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第一王子であるアルフレドの言葉にエミーリアはつい困惑してしまった。婚約者となってから、困り果て言葉を詰まらせるなど初めての失態。それくらいにアルフレドの言葉はエミーリアを揺さぶった。
いつもだったら質問されれば即答し、意見を尋ねられれば自分が答えられる限りの最善解を述べてきたというのに。
「殿下、申し訳ございません。わたくしは、そのことを存じ上げませんので、お伝えのしようがございません」
「おまえはわたしのサポートの為にいるというのにか?」
「申し訳ございません」
「何の為の王子妃教育だ。しっかり受けているというのは嘘なのか。役に立たないとはどういうことだ」
親睦を図る為のアルフレドとエミーリアの二人きりのお茶会。二人きりといっても、立場上周りには護衛騎士もメイドも侍従もいる。その者達は皆心の中でそんなことは王子妃教育で習うわけはないだろうとエミーリアを不憫に感じていた。それにエミーリアはただのサポート役ではなく、婚約者であり後のアルフレドの伴侶だ。なのに、その質問はあまりにも心無いとも思っていた。
「本当に申し訳ございません」
酷い言われようをしても弁明もなく謝罪するエミーリアに、寧ろ王子を立てろという教育が行き過ぎているのではないかと周囲は心の中で同情すら覚えた。
しかし、二人きりのお茶会という体である以上周囲は何もすることは出来ない。
全体的にどんよりしだした雰囲気の中、エミーリアの透き通る声が再びアルフレドに向けられる。
「殿下、あちらに一等記録官の姿が見えます。此度の失態を記録に残してはいただけないでしょうか」
エミーリアは遠い所を通り過ぎようとする人物の姿を確認すると、アルフレドに己の失態を記録するよう冷静に提案したのだった。
「そうだな、あってはならないことをしたのだ、記録を残しておこう」
いよいよ周囲の者達は心の中で動揺し始めた。しかしそれを誰も顔には出せない。あくまでも二人きりのお茶会。傍にいるものは空気でなければならないのだ。
「おい、そこのもの、あそこにいるという記録官を連れて来てくれ」
アルフレドに声を掛けられた騎士は空気から実体を持つことを許され直様記録官の元へ向かっていった。騎士の後ろ姿を見ながら、エミーリアが口元に笑みを浮かべたことなど誰も知らない。
いつもだったら質問されれば即答し、意見を尋ねられれば自分が答えられる限りの最善解を述べてきたというのに。
「殿下、申し訳ございません。わたくしは、そのことを存じ上げませんので、お伝えのしようがございません」
「おまえはわたしのサポートの為にいるというのにか?」
「申し訳ございません」
「何の為の王子妃教育だ。しっかり受けているというのは嘘なのか。役に立たないとはどういうことだ」
親睦を図る為のアルフレドとエミーリアの二人きりのお茶会。二人きりといっても、立場上周りには護衛騎士もメイドも侍従もいる。その者達は皆心の中でそんなことは王子妃教育で習うわけはないだろうとエミーリアを不憫に感じていた。それにエミーリアはただのサポート役ではなく、婚約者であり後のアルフレドの伴侶だ。なのに、その質問はあまりにも心無いとも思っていた。
「本当に申し訳ございません」
酷い言われようをしても弁明もなく謝罪するエミーリアに、寧ろ王子を立てろという教育が行き過ぎているのではないかと周囲は心の中で同情すら覚えた。
しかし、二人きりのお茶会という体である以上周囲は何もすることは出来ない。
全体的にどんよりしだした雰囲気の中、エミーリアの透き通る声が再びアルフレドに向けられる。
「殿下、あちらに一等記録官の姿が見えます。此度の失態を記録に残してはいただけないでしょうか」
エミーリアは遠い所を通り過ぎようとする人物の姿を確認すると、アルフレドに己の失態を記録するよう冷静に提案したのだった。
「そうだな、あってはならないことをしたのだ、記録を残しておこう」
いよいよ周囲の者達は心の中で動揺し始めた。しかしそれを誰も顔には出せない。あくまでも二人きりのお茶会。傍にいるものは空気でなければならないのだ。
「おい、そこのもの、あそこにいるという記録官を連れて来てくれ」
アルフレドに声を掛けられた騎士は空気から実体を持つことを許され直様記録官の元へ向かっていった。騎士の後ろ姿を見ながら、エミーリアが口元に笑みを浮かべたことなど誰も知らない。
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