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17話 ぴよちゃんは、ちょっとすごい小鳥だったらしい
17話 ぴよちゃんは、ちょっとすごい小鳥だったらしい
ミーちゃんが本気で怒った日から、リリアーナは少しだけ気をつけるようになった。
花を見る時は、足元もちゃんと見る。 石垣の近くでは止まる。 前へ出すぎない。
それでも、きれいなものを見つけるとつい近づいてしまいそうになるのは、なかなか変わらなかったけれど。
「おじょうさま、今日はちゃんと足元をご覧になっておりますね」
乳母にそう言われて、リリアーナはちょっとだけ得意になる。
「うん。ミーちゃんに、おこられたから」
窓辺で毛づくろいしていたミーちゃんは、その言葉を聞いても知らん顔だった。 でも、耳だけはぴくりと動いた。
ワンちゃんは床に伏せたまま、いかにも当然だという顔をしている。 ぴよちゃんだけが頭の上でぴよぴよと鳴いていた。
その日のお昼前、離宮にまた来客があった。
神殿の人だ。 前に来た二人とは少し違う。今度は、年のいった高位神官らしい人と、その付き添いが数人。服も前より立派で、胸元の銀の飾りも細かい。
リリアーナは応接間へ通されながら、少し不思議だった。
「また、しんでんのひと」
ルークが隣でうなずく。
「ええ。今回は、かなり上の方のようです」
「ぴよちゃんたち、またみにきたの?」
「……たぶん、そうです」
その言い方が少し変だった。 見る、というより、確かめる、に近いのかもしれない。 でもリリアーナには、その違いはよく分からない。
応接間に入ると、高位神官はすでに立ち上がって待っていた。 白い髪に、深い皺。けれど背筋はぴんと伸びていて、目だけは若い人よりずっと鋭い。
その人はまずリリアーナを見た。 それから次の瞬間、頭の上を見た。
ぴよちゃんだ。
高位神官の目が、はっきり見開かれる。
そして、そのまま膝を折った。
「……え?」
リリアーナは目をぱちぱちさせた。
付き添いの神官たちも、一瞬遅れて同じように膝をつく。 部屋の空気が一気に張りつめた。
「どうしたの?」
思わず聞くと、高位神官は頭を下げたまま答えた。
「お許しください。まさか本当に、御前にお目にかかれるとは思っておりませんでした」
御前、というのが誰のことなのか、一瞬分からなかった。 でも、その場にいるすごそうな存在といえば――
リリアーナは頭の上を見上げようとして、もちろん見えないので首をかしげた。
「ぴよちゃん?」
「ぴよ」
いつも通りの返事だった。
でも、そのひと声だけで、高位神官の肩がわずかに震えた。
リリアーナには、その反応の方がびっくりだった。
「ぴよちゃん、そんなにすごいの?」
高位神官はようやく顔を上げる。 その目は、感動しているようにも、信じられないようにも見えた。
「はい。神話の時代より伝わる、神鳥の系譜。その御姿を、ただ一羽だけでもこの目にできることは奇跡です」
難しい言葉がたくさんあった。 でも、なんとなく分かった。
ぴよちゃんは、やっぱりちょっとすごい小鳥なのだ。
「ちょっとじゃないのかもしれませんが」 と、ルークが小さく付け足す。
リリアーナはそちらを見て、また頭の上を意識する。
「ぴよちゃん、えらかったのね」
「ぴよ」
今度の鳴き方は、明らかに少し得意そうだった。
高位神官は、その様子を見てまた息を呑んだ。 たぶん神官たちからすると、とんでもないことが起きているのだろう。 神話に出てくるような存在が、幼い令嬢に“ぴよちゃん”と呼ばれて、しかもそれに普通に返事をしているのだから。
でも、リリアーナにはやっぱりぴよちゃんだった。
その時、高位神官が慎重に言う。
「失礼ながら……その御方は、常にお嬢様の頭上に?」
「うん。ここ、すきなの」
「巣にしておられるのですな……」
「す?」
また難しい言葉が出た。
リリアーナが首をかしげると、ルークが少しだけ目を伏せた。笑いをこらえているのかもしれない。
高位神官は真面目な顔のままうなずく。
「鳥にとって、巣は特別な場所です。帰る場所、守る場所、落ち着く場所。そこに選ばれるというのは、何より重いことです」
リリアーナはしばらく黙っていた。
それから、そっと頭を押さえる。
「ぴよちゃん、ここ、おうちだとおもってたの?」
「ぴよ」
即答だった。
その返事に、付き添いの神官たちはまたざわめいた。 でもリリアーナには、そちらの方がどうでもよかった。
