9 / 10
❀8
しおりを挟む
「―――!」
伸ばした腕と重なるように背後から伸びて来た手に固まった。
軽く首だげ振り向けば、至近距離に凛が居た。
思い切り振り向けば肩が当たってしまう距離。
「…どれを取る?」
凛の身長は私とそんなに変わらない。
だからか、尚更顔が近くてビックリしてしまった。
マジマジと見詰めて、硬直する私に凛は小首を少しかしげる。
凛の言葉に“あ、手伝ってくれようとしたんだ”と思った。
一瞬、吃驚してしまった自分が恥ずかしかった。
「えっと…その器と、凛は…」
私の言った器を、細いが程好く筋肉の付いた手を伸ばして掴む。
どのコップが良いか聞こうとしたけど、凛は器の横に重ねて入れていた、食器屋さんで売ってる一般的なスープカップより一回り小さなくすみカラーの取っ手付きカップを取り出した。
これもスープカップの部類だけど、大きさはカフェボウルにも近い。
黄色と青色のカップを焜炉の隣の空いたスペースに置いた。
「えっと、何飲むの?珈琲・紅茶・茉莉花茶…鳩麦とかもあるけどオレンジとリンゴも」
言いながら、ジュースは飲まないよねと思った。
重なっていた二つのカップを隣同士に並べる凛から二、三歩ズレて、飲み物のストック棚の中を確認した。
お気に入りの物は一年を通して変わり無い。けれど、季節によっては限定物や飲みたい物も変わる。
チラッと凛の方を見れば、考えている様子。
答えを待っている最中に、“あ!”と思い冷蔵庫を開けた。
冷蔵庫を開けて中央、上から三段目。
カップの杏仁豆腐の横にひっそり佇むアルミのフォルムに黄色が映える缶チューハイ。
私は下戸じゃないけど麦酒もチューハイも飲まない。
でも凛は麦酒もチューハイも飲める質。
二本入っていた一本を手に取って冷蔵庫の扉から見えるように凛に向けた。
「お酒もあるけど…?」
左手に持つ缶を視界に捉えた凛の口が微かに動いた。
「あ―……今日はいいや。」
「そう?」
要らないという返答を聞いて、缶チューハイを戻した。
飲むと言うかと思ったけど、気分じゃ無かったみたい。
冷蔵庫を閉じて“さて、どうしようかな”と考えた。
自分の遅い夕飯の献立もあれだけど、飲み物を指定しない凛を待っていると、尚更遅くなってしまう。
「タブラティーは?」
「タブラ……何?」
「タブラティー。ラム酒入りの紅茶…あれ、ラム酒駄目だった?」
付き合い始める前、凛は小さなバーに通っていた。
誰かと一緒に…では無く一人で。
週に一度、お休みに入る前日の夜。
何を好んで注文していたとか、バーでの凛の行動は知らない。
周りに人が居る場で、他の人と話ている凛の言葉を隣で小耳に挟む程度に聞いただけだったので、深く質問もしなかった。
ただ、その場では“大人の嗜み~”って単純に思っていた。
バーには通っていたが、意外と自分の家でお酒を嗜むのも好きだと後から聞いた。
「…いや、嫌いじゃない。」
その顔は―――飲んだ事無いから…ラム酒も紅茶も飲めるけど、合わせるの?と言っているようだった。
言葉には出さないけど、子供のような食わず嫌い的な不安が過ぎったのだと勝手に思った。
「無理にとは言わないけど…」
今朝、沸かしてポットへ入れて置いたお湯は、まだ熱いけれど熱湯では無い事が分かっているから、もう一度沸かす為に湯沸かしポットへ入れてボタンを押した。
お鍋を使わないのは時間短縮の為。
紅茶の缶を取り出しカップの横に置く。
凛の視線を感じながら、野菜室からキャベツを取り出した。
―――バタン……ピーピッピッ…
日曜日に、炊いて小分けに保存していたご飯を電子レンジにかけながら、お豆腐を取り出して調理台に置いた。
ザルに浄水器の冷水を貯めて、キャベツを一枚一枚剥がしている時に、お湯が沸いた。
耐熱ガラスの透き通ったティーポットに紅茶の茶葉とお湯をゆっくり入れて数秒蒸らす。
瀬戸で出来たティーポットもあるが、ガラスの方が汚れが見える事と中国の工芸茶も好んで飲むから、つい此方を使いがちだった。
茶葉を蒸らしている間にカップにもお湯を注いだ。
ガラスの中が濃い琥珀色に染まった頃合いで、カップのお湯を捨てて、ラム酒を注ぎ続いて紅茶も注いだ。
紅茶を注いだ瞬間、芳醇なラムと紅茶の良い香りが空間に広がった。
無言でジッと横で様子を見ていた凛の手に、両手でカップを差し出した。
「お試しあれ。」
手に載せられたカップを、三秒程見てから口をつけた。
―――ゴクッ…
飲み込んだ凛の目が微かに光った。
口に合ったのだと思った。
「美味しいでしょ?意外と。」
「…ラム酒と紅茶って合うんだな。」
カップの中を見詰めて言う凛に、私の口角が上がった。
