オリハルコンの女~ここから先はわたしが引き受けます、出来る限りではございますが~

五十嵐

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「薫さん、お久し振り。とても元気そうで良かったわ」
「ありがとう、スカーレットさん」
「その後、叶えて欲しい願いは出来たかしら」
「今は特にないかな。菌と種製造機はなかなか万能なのよ。流石イービルね」

薫は今後も拡大解釈満載の何かを出してもらう為に、イービルをスカーレットの前でしっかり持ち上げておいた。

「でもね…願いはないのだけれど、知りたいことがあって…」

薫の知りたいこと。それは、あの夢の正体。この世界の誰かに尋ねようのないことだった。イービルとて知らない可能性も高いが、一番もしかしたらがあるのもイービルに他ならない。

気を付けなくてはいけないのが、うっかり願いを使ってしまうこと。まあ、これはキャストール侯爵領の為とかそういうことではないので、カウントされないとは思うがそこはしっかり予防しなくては。だから薫は願いではないと前置きした上でイービルに話を振ってみたのだった。

「知りたいこと?わたしの記憶以外のことなのね」
「それが…、スカーレットさんの記憶以外のことだし、本で調べたり誰かに尋ねたり出来るようなことではないの。荒唐無稽な話に思えるでしょうけど、未来、それも今とは違う未来の話なの」
「未来は俺にも分からん。厳密に言うと創造主の手を離れたその先はな」
「ええ、本来は未来なんて誰にも分からない。創造主やイービルが知っていたのも、創られたところまで、その通りよ。けれど、わたしは不思議な夢を見たの」
「夢?どういうものか話してみろ」

薫は一度目、二度目の夢の内容を二人に話して聞かせた。登場人物は既知の人物もいれば、まだ会ったこともない人物、そして一生会うこともなかった人物までいることを。そして、薫が立てた夢の正体の予想も。

「本来、俺が創造主の世界にすることは人の心に依頼に合わせた妬みや悪を注ぐだけ。自ら何かすることもないし、本来ならば関わらない。ただ、薫の話を聞く限りモンド(世界)とイマージュ(イメージ)の双子の兄妹が関わっていそうだ」
「モンドとイマージュ?」
何故イービルと違う言語の名前が、と突っ込みたいところを我慢して薫はイービルに先を促した。

「予知夢という言葉を知っているだろう。薫が見たのはそれに類似したものだ。恐らく予想は正しい。創造主の筋書き通りだった時のその先を二人は薫に見せたのだろう。しかも、なんらかの仕掛けをして」
「仕掛け?」
「ああ、二人はその仕掛けを偶然が織りなす芸術と呼んでいる。そして薫が夢を見たのは創造主に頼まれたことではないだろう。あの時点で、筋書きの最終盤だったし、薫はスカーレット同様番狂わせの存在だ。気まぐれというか、気分屋というか…、そういう存在の薫で二人は少し遊んでみたのではないか、面白いと思って。二人は自由な芸術家肌で…」

薫のあの夢は本当にたまたまのようだ。しかも、モンドとイマージュはイービルが言い淀む程のタイプらしいということが分かった。それに偶然が織りなす芸術では、発動条件など知りようがないに等しい。

「ところでイービル、モンドが男性でイマージュが女性?」
「どうして分かった?」
薫はその答えは辞書に男性名詞と女性名詞と書いてあったとは言わず『なんとなく』と濁した。
そして薫が立てた予想も確実ではないが『なんとなく』合っていそうだという結論に至ったのだった。
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