ぴよちゃんにとって、自分の頭の上はおうち。 そう思うと、なんだか急にぴよちゃんがもっと可愛く思えてくる。
「じゃあ、ちゃんとしないと」
「ちゃんと、ですか?」
高位神官が問い返す。
「ぴよちゃんのおうちなら、きれいにしないと」
ルークがとうとう少し顔を背けた。 乳母は口元を押さえている。
でもリリアーナは大真面目だ。
「ぴよちゃん、わたしのあたま、きたなくない?」
「ぴよぴよ」
少し忙しい鳴き方だった。
たぶん大丈夫、なのだろう。 少なくともリリアーナはそう受け取った。
「よかった」
そのやり取りを見て、高位神官は深く息を吐いた。 呆れているのではない。 たぶん、圧倒されているのだ。
やがて神官は、ぴよちゃんからようやく視線を外し、ミーちゃんとワンちゃんにも目を向けた。 けれど、やはり最も強く反応するのはぴよちゃんに対してだった。
それを見て、リリアーナは少し不思議に思う。
「ぴよちゃんが、いちばんすごいの?」
高位神官は慎重に答える。
「どなたも比べられるような御存在ではありません。ただ……神鳥は古くより神託と空の兆しを司るとされ、神殿にとって特に意味の深い御方なのです」
神託。 兆し。 また難しい言葉だ。
でも、たぶん神殿の人たちにとって、ぴよちゃんは特別なのだろう。
リリアーナは少し考えてから言った。
「でも、ぴよちゃん、ふつうにぴよぴよしてるよ?」
「……はい」
高位神官の返事は、妙に弱かった。
ルークがそこで助け舟を出すように言う。
「お嬢様にとっては、そうなのでしょう」
その言い方がやさしかったので、リリアーナは少し安心する。
「うん。だって、ぴよちゃんだもの」
そう言うと、ぴよちゃんは満足そうに小さく鳴いた。
高位神官はその姿をじっと見つめ、それから本当に慎重な声で言った。
「お嬢様。もし差し支えなければ、その御方がいつごろから、お傍におられるのか教えていただけますか」
「おにわでひろったの」
「……拾われた」
「うん。ひとりぼっちみたいだったから」
その答えに、神官たちはまた微妙な顔になる。 でもリリアーナは気にしない。
本当にそうだったのだ。 小さくて、あったかくて、ひとりぼっちみたいだった。 だから拾った。 それだけだ。
「それから、ずっとここなの」
そう言って、また頭をそっと押さえる。
高位神官はしばらく黙っていたが、やがて目を伏せて小さく言った。
「なるほど……選ばれたのではなく、拾われたのですな」
その言い方は、少しおかしかった。 でもリリアーナには意味が分からない。
「ひろうの、だめだった?」
「いいえ。むしろ……その逆でございます」
そこまで言ってから、高位神官は姿勢を正した。
「神殿としては、お嬢様と御三方に対して、最大限の敬意を払うべきと判断いたします。特に、神鳥様の御座所については、無礼のないよう厳重に伝えます」
「ござしょ?」
また難しい。
ルークが静かに補う。
「ぴよちゃんの居場所、という意味です」
「あ、あたまのうえ?」
「ええ」
リリアーナはまた頭を押さえた。
「そんなにたいせつなの?」
「はい」 と、高位神官がきっぱり答えた。
「とても」
その答えがあまりに真剣だったので、リリアーナは少しだけどきどきした。
ぴよちゃんは、ちょっとすごい小鳥だと思っていた。 でも、どうやら“ちょっと”では済まないらしい。
それでも、やっぱりぴよちゃんはぴよちゃんだ。
頭の上で鳴いて、機嫌がいいときはちょっと偉そうで、たまに定位置争いをして、でも基本的にはずっと一緒にいる。
それ以上でも、それ以下でもない。
「ぴよちゃん」
「ぴよ」
「これからも、そこなの?」
「ぴよ」
また即答だった。
リリアーナはくすっと笑う。
「そっか」
高位神官たちは、その短いやり取りひとつひとつに緊張しているみたいだった。でもリリアーナはもう気にしなかった。
ぴよちゃんが頭の上にいる。 それが大事。 それだけでよかった。
やがて神官たちが帰るころには、離宮の中でひとつだけ新しい決まりのようなものができていた。
誰も、リリアーナの頭の上を軽く扱わないこと。
使用人たちは、前よりもっと慎重になり、乳母でさえ髪を整える時は少しだけ手つきが丁寧になった。
その変化を見ながら、リリアーナは不思議そうに首をかしげる。
でも、ぴよちゃんは気にしていない。 いつも通り、頭の上で丸くなっている。
「ぴよちゃん、やっぱり、ちょっとじゃなくて、かなりすごかったのね」
