、よろしくねえ」と、笑い終わった顔を出して────無表情に言う。
なんで今夜を強調したんだ??
笑い顔隠すのも、なんでだ??

個性的な仕事仲間に囲まれて、俺も半笑いで「よろしくだぞ」と返した。

「はいはい。御覧の通り、ノエリオ君はとっても純粋で素直で愛すべきドジっ子です。ビッチとアブノーマルは通じませんので御注意下さい」

店長テオじーが、なぜかパチパチ手を叩いて俺のこと褒めてくれてる。
学校では愚鈍とか頭弱いとか言われてたから、褒めてもらえるの嬉しいぞ。えへへ。

褒めてくれるだけじゃない。テオじー優しい。俺がひとりぼっちになって心細い時に助けてくれた。
最初会った時、どんな種族なのか分からなかった。お耳、丸まるしてて見たことないものだったから。
イタチっていうんだって。「凶暴な肉食獣ですよ」って言われた時もよくわかんなかった。
テオじー、目が細いからさ。瞳から感情が見えないんだ。

それでもテオじーしか目の前にいなくて、じー様はもう帰ってこないって言われたから…。
迷わずテオじーの手を取ったのは間違いじゃなかった。

「じー様帰ってこないなら、イタチがじー様になるんだぞ」
「イタチは本名じゃないですよ。テオとお呼び下さい」
「テオ? テオじーか」
「まだ爺って年齢じゃないです。が…まあ、いいですよ。その辺は追々調教…いえ、教育してあげますからね」

愉快そうに口元を歪めたテオじーに、ちょっとだけさぶいぼ立ったの、勘弁な。



呼び方と言えば、出会いこそあれだったけど仲良くなったスカイ・オリーヴだけが「ピノ」って呼んでくるようになったんだぞ。他の皆はノエリオ呼びだから、ピノって呼ばれるの珍しい。ピノは別に苗字じゃなくて、じー様がつけてくれた名前だから、じー様に呼んでもらってるようで嬉しいんだ。

そんでな。スカイにピノって呼ばれると、特に嬉しい。特別な呼び方な気がする。

「なあなあ、俺さ、ピノって呼ばれるの嬉しいんだぞ。特別な気がして~ムズムズする」

ある日、思ったことそのまま、スカイに言ったんだ。
そしたらスカイのやつ、煙草を口から離して…あ、また煙吐かれる?と思ったから咄嗟に後ろに下がる。けど、柱に後頭部ぶつけた。

「いたたた…」
「突然なに。なに愛すべきドジっ子発動してんの」

まるで見下げるように言われたから、俺は涙目になった。

「なに?また泣くの? 泣けば通るとこじゃないよここは」
「泣いてないぞ。ちょっと涙目になっただけで、いちいち言うことないじゃないかあ」
「てめーが変なこと言うからだ。頭弱いくせに」
「むうぅ。変じゃないぞ。本当のことなのにい」

そこまで言い返してたら、急にスカイが席を立った。
兎耳引っ張られる。

「やあ…っ、痛い」
「痛いのがいいんだろ。ドM兎」

スカイの【嬲る】が発動。
俺、【うるうるおめめ】で対抗。

「捕食されたくなきゃ俺に近づくな」
「ひゃんっ!」

最後に両耳とも引っ張られて放されたけど、お耳じんじんする。
ここは繊細な器官だから乱暴にされると俺…俺…変な気分になるからやめてほしいのに。

「ああ…俺も耳引っ張られてペロペロされて舌入れられて嬲られたい…」

と、綺麗なビッチお兄さんウィルが無表情でのたまう声が聞こえたけど、気のせいかなあ。

やっぱお耳、引っ張られ過ぎてやられちゃったみたい。
テオじーに、そのことお話ししたら、「ほうほう。萌え豆の赤飯を炊く準備をしなくてはいけませんね」と言われた。お豆好き。赤飯ってなんだろう?

「それとも、初めての前に私が手ほどきしましょうかねえ」

そんな声をテオじーが発していた時、俺おトイレ行こうとしてたから、みごとに聞き逃したんだぞ。

「ここのやつらって、ほんと変わってるよな。おもしろおかしいんだぞ」

ふわもこ兎面付スリッパ履いて、ズボンをパンツごと下げた俺は、呟きながらもここの暮らしに満足してることを自覚して、笑えた。
初めてここへ来た夜は、寂しくて寝れなかったというのに…。

スカイには後で謝ろう。


(おわり)


助長:後でスカイの部屋へ謝りに行ったら捕食された件。続きません。
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