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【五】君が香
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夏の終わりに草刈りをした庭は、そろそろ枯れ草が増えてきた。
手をつけずに放っておくと、作物に虫がついたり病気を引き起こす原因になる。
そろそろまた手入れが必要だった。
刈り取った枯れ草は少しずつ焼くのだが、ひとまず離れの裏に集めることにした。草刈りをしたときと同じ場所なので、家の者の動きも手慣れたものだ。
蓮本家の敷地は、通りに面した玄関口に石の門が作られている他、三方を藁づくりの柵で覆っている。
家の裏には急斜面の森があり、松の木や椎が植わっていた。
大きく育った枝は敷地の中にも入り込んで、庭に木の実を落とす。
掃いても掃いてもどんぐりや松ぼっくりの類が落ちて来るので、下男はうんざりして切りが無いとぼやいていた。
「奥さま。今度は倒れないでくださいね」
「分かっています」
何かしていないとついあれこれと考えてしまうので、香代はまた庭の手入れに参加することにした。
今度こそ倒れさせるわけにはいかないと、たびたび、下女が気遣って強引に休ませる。
香代は苦笑したが、確かに今倒れるわけにはいかないので、素直に従った。
吉夜たちが家を出てから、五日が経とうとしている。
その間、主膳はときどき帰って来るが、お役目柄、香代に話せることもないのか、ほとんど話をしないまま身だしなみを整えてまた勤めに出るのだった。
香代自身、勝手をして迷惑をかけた自覚があるから、黙って待つことを自分に強いていた。
あばら屋で兵吾に最後まで犯されなかったことも、火に飲まれそうになったところを助けてもらえたことも幸運だったが、結果として吉夜に不要な火傷を負わせてしまったのだ。再び夫の負担になるわけにはいかない。
毎朝足を運ぶようになった沈香寺でも、紅葉が見頃を迎えている。
山門に向かう階段を、落葉が赤く染め上げていた。
例の無口な寺男が淡々と葉を集めていたが、眉を寄せているところを見れば、蓮本家の下男と同じくきりがないと思っているのだろう。
話しかけても邪険に思われるだけだろうから、香代は頭だけ下げて通り過ぎた。
和尚は変わらず、香代の来訪を喜んでくれた。
吉夜と共に訪れるのを待っている和尚は訝しみ、
「まだ帰って来んのか。例の疑いは晴れたんだろう?」
「ええ、まあ……」
香代はあいまいに答えることしかできない。
首を傾げる和尚の横で、香代は仏前に手を合わせた。
***
その日の昼過ぎ、珍しく吉夜から文が届いた。
中を見れば、旅装束の準備をと書いてある。
領地を巡察に行くのか、それとも他の場所へ行くのだろうか。
香代は気になりながらも、言われたとおりにわらじや脚絆の準備をした。
一度帰って来るかと思いきや、荷物はそのまま、供の者が持って行ってしまった。
(……吉夜さま……)
香代は何も言わず、その姿を見送った。
辰之介と吉夜の話を思い出せば、二人は兵吾という捕物を押さえるために、なにかを仕掛けるつもりなのだろう。
それが吉夜の旅支度に絡んでいるのだろうとは、想像できた。
(どうか、ご無事で……)
香代は祈りながら眠りについた。
***
床についてしばらくした頃、パチパチと、小さな音が聞こえた。
(……なにかしら)
夢うつつの中、耳をすます。
何かが爆ぜる、パチンという音がした。
どこかで聞いたことのある音だ。
たき火の中で――木の実が爆ぜるような。
香代ははっとして、身を起こした。
「誰か……!」
縁側に出て声をあげるのとほぼ同時に、「奥さま!」と悲鳴のような声が聞こえた。
「離れに火が! 火が……!」
香代は血の気が引くのを感じた。
転がるように外に出れば、離れの裏から火が上がっている。そこにあったのは枯れ草の山だ。
煌々と火が燃え、ときどき、しいの実が爆ぜて破裂する。
ときどき、ぼっ、と火が強まるのは、転がっている松ぼっくりのせいだろう。枯れ草を油分の多い木の実と一緒にして、建屋の近くに集めたのは失策だった。
家の者が水を運んでいるのが見えた。濡らした布で火をたたこうとする者もいるが、もうそれで消える様子はない。
「危ないからやめなさい!」
香代は腕を引いてやめさせた。藁葺きの屋根にも火が飛んでいる。
それはどう見ても、枯れ草から広がった火ではなさそうだ。
(でも――それなら、どこから?)
思ったとき、暗闇から放たれた一条の光が、離れの縁側にぶつかった。
(――矢?)
