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十五羽の鶏がやって来た日の夜、思いがけない来客が薫にあった。
『薫さん、薫さん』
「あ、スカーレットさん、来てくれたのね。と言うことは、イービルも来たのね」
薫の頭を一瞬過ったのは、ヨーロッパで鶏は悪魔を祓う太陽の象徴ということ。塔の上などに風見鶏が取り付けてあるのはその為だと聞いたことがある。
黒ずくめの服装から、ついイービルは悪魔のように見えてしまうが、話を聞く限り創造主から依頼を受け仕事をする正しく仕事人だ。悪魔ではない。鶏の持つ悪魔祓いのイメージからイービルがここにいることに疑問を持ってしまったが、失礼だったなと薫は心の中で謝っておいた。
そして、目の前で飛び切りの笑顔を見せてくれるスカーレットに薫も笑みを返した。同じ顔なのに、何故かスカーレットが飛び切りの美人に見える。これは『恋』のあるなしが影響しているのは明らか。残念だけれど、薫がスカーレットのような表情を浮かべるには時間が掛かりそうだ。何せ、恋の前に相手探しから始めなくてはいけないのだから。
『薫さん、ファルコールはどう?』
「とても良いところね、気に入ったわ」
『良かった。今日は薫さんの新天地到着祝いをしようと思って、イービル様と来たのよ』
「まあ、ありがとう。久し振りにスカーレットさんと話せて嬉しいわ」
『お話するだけじゃなく、プレゼントもあるの』
裕福なキャスト―ル侯爵家の美しいご令嬢というステータスを薫は既に貰っている。もうこれだけ十分だというのに、スカーレットは更にプレゼントを用意していると言う。
『ここではない違う世界からやって来た薫さんが、この世界で生きていく為にね、イービル様が7つ、希望を叶えてくれるわ。ただし、その7つは個人的な願いではなく、キャスト―ル侯爵家が治める領地やキャスト―ル侯爵家の為になることだけよ』
「スカーレットさん、それは今直ぐ決めなくてはいけないの?」
『いいえ、いつでもいいわ。わたし達があなたの前に現れた時に言ってくれれば』
「分かった」
四十歳手前の薫が選ばれたこの世界。そんな薫でもおろおろしないように、魔法や妖精といったファンタジーな要素はない世界なのかと理解していたのだが、それも少し違うようだ。
実際、イービルとスカーレットの関係はファンタジー過ぎる。好き合っている二人に子供は生まれるのかなど、現実問題を突き付けたくなってしまう部分もあるのだが。もっと追及するなら、その子供の名前は何になるのだろうかという四十歳手前のファンタジーに振り切れない薫の素朴な疑問も。
しかし目の前にいるイービルの存在そのものがファンタジー中のファンタジー。薫の魂をこの世界に呼びスカーレットにしてしまったくらいだ、願いを叶えるなんてことはお茶の子さいさいなのかもしれない。それでも、その力を薫に使ってくれるだなんて案外イービルは良いヤツなのだろう。薫は再び悪魔とイービルの存在を重ねたことを心の中で謝った。
『もし、今、願いがあるなら、この場で聞くが』
「ありがとう。じゃあ、今日は一つ、お願いがあるの。イービル、この辺は火山帯でしょ。人が住んで長いということはもうずっと噴火はしていないって設定だと思うけど」
薫はここ数日で聞いたファルコールの地形で気になっていたことを解消する為、イービルに願いを伝えた。スカーレットが言ったキャスト―ル侯爵領の為になることを。
かなり図々しいのは承知で、山々が今後噴火しないこと、その熱を逃す為に温泉を出して欲しいこと、更に温泉を出す時に熱さを三段階にして欲しいこと、を一つの希望として伝えたのだ。オリハルコンのお局と呼ばれた薫らしく、叶えるのが当然という態度で。
山は未知数。死火山だと思っていた山ですら噴火した例もあるし、休火山なら尚更そのサイクルは分かりもしない。一度噴火したら、噴煙や土石流で大変なことになる。灰が降りだせば空が陰鬱な色に変わり、地面に降り積もれば集めて処理もしなくてはいけない。
桜島を見たいと思い訪れた鹿児島。そこで薫は見たのだ、ごみ収集ならぬ火山灰収集を。山から煙が出ているだけでも、あれだけ降り積もるというのに。一度噴火でもしたらファルコールは大変なことになる。
