年に一度の旦那様

五十嵐

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106 クレア・グルーバーの訪問

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クレア・グルーバー、結婚式で言葉を交わしたその女性の印象は『恐ろしい何かを内に秘めていそう』だった。
コリンス伯爵家で雑に扱われ続けたレイチェルは、あの箱の中で静かに過ごすため、そういう部分に敏感にならざるを得なかった。使用人たちの目を見れば、自分に同情的だが面倒を避けたい者、アリッサに気に入られるために都合の良い獲物を見つけたと思う者など、レイチェルはそれらを早い段階で見分けなければならなかったのだ。

レイチェルが親戚となるクレアと結婚式で言葉を交わすのは当然のこと。それはクレアも同じだ。けれど、アリッサの親戚であるクレアにとって、レイチェルは面倒な存在になる。だから、その気持ちが出て早々に挨拶も終わるものと思っていた。だが、あの時のクレアの瞳には、レイチェルがよく知る『面倒を避けたい』という感情ではなく、どこかどす黒い何か、そう、恐ろしい何かがあった。

クレアからの招待状に強い違和感を覚えてから数日。全てをロイとフリカが上手く進めていった。ロイはレイチェルの療養以外にも、クレアとアーミテージ子爵家の動きを理由に、マクレナン侯爵から侯爵邸で茶会を開く許可を取った。

フリカはどうカルセナと連絡を取り合っているのか分からないが、招待状が到着した翌々日にはクレアの最近の様子の情報を入手した。

『二人の娘のことで気が滅入っているようです。それと、アーミテージ子爵家に手紙を送っています。カルセナの予想では、やはりお嬢様に力があるか確認しようとしているのではないかとのことでした。それで、今後のことに変更と追加を加えてきています』

そんなやり取りから数日、レイチェルからの招待にクレアが応じた。それも早々に。
そして、マクレナン侯爵邸にやって来たクレアには、あの時の瞳の印象などまるでなかった。瞳どころか、人物そのものからもレイチェルには覇気が感じられなかったのだ。

「本日はお招きありがとうございます」

美しい礼をし、レイチェルに首を垂れるクレア。後ろにいる侍女と従者も同時に頭を下げる。しかし、本来姿勢も所作も美しくなければならない従者にはそれがなかった。対照的に、レイチェルの後ろで客を迎えた従者としてのロイは、美しい所作を崩すことなくサインを送った『仕立て屋』だと。
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