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「それでは誓いの口付けを」
夏菜子は不思議に思った。誓いの口付けは五年前にしたはずだと。
五年前に行った結婚式とはまるで様相は違う。外国の王族が行いそうな荘厳な教会らしき場所に、視界から見える範囲でしか分からないが贅沢そうなドレス。
そして目の前にいる人物にヴェールを上げられ、今度は不思議を通り越し驚いた。
目の前の人物のあまりの美形さに。
しかし、驚きのあまり硬直していると直視するのも恐れ多い美形が迫ってくる。つい目を閉じると、唇に柔らかい感触の自分よりも少しだけ体温が高い皮膚が触れた。そしてまた吃驚してしまう、夢なのに生々しい感触に。
気付けば神父なのか神官なのかは分からないが、そういう役であろう服装の人物が『王女ローザリア様とジュリアン様の婚姻の儀が神の名の元に執り行われたことを宣言いたします』と言いこの不思議な夢は締めくくられていた。
と思った、けれど、夢はまだ終わらなかった。場面転換も、違う夢にもならず、お付きの者らしき人に誘われて。
厳かな部屋へ連れていかれると、先ほど口付けをしたジュリアン以外に、更に二人の男性がいた。なんとジュリアンとはまた違う種類の見目麗しい男性が。今度はこの二人とも口付けをするのだと傍にいる身なりの良い男性が夏菜子に言う。
旦那とはレスで手すら触れない日々だけど、乙女の妄想丸出しのような夢を見るなんて自分には欲求を夢に変える力があるのかと夏菜子は思った。枯れた毎日にとうとう自分の深層心理にある願望を花開かせたのだ。なんて最高な夢だろう。
中学からはずっと女子校育ちで、男性経験は旦那以外たった一人。レスになった時にはこんなことならもっと色々な男を知りたかったと後悔はしたが、こんな夢見能力を開花させられたならこれも悪くない。
たとえレスでも、夢の中で毎晩イケメン達とあれやこれや楽しめるのならば。まあ、たまには小動物に囲まれる夢も見たい気がするが一番はイケメンとの目眩く官能の世界だ。
今夜は複数プレイ。
三人のイケメンズからチュウの嵐で服を吹き飛ばされたら、セックスの底なし沼にハマるなんて最高かもしれないとウハウハしてしまう。でも、経験が乏しい夏菜子としては、いくら夢でも自分が知る現実の掌中から抜け出せるのか疑問は残る。
そして、夢である以上食べ物と同じで、いざいただく、この場合はいただいて貰う?となった瞬間に目覚めてしまうのか。また同じような夢を見られるのなら、この三人に再登場いただくことは可能だろうかなどと考えてしまう。
そうこうしている内に、ジュリアンとはまた違う美しい顔をしたブラッドリーと名乗る男性と軽く唇を合わせた。次はルイス。この程度のチュウならば良いところで夢は覚めないらしい。立派な逸物が入っても醒めない夢であって欲しいものだ。でも、立派な逸物というのは夏菜子の願望。披露した瞬間にしょぼくて、その上シオシオになるお笑いのような夢だったらどうしようと考えていたら、張りのある声が部屋に響いた。
「では、今夜の儀式の説明に移ります」
身なりの良い男性が厳かに話を始めると、夏菜子に不思議な感覚がやって来た。
ー あれ、わたし、死んだんじゃあ… ー
説明をされているのは分かる。でも、今はそれを聞くより、思い出さなくてはいけないと思えた。そう、さっきカフェで起きたことを。
目の前の人物達は夏菜子をローザリア様と呼ぶ。残念ながら、夏菜子は橋本夏菜子、二十九歳だ。否、二十九歳だった。
夏菜子は不思議に思った。誓いの口付けは五年前にしたはずだと。
五年前に行った結婚式とはまるで様相は違う。外国の王族が行いそうな荘厳な教会らしき場所に、視界から見える範囲でしか分からないが贅沢そうなドレス。
そして目の前にいる人物にヴェールを上げられ、今度は不思議を通り越し驚いた。
目の前の人物のあまりの美形さに。
しかし、驚きのあまり硬直していると直視するのも恐れ多い美形が迫ってくる。つい目を閉じると、唇に柔らかい感触の自分よりも少しだけ体温が高い皮膚が触れた。そしてまた吃驚してしまう、夢なのに生々しい感触に。
気付けば神父なのか神官なのかは分からないが、そういう役であろう服装の人物が『王女ローザリア様とジュリアン様の婚姻の儀が神の名の元に執り行われたことを宣言いたします』と言いこの不思議な夢は締めくくられていた。
と思った、けれど、夢はまだ終わらなかった。場面転換も、違う夢にもならず、お付きの者らしき人に誘われて。
厳かな部屋へ連れていかれると、先ほど口付けをしたジュリアン以外に、更に二人の男性がいた。なんとジュリアンとはまた違う種類の見目麗しい男性が。今度はこの二人とも口付けをするのだと傍にいる身なりの良い男性が夏菜子に言う。
旦那とはレスで手すら触れない日々だけど、乙女の妄想丸出しのような夢を見るなんて自分には欲求を夢に変える力があるのかと夏菜子は思った。枯れた毎日にとうとう自分の深層心理にある願望を花開かせたのだ。なんて最高な夢だろう。
中学からはずっと女子校育ちで、男性経験は旦那以外たった一人。レスになった時にはこんなことならもっと色々な男を知りたかったと後悔はしたが、こんな夢見能力を開花させられたならこれも悪くない。
たとえレスでも、夢の中で毎晩イケメン達とあれやこれや楽しめるのならば。まあ、たまには小動物に囲まれる夢も見たい気がするが一番はイケメンとの目眩く官能の世界だ。
今夜は複数プレイ。
三人のイケメンズからチュウの嵐で服を吹き飛ばされたら、セックスの底なし沼にハマるなんて最高かもしれないとウハウハしてしまう。でも、経験が乏しい夏菜子としては、いくら夢でも自分が知る現実の掌中から抜け出せるのか疑問は残る。
そして、夢である以上食べ物と同じで、いざいただく、この場合はいただいて貰う?となった瞬間に目覚めてしまうのか。また同じような夢を見られるのなら、この三人に再登場いただくことは可能だろうかなどと考えてしまう。
そうこうしている内に、ジュリアンとはまた違う美しい顔をしたブラッドリーと名乗る男性と軽く唇を合わせた。次はルイス。この程度のチュウならば良いところで夢は覚めないらしい。立派な逸物が入っても醒めない夢であって欲しいものだ。でも、立派な逸物というのは夏菜子の願望。披露した瞬間にしょぼくて、その上シオシオになるお笑いのような夢だったらどうしようと考えていたら、張りのある声が部屋に響いた。
「では、今夜の儀式の説明に移ります」
身なりの良い男性が厳かに話を始めると、夏菜子に不思議な感覚がやって来た。
ー あれ、わたし、死んだんじゃあ… ー
説明をされているのは分かる。でも、今はそれを聞くより、思い出さなくてはいけないと思えた。そう、さっきカフェで起きたことを。
目の前の人物達は夏菜子をローザリア様と呼ぶ。残念ながら、夏菜子は橋本夏菜子、二十九歳だ。否、二十九歳だった。
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