無理があるかもしれないこの一つの願いをイービルは叶えてくれるのだろうか。
否、叶えさせる。薫はこの願いがどうファルコールに役立つのかイービルへプレゼンすることとしたのだった。
『薫さん、薫さん』
「あ、スカーレットさん、来てくれたのね。と言うことは、イービルも来たのね」
薫の頭を一瞬過ったのは、ヨーロッパで鶏は悪魔を祓う太陽の象徴ということ。塔の上などに風見鶏が取り付けてあるのはその為だと聞いたことがある。
黒ずくめの服装から、ついイービルは悪魔のように見えてしまうが、話を聞く限り創造主から依頼を受け仕事をする正しく仕事人だ。悪魔ではない。鶏の持つ悪魔祓いのイメージからイービルがここにいることに疑問を持ってしまったが、失礼だったなと薫は心の中で謝っておいた。
そして、目の前で飛び切りの笑顔を見せてくれるスカーレットに薫も笑みを返した。同じ顔なのに、何故かスカーレットが飛び切りの美人に見える。これは『恋』のあるなしが影響しているのは明らか。残念だけれど、薫がスカーレットのような表情を浮かべるには時間が掛かりそうだ。何せ、恋の前に相手探しから始めなくてはいけないのだから。
『薫さん、ファルコールはどう?』
「とても良いところね、気に入ったわ」
『良かった。今日は薫さんの新天地到着祝いをしようと思って、イービル様と来たのよ』
「まあ、ありがとう。久し振りにスカーレットさんと話せて嬉しいわ」
『お話するだけじゃなく、プレゼントもあるの』
裕福なキャスト―ル侯爵家の美しいご令嬢というステータスを薫は既に貰っている。もうこれだけ十分だというのに、スカーレットは更にプレゼントを用意していると言う。
『ここではない違う世界からやって来た薫さんが、この世界で生きていく為にね、イービル様が7つ、希望を叶えてくれるわ。ただし、その7つは個人的な願いではなく、キャスト―ル侯爵家が治める領地やキャスト―ル侯爵家の為になることだけよ』
「スカーレットさん、それは今直ぐ決めなくてはいけないの?」
『いいえ、いつでもいいわ。わたし達があなたの前に現れた時に言ってくれれば』
「分かった」
四十歳手前の薫が選ばれたこの世界。そんな薫でもおろおろしないように、魔法や妖精といったファンタジーな要素はない世界なのかと理解していたのだが、それも少し違うようだ。
実際、イービルとスカーレットの関係はファンタジー過ぎる。好き合っている二人に子供は生まれるのかなど、現実問題を突き付けたくなってしまう部分もあるのだが。もっと追及するなら、その子供の名前は何になるのだろうかという四十歳手前のファンタジーに振り切れない薫の素朴な疑問も。
しかし目の前にいるイービルの存在そのものがファンタジー中のファンタジー。薫の魂をこの世界に呼びスカーレットにしてしまったくらいだ、願いを叶えるなんてことはお茶の子さいさいなのかもしれない。それでも、その力を薫に使ってくれるだなんて案外イービルは良いヤツなのだろう。薫は再び悪魔とイービルの存在を重ねたことを心の中で謝った。
『もし、今、願いがあるなら、この場で聞くが』
「ありがとう。じゃあ、今日は一つ、お願いがあるの。イービル、この辺は火山帯でしょ。人が住んで長いということはもうずっと噴火はしていないって設定だと思うけど」
薫はここ数日で聞いたファルコールの地形で気になっていたことを解消する為、イービルに願いを伝えた。スカーレットが言ったキャスト―ル侯爵領の為になることを。
かなり図々しいのは承知で、山々が今後噴火しないこと、その熱を逃す為に温泉を出して欲しいこと、更に温泉を出す時に熱さを三段階にして欲しいこと、を一つの希望として伝えたのだ。オリハルコンのお局と呼ばれた薫らしく、叶えるのが当然という態度で。
山は未知数。死火山だと思っていた山ですら噴火した例もあるし、休火山なら尚更そのサイクルは分かりもしない。一度噴火したら、噴煙や土石流で大変なことになる。灰が降りだせば空が陰鬱な色に変わり、地面に降り積もれば集めて処理もしなくてはいけない。
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