婚約者チェンジ? 義理の妹は公爵令嬢の地位もチェンジされました』 ~三日で破談、家ごと褫奪の末路です~

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第二十四話 褫奪

第二十四話 褫奪

 王宮からの召喚が、三度目に届いたとき。

 公爵はもう言い訳を探さなかった。

 評議会の間には、前回と同じ顔ぶれが並ぶ。

 法務官、財務官、王家顧問。

 そして上座に王太子。

 空気は静まり返っている。

 感情はない。

 ただ、判断が下される場。

 公爵は進み出て、頭を下げた。

「ノーランド公爵」

 法務官が書面を広げる。

「王家は、貴家の統治状況を調査した」

 淡々と読み上げられる。

 令嬢の度重なる規律違反。
 教育の不備。
 家内の政治的介入。
 そして領地実務の実質的な放棄。

 「公爵自らの監督責任が不十分であったと認める」

 その一文が、決定打だった。

 公爵は顔を上げない。

 否定できない。

 事実だからだ。

 王太子が静かに口を開く。

「ノーランド家は、前公爵夫人の代において安定していた」

 その言葉に、公爵の胸が締めつけられる。

「現体制下において、秩序の維持が困難と判断する」

 それは、最終宣告。

 法務官が続ける。

「よって王家は、ノーランド公爵家の爵位を褫奪する」

 会議室の空気が凍る。

 褫奪。

 爵位剥奪。

 それは名誉の消失であり、特権の喪失。

 同時に、貴族身分の剥離。

 公爵の喉が乾く。

「……異議は」

 声がかすれる。

「異議は受け付けぬ」

 王太子の声は冷静だ。

「家の秩序を守れなかった」

「それが理由だ」

 怒りではない。

 罰ではない。

 秩序維持のための処置。

 それが最も冷酷だった。

 評議会は終わる。

 公爵は石のような足取りで王宮を出る。

 空は晴れている。

 だが、何も見えない。

 屋敷へ戻ると、後妻が待っていた。

「結果は」

 公爵は一瞬、言葉を失う。

 そして、静かに告げる。

「爵位は……失われた」

 後妻の扇が床に落ちる。

「そんな……」

 コンキュが立ち尽くす。

「冗談でしょう?」

 公爵は首を振る。

「冗談ではない」

 王家の文書が差し出される。

 印は本物。

 効力は即日。

 屋敷は王家の管理下に入り、
 財産の大半は没収。

 最低限の生活資金のみが残される。

 貴族ではなくなる。

 それが現実。

 後妻は椅子に崩れ落ちる。

「わたくしは、公爵夫人よ……」

 その肩書きは、もう存在しない。

 コンキュは呆然と呟く。

「わたくし、公爵令嬢ですのに……」

 その言葉は虚しく響く。

 肩書きは責任と共にある。

 責任を果たせなければ、地位は残らない。

 公爵はゆっくりと目を閉じる。

 婿養子として家を守るために迎えられた。

 だが守れなかった。

 家名も、爵位も。

 屋敷の廊下が妙に広く感じる。

 召使いの数は減り、足音も少ない。

 ノーランド家は、終わった。

 一方、遠くサウザー公爵邸では、静かな灯りがともっている。

 秩序は保たれ、帳簿は整い、領地は安定している。

 正統とは、血だけではない。

 責任を継ぐ者が継ぐ。

 それを果たせなかった家は、静かに歴史から外れた。

 ノーランド家の紋章は、王宮の記録簿に「廃止」と記された。

 それで終わりだった。
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