ぞっとする間にも、ふたたび火のついた矢が放たれる。今度は二本同時に飛んできて、離れの雨戸に刺さった。
射手は裏の森の木の上らしい。
「お、奥さま。ここは危のうございます、はやくお逃げください!」
混乱する中でも、家の者は香代を守ろうとしている。
自分だけでも無事でいたいと思って当然のはずなのに。
今の香代にはそれが、心強い。
(だからこそ、やらねばならないことがある)
香代は森の方を睨みつけた。たぶんそこには、兵吾がいる――武官から身を起こした十和田家で、弓の名手と言われた男が。
「――陣屋に知らせを!」
香代は襷掛けしながらそう叫んで、水釜に手をかけた。
家の者が目を丸くする間に、ざぶんと頭から水をかぶる。
「――すぐに戻ります。斧を準備してください。できるだけ多く」
引き留める余地を与えず、香代は離れに飛び込んだ。
火の手はまだ建屋の外にしか及んでいないようだが、中には煙が充満している。
香代は姿勢を低くして、袖で口元を押さえながら進んだ。
(持っていけるものは限られる……)
離れには、蓮本家の家宝といえる香木がある。その量たるや、香代ひとりで運べるものではない――が、
(少しでも無事に運び出せれば……)
陣屋で香の会を開く――という話が、頭に残っていた。
貴重な香木を失っては、吉夜のお役目にも差し障るはずだ。
家を守る。それが妻の勤めだ。
自分のすべてを以て、その勤めを果たすつもりだった。
煙が目に入り、涙で視界が歪んだ。こほ、と咳をして煙を吐き出す。
どこからか風が入ったのか、不意に煙が向きを変えた。
それに導かれるように顔を逸らしたところで、目に入ったものに動きを止めた。
(あれは……)
ぱちん、と音がした。振り向けば、中にも火の手が入り込んできている。
もうこれ以上中にいては危ない。
(義父上、吉夜さま……)
香代は心の中で呟いて、無我夢中でそれを胸に抱き、外へと転び出た。
「奥さま……!」
「大丈夫……わたしは大丈夫です」
出てくるときに、また煙を吸ったらしい。香代は咳き込んでから、「柱を……」と指差した。
「離れの柱を倒して。早く!」
「柱を……?」
家の者がうろたえる。が、香代は大きくうなずいた。
「火を離れに留めます!」
その場に立ち上がった香代は、大きく息を吸った。
「殿の居所が近くにあって、火の手を広げるわけにはいきません!」
その後ろではメラメラと、炎が燃えている。香代はそれを睨みつけた。
「旦那さまたちはおられずとも、できることは全てします! ――この命に変えても、火の手はこの蓮本家に留めます!」
香代の姿に、庭にいた者は目を奪われ、そしてうなずいた。
「こっちだ! 行くぞ!」
「女たちは手分けして人を集めるんだ!」
「水も集めろ、急げ!」
火の矢はその間も、変わらず庭に飛んでくる。
それでも香代は臆することなく、陣頭で指揮を取り続けた。
手をつけずに放っておくと、作物に虫がついたり病気を引き起こす原因になる。
そろそろまた手入れが必要だった。
刈り取った枯れ草は少しずつ焼くのだが、ひとまず離れの裏に集めることにした。草刈りをしたときと同じ場所なので、家の者の動きも手慣れたものだ。
蓮本家の敷地は、通りに面した玄関口に石の門が作られている他、三方を藁づくりの柵で覆っている。
家の裏には急斜面の森があり、松の木や椎が植わっていた。
大きく育った枝は敷地の中にも入り込んで、庭に木の実を落とす。
掃いても掃いてもどんぐりや松ぼっくりの類が落ちて来るので、下男はうんざりして切りが無いとぼやいていた。
「奥さま。今度は倒れないでくださいね」
「分かっています」
何かしていないとついあれこれと考えてしまうので、香代はまた庭の手入れに参加することにした。
今度こそ倒れさせるわけにはいかないと、たびたび、下女が気遣って強引に休ませる。
香代は苦笑したが、確かに今倒れるわけにはいかないので、素直に従った。
吉夜たちが家を出てから、五日が経とうとしている。
その間、主膳はときどき帰って来るが、お役目柄、香代に話せることもないのか、ほとんど話をしないまま身だしなみを整えてまた勤めに出るのだった。
香代自身、勝手をして迷惑をかけた自覚があるから、黙って待つことを自分に強いていた。
あばら屋で兵吾に最後まで犯されなかったことも、火に飲まれそうになったところを助けてもらえたことも幸運だったが、結果として吉夜に不要な火傷を負わせてしまったのだ。再び夫の負担になるわけにはいかない。
毎朝足を運ぶようになった沈香寺でも、紅葉が見頃を迎えている。
山門に向かう階段を、落葉が赤く染め上げていた。
例の無口な寺男が淡々と葉を集めていたが、眉を寄せているところを見れば、蓮本家の下男と同じくきりがないと思っているのだろう。
話しかけても邪険に思われるだけだろうから、香代は頭だけ下げて通り過ぎた。
和尚は変わらず、香代の来訪を喜んでくれた。
吉夜と共に訪れるのを待っている和尚は訝しみ、