「ぴよ」
今度は、どう聞いても満足そうな鳴き方だった。
ミーちゃんが本気で怒った日から、リリアーナは少しだけ気をつけるようになった。
花を見る時は、足元もちゃんと見る。 石垣の近くでは止まる。 前へ出すぎない。
それでも、きれいなものを見つけるとつい近づいてしまいそうになるのは、なかなか変わらなかったけれど。
「おじょうさま、今日はちゃんと足元をご覧になっておりますね」
乳母にそう言われて、リリアーナはちょっとだけ得意になる。
「うん。ミーちゃんに、おこられたから」
窓辺で毛づくろいしていたミーちゃんは、その言葉を聞いても知らん顔だった。 でも、耳だけはぴくりと動いた。
ワンちゃんは床に伏せたまま、いかにも当然だという顔をしている。 ぴよちゃんだけが頭の上でぴよぴよと鳴いていた。
その日のお昼前、離宮にまた来客があった。
神殿の人だ。 前に来た二人とは少し違う。今度は、年のいった高位神官らしい人と、その付き添いが数人。服も前より立派で、胸元の銀の飾りも細かい。
リリアーナは応接間へ通されながら、少し不思議だった。
「また、しんでんのひと」
ルークが隣でうなずく。
「ええ。今回は、かなり上の方のようです」
「ぴよちゃんたち、またみにきたの?」
「……たぶん、そうです」
その言い方が少し変だった。 見る、というより、確かめる、に近いのかもしれない。 でもリリアーナには、その違いはよく分からない。
応接間に入ると、高位神官はすでに立ち上がって待っていた。 白い髪に、深い皺。けれど背筋はぴんと伸びていて、目だけは若い人よりずっと鋭い。
その人はまずリリアーナを見た。 それから次の瞬間、頭の上を見た。
ぴよちゃんだ。
高位神官の目が、はっきり見開かれる。
そして、そのまま膝を折った。
「……え?」
リリアーナは目をぱちぱちさせた。
付き添いの神官たちも、一瞬遅れて同じように膝をつく。 部屋の空気が一気に張りつめた。
「どうしたの?」
思わず聞くと、高位神官は頭を下げたまま答えた。
「お許しください。まさか本当に、御前にお目にかかれるとは思っておりませんでした」
御前、というのが誰のことなのか、一瞬分からなかった。 でも、その場にいるすごそうな存在といえば――
リリアーナは頭の上を見上げようとして、もちろん見えないので首をかしげた。
「ぴよちゃん?」
「ぴよ」
いつも通りの返事だった。
でも、そのひと声だけで、高位神官の肩がわずかに震えた。
リリアーナには、その反応の方がびっくりだった。
「ぴよちゃん、そんなにすごいの?」
高位神官はようやく顔を上げる。 その目は、感動しているようにも、信じられないようにも見えた。
「はい。神話の時代より伝わる、神鳥の系譜。その御姿を、ただ一羽だけでもこの目にできることは奇跡です」
難しい言葉がたくさんあった。 でも、なんとなく分かった。
ぴよちゃんは、やっぱりちょっとすごい小鳥なのだ。
「ちょっとじゃないのかもしれませんが」 と、ルークが小さく付け足す。
リリアーナはそちらを見て、また頭の上を意識する。
「ぴよちゃん、えらかったのね」
「ぴよ」
今度の鳴き方は、明らかに少し得意そうだった。
高位神官は、その様子を見てまた息を呑んだ。 たぶん神官たちからすると、とんでもないことが起きているのだろう。 神話に出てくるような存在が、幼い令嬢に“ぴよちゃん”と呼ばれて、しかもそれに普通に返事をしているのだから。
でも、リリアーナにはやっぱりぴよちゃんだった。
その時、高位神官が慎重に言う。
「失礼ながら……その御方は、常にお嬢様の頭上に?」
「うん。ここ、すきなの」
「巣にしておられるのですな……」
「す?」
また難しい言葉が出た。
リリアーナが首をかしげると、ルークが少しだけ目を伏せた。笑いをこらえているのかもしれない。
高位神官は真面目な顔のままうなずく。
「鳥にとって、巣は特別な場所です。帰る場所、守る場所、落ち着く場所。そこに選ばれるというのは、何より重いことです」
リリアーナはしばらく黙っていた。
それから、そっと頭を押さえる。
「ぴよちゃん、ここ、おうちだとおもってたの?」
「ぴよ」
即答だった。
その返事に、付き添いの神官たちはまたざわめいた。 でもリリアーナには、そちらの方がどうでもよかった。
ぴよちゃんにとって、自分の頭の上はおうち。 そう思うと、なんだか急にぴよちゃんがもっと可愛く思えてくる。
「じゃあ、ちゃんとしないと」
