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知らない方が良かった過去と真実。お陰でジュリアンの天使の微笑みまで真っ黒に見えてしまうとは。
あんなに感動した意味不明のプロポーズの言葉は何だったのか。陽太の笑みは、太陽の笑み、なんて思っていた自分が哀れで仕方ない。

太陽の笑みと思っていたのだって、二つの漢字をひっくり返すと陽太になるから。当時はだから陽太にはこの名前がぴったり、なんて思っていたのだ。今なら、太陽をひっくり返したら陽太ではなく暗闇になると良く分かる。暗いと闇だ。陽太こそ、暗くて闇だった。

夏菜子が転生に気付いた時、浮気相手に殺されたのは自分にも悪いところがあったからだと思っていた。夢枕に立って詫びたいと思う程に。
しかし、声が過去と真実を見せたのはその考えを払拭させる為だったようだ。
これはもう幸せに向かってイノシシの如く突き進めということ。猪突猛進しろというメッセージだったのだ。

最初は話の順番が違うと声に不満を感じた夏菜子だったが、これはこれで良かったのだろう。
自分にも悪いところがあると思っていた夏菜子が天秤を手に入れていたら、幸せになる度に心のどこかで陽太へ罪悪感を募らせていったはず。でも、陽太の本質、夏菜子が殺された理由が分かった今なら幸せになり続けることに問題はない。

夏菜子が色々と考えていると、天使様から全てを吹き飛ばすおはようのキスが。
イケメンの威力は凄まじい。陽太にしてやられていた時間がどうでも良くなるくらいに甘いキスだった。

そもそも陽太は可愛い顔をしていたが、イケメンではない。ジュリアンは天上人だと言われても疑いが無いほどの美しい男性だ。そんな二人が同じ腹黒にカテゴライズされることなどあってはならない。
ジュリアンが腹黒くても許されるが、陽太の黒さはいつか自分を蝕む。天秤などなくても、不幸に落ちるに違いない。
夏菜子は陽太のプロポーズ並みに意味不明なことを考えながらジュリアンの唾液を飲み込んだ。唇を割って入ってきた、天上人の舌が与える唾液は聖水なのだろうと考えながら。

聖水ならば心が清められたはず。しかし、実際にはそれを言葉にするなら淫水。
正常な思考を止め、淫らにするもの。口に注がれたというのに、下の口に作用する。
「ジュール、あなたと睦み合いたい…」
気付かぬうちに夏菜子は思ったことを口から漏らしていた。

「どうやって?」
天使なのに、悪魔の悪戯心をジュリアンは持っている。今朝はローザリアに恥ずかしいことを沢山言わせたいらしい。ジュリアンの大好きな恥ずかしさを堪えるローザリアを見たいのだろう。若しくは、恥ずかしいから言えないと許しを乞うローザリアか。

質問したきり、飛び切りの笑顔で答えを待つジュリアン。この世界にカメラがあるならば、得も言われぬ圧があるこの笑顔を連写したい。この手の表情だけの写真集があれば、女性用のおかずになるだろう。勝手に妄想して、『はい、ご主人様に従います』とせっせと手を動かしそうだ。

夏菜子は現物のジュリアンに向かい心の中で『ご主人様のご希望通り』と唱えてから、どう睦み合いたいのか口にした。
「ジュールの太くて長いおチンポで奥まで突いて。奥に沢山、ジュールの雄汁を注いで欲しいの」
「朝から、ご馳走が欲しいの?」
「沢山欲しい。だって、わたしは欲張りなんだもの。但し、旦那様にだけ」

「ロージー、俺も朝のご馳走が欲しい」
隣で話をされればルイスも当然目覚めていたようだ。ご馳走と言いながら、見つめる先はローザリアの乳房。
そして、ジュリアンの向こうにいるブラッドリーも起きていることを主張するかのように鋭い視線を投げ掛けてきたのだった。

もう、夏菜子の頭の中には陽太にシテヤラレタことなど欠片もなかった。これからヤルことの方が大変で重要だ。
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