「まだ帰って来んのか。例の疑いは晴れたんだろう?」
「ええ、まあ……」
香代はあいまいに答えることしかできない。
首を傾げる和尚の横で、香代は仏前に手を合わせた。
***
その日の昼過ぎ、珍しく吉夜から文が届いた。
中を見れば、旅装束の準備をと書いてある。
領地を巡察に行くのか、それとも他の場所へ行くのだろうか。
香代は気になりながらも、言われたとおりにわらじや脚絆の準備をした。
一度帰って来るかと思いきや、荷物はそのまま、供の者が持って行ってしまった。
(……吉夜さま……)
香代は何も言わず、その姿を見送った。
辰之介と吉夜の話を思い出せば、二人は兵吾という捕物を押さえるために、なにかを仕掛けるつもりなのだろう。
それが吉夜の旅支度に絡んでいるのだろうとは、想像できた。
(どうか、ご無事で……)
香代は祈りながら眠りについた。
***
床についてしばらくした頃、パチパチと、小さな音が聞こえた。
(……なにかしら)
夢うつつの中、耳をすます。
何かが爆ぜる、パチンという音がした。
どこかで聞いたことのある音だ。
たき火の中で――木の実が爆ぜるような。
香代ははっとして、身を起こした。
「誰か……!」
縁側に出て声をあげるのとほぼ同時に、「奥さま!」と悲鳴のような声が聞こえた。
「離れに火が! 火が……!」
香代は血の気が引くのを感じた。
転がるように外に出れば、離れの裏から火が上がっている。そこにあったのは枯れ草の山だ。
煌々と火が燃え、ときどき、しいの実が爆ぜて破裂する。
ときどき、ぼっ、と火が強まるのは、転がっている松ぼっくりのせいだろう。枯れ草を油分の多い木の実と一緒にして、建屋の近くに集めたのは失策だった。
家の者が水を運んでいるのが見えた。濡らした布で火をたたこうとする者もいるが、もうそれで消える様子はない。
「危ないからやめなさい!」
香代は腕を引いてやめさせた。藁葺きの屋根にも火が飛んでいる。
それはどう見ても、枯れ草から広がった火ではなさそうだ。
(でも――それなら、どこから?)
思ったとき、暗闇から放たれた一条の光が、離れの縁側にぶつかった。
(――矢?)
ぞっとする間にも、ふたたび火のついた矢が放たれる。今度は二本同時に飛んできて、離れの雨戸に刺さった。
射手は裏の森の木の上らしい。
「お、奥さま。ここは危のうございます、はやくお逃げください!」
混乱する中でも、家の者は香代を守ろうとしている。
自分だけでも無事でいたいと思って当然のはずなのに。
今の香代にはそれが、心強い。
(だからこそ、やらねばならないことがある)
香代は森の方を睨みつけた。たぶんそこには、兵吾がいる――武官から身を起こした十和田家で、弓の名手と言われた男が。
「――陣屋に知らせを!」
香代は襷掛けしながらそう叫んで、水釜に手をかけた。
家の者が目を丸くする間に、ざぶんと頭から水をかぶる。
「――すぐに戻ります。斧を準備してください。できるだけ多く」
引き留める余地を与えず、香代は離れに飛び込んだ。
火の手はまだ建屋の外にしか及んでいないようだが、中には煙が充満している。
香代は姿勢を低くして、袖で口元を押さえながら進んだ。
(持っていけるものは限られる……)
離れには、蓮本家の家宝といえる香木がある。その量たるや、香代ひとりで運べるものではない――が、
(少しでも無事に運び出せれば……)
陣屋で香の会を開く――という話が、頭に残っていた。
貴重な香木を失っては、吉夜のお役目にも差し障るはずだ。
家を守る。それが妻の勤めだ。
自分のすべてを以て、その勤めを果たすつもりだった。
煙が目に入り、涙で視界が歪んだ。こほ、と咳をして煙を吐き出す。
どこからか風が入ったのか、不意に煙が向きを変えた。
それに導かれるように顔を逸らしたところで、目に入ったものに動きを止めた。
(あれは……)
ぱちん、と音がした。振り向けば、中にも火の手が入り込んできている。
もうこれ以上中にいては危ない。
(義父上、吉夜さま……)
香代は心の中で呟いて、無我夢中でそれを胸に抱き、外へと転び出た。
「奥さま……!」
「大丈夫……わたしは大丈夫です」
出てくるときに、また煙を吸ったらしい。香代は咳き込んでから、「柱を……」と指差した。
「離れの柱を倒して。早く!」
「柱を……?」
家の者がうろたえる。が、香代は大きくうなずいた。
「火を離れに留めます!」
その場に立ち上がった香代は、大きく息を吸った。
「殿の居所が近くにあって、火の手を広げるわけにはいきません!」
その後ろではメラメラと、炎が燃えている。香代はそれを睨みつけた。
「旦那さまたちはおられずとも、できることは全てします! ――この命に変えても、火の手はこの蓮本家に留めます!」
香代の姿に、庭にいた者は目を奪われ、そしてうなずいた。
「こっちだ! 行くぞ!」
「女たちは手分けして人を集めるんだ!」
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