「ちゃんと、ですか?」
高位神官が問い返す。
「ぴよちゃんのおうちなら、きれいにしないと」
ルークがとうとう少し顔を背けた。 乳母は口元を押さえている。
でもリリアーナは大真面目だ。
「ぴよちゃん、わたしのあたま、きたなくない?」
「ぴよぴよ」
少し忙しい鳴き方だった。
たぶん大丈夫、なのだろう。 少なくともリリアーナはそう受け取った。
「よかった」
そのやり取りを見て、高位神官は深く息を吐いた。 呆れているのではない。 たぶん、圧倒されているのだ。
やがて神官は、ぴよちゃんからようやく視線を外し、ミーちゃんとワンちゃんにも目を向けた。 けれど、やはり最も強く反応するのはぴよちゃんに対してだった。
それを見て、リリアーナは少し不思議に思う。
「ぴよちゃんが、いちばんすごいの?」
高位神官は慎重に答える。
「どなたも比べられるような御存在ではありません。ただ……神鳥は古くより神託と空の兆しを司るとされ、神殿にとって特に意味の深い御方なのです」
神託。 兆し。 また難しい言葉だ。
でも、たぶん神殿の人たちにとって、ぴよちゃんは特別なのだろう。
リリアーナは少し考えてから言った。
「でも、ぴよちゃん、ふつうにぴよぴよしてるよ?」
「……はい」
高位神官の返事は、妙に弱かった。
ルークがそこで助け舟を出すように言う。
「お嬢様にとっては、そうなのでしょう」
その言い方がやさしかったので、リリアーナは少し安心する。
「うん。だって、ぴよちゃんだもの」
そう言うと、ぴよちゃんは満足そうに小さく鳴いた。
高位神官はその姿をじっと見つめ、それから本当に慎重な声で言った。
「お嬢様。もし差し支えなければ、その御方がいつごろから、お傍におられるのか教えていただけますか」
「おにわでひろったの」
「……拾われた」
「うん。ひとりぼっちみたいだったから」
その答えに、神官たちはまた微妙な顔になる。 でもリリアーナは気にしない。
本当にそうだったのだ。 小さくて、あったかくて、ひとりぼっちみたいだった。 だから拾った。 それだけだ。
「それから、ずっとここなの」
そう言って、また頭をそっと押さえる。
高位神官はしばらく黙っていたが、やがて目を伏せて小さく言った。
「なるほど……選ばれたのではなく、拾われたのですな」
その言い方は、少しおかしかった。 でもリリアーナには意味が分からない。
「ひろうの、だめだった?」
「いいえ。むしろ……その逆でございます」
そこまで言ってから、高位神官は姿勢を正した。
「神殿としては、お嬢様と御三方に対して、最大限の敬意を払うべきと判断いたします。特に、神鳥様の御座所については、無礼のないよう厳重に伝えます」
「ござしょ?」
また難しい。
ルークが静かに補う。
「ぴよちゃんの居場所、という意味です」
「あ、あたまのうえ?」
「ええ」
リリアーナはまた頭を押さえた。
「そんなにたいせつなの?」
「はい」 と、高位神官がきっぱり答えた。
「とても」
その答えがあまりに真剣だったので、リリアーナは少しだけどきどきした。
ぴよちゃんは、ちょっとすごい小鳥だと思っていた。 でも、どうやら“ちょっと”では済まないらしい。
それでも、やっぱりぴよちゃんはぴよちゃんだ。
頭の上で鳴いて、機嫌がいいときはちょっと偉そうで、たまに定位置争いをして、でも基本的にはずっと一緒にいる。
それ以上でも、それ以下でもない。
「ぴよちゃん」
「ぴよ」
「これからも、そこなの?」
「ぴよ」
また即答だった。
リリアーナはくすっと笑う。
「そっか」
高位神官たちは、その短いやり取りひとつひとつに緊張しているみたいだった。でもリリアーナはもう気にしなかった。
ぴよちゃんが頭の上にいる。 それが大事。 それだけでよかった。
やがて神官たちが帰るころには、離宮の中でひとつだけ新しい決まりのようなものができていた。
誰も、リリアーナの頭の上を軽く扱わないこと。
使用人たちは、前よりもっと慎重になり、乳母でさえ髪を整える時は少しだけ手つきが丁寧になった。
その変化を見ながら、リリアーナは不思議そうに首をかしげる。
でも、ぴよちゃんは気にしていない。 いつも通り、頭の上で丸くなっている。
「ぴよちゃん、やっぱり、ちょっとじゃなくて、かなりすごかったのね」
「ぴよ」
今度は、どう聞いても満足そうな鳴き方だった。
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