「シナモンとシュガーが欲しかったら、凛の右手側の二番目の棚にあるよ。シナモンスティックとか。」
凛が頷いた事を確認して、夕飯の支度の続きを始めた。
空気を読んだようで、凛はカップを持ってキッチンを出て行った。
ご飯とお味噌とおかずを持ってリビングに行くと、ソファの足を背に炬燵に入った凛が居た。
炬燵テーブルの上に食事を並べると、凛がまじまじ眺めていた。
時間の関係もあって軽く作った手前、あまり見詰められると少し恥ずかしくなる。
凛の前で時々料理はするけど、自分用には軽く作れるものが多いから尚更だった。
付き合い初めは手抜きだと思われる事が嫌で、人の前では変なプライドも相まって料理も頑張らなきゃと、何処か変なプレッシャーを感じた。
しかし、全くと言っていい程料理をしない凛は、軽くだろうが凝ろうが、料理する事が凄いと思っているようで「気にしない。頑張らなくて良い。」と言われた時に気持ちが軽くなった。
玉子焼きで凛の目が止まった。
「もしかして、食べたい?」
本人は気付いてないが、さっきから二回以上玉子焼きに目が行っている。
夕飯は済ませて来たと言っていたからお腹は空いていない筈だが、玉子焼きは食べたいみたい。
物欲し気な視線に、こういう所はやっぱり少し年齢差を感じた。
顔を上げた凛の表情は分かる人にしか分からないかもしれないが、パッと華やいだ気がした。
笑ってしまいそうになるのを堪えて、焼いて軽くラップをかけて置いた玉子焼きを取りにキッチンに入る。
木製のトレーに凛用の玉子焼きと箸と小皿を載せて、炬燵へ戻った。
「……良いの?」
遠慮がちに言葉を選びながら聞く凛。
私はその言葉に頷いた。
「どうぞ。」
―――いただきます…手を合わせた後、長い指先にきちんと正しく指が添えられた箸。
食事へ向かう姿勢が、ちゃんと家庭で教育されていた証拠。育ちの良さが出ている。
「甘い。けど、美味い。」
感想を述べてくれるのは、作った側として素直に嬉しかった。
「出汁巻きと迷ったけど、今日は甘くしたの。口に合って良かった。」
進む箸に本当に美味しいと思っていると分かる。
些細な事だけど、そんな他愛も無い時間に癒やされる。
「柚衣」
「…え?」
「ボーッとしてる。」
「違うよ。凛の食べる姿、眺めていただけ。」
眺め過ぎて自分の箸が止まってしまっていた。
軽く箸を持ち直してご飯を口に入れる。
気付かないフリをしたけど、凛は何処かやっぱり心配しているようだった。
覗き込んで来る視線が、ジリジリ私の表面を焼いていた。
誤魔化す為に笑顔を貼り付けた訳じゃない。
凛の勘が良い所は好きだし、素直に尊敬もしている。
けれど……沢野の事は言えない。
言っても何も意味が無いし、今日が何かの偶然だっただけで、きっと二度と顔を合わせる事は無い。
―――大丈夫。大丈夫。
心の中で二回呟いた。今日の出来事も心の奥に蓋をした。
伸ばした腕と重なるように背後から伸びて来た手に固まった。
軽く首だげ振り向けば、至近距離に凛が居た。
思い切り振り向けば肩が当たってしまう距離。
「…どれを取る?」
凛の身長は私とそんなに変わらない。
だからか、尚更顔が近くてビックリしてしまった。
マジマジと見詰めて、硬直する私に凛は小首を少しかしげる。
凛の言葉に“あ、手伝ってくれようとしたんだ”と思った。
一瞬、吃驚してしまった自分が恥ずかしかった。
「えっと…その器と、凛は…」
私の言った器を、細いが程好く筋肉の付いた手を伸ばして掴む。
どのコップが良いか聞こうとしたけど、凛は器の横に重ねて入れていた、食器屋さんで売ってる一般的なスープカップより一回り小さなくすみカラーの取っ手付きカップを取り出した。
これもスープカップの部類だけど、大きさはカフェボウルにも近い。
黄色と青色のカップを焜炉の隣の空いたスペースに置いた。
「えっと、何飲むの?珈琲・紅茶・茉莉花茶…鳩麦とかもあるけどオレンジとリンゴも」
言いながら、ジュースは飲まないよねと思った。
重なっていた二つのカップを隣同士に並べる凛から二、三歩ズレて、飲み物のストック棚の中を確認した。
お気に入りの物は一年を通して変わり無い。けれど、季節によっては限定物や飲みたい物も変わる。
チラッと凛の方を見れば、考えている様子。
答えを待っている最中に、“あ!”と思い冷蔵庫を開けた。
冷蔵庫を開けて中央、上から三段目。
カップの杏仁豆腐の横にひっそり佇むアルミのフォルムに黄色が映える缶チューハイ。
私は下戸じゃないけど麦酒もチューハイも飲まない。
でも凛は麦酒もチューハイも飲める質。
二本入っていた一本を手に取って冷蔵庫の扉から見えるように凛に向けた。
「お酒もあるけど…?」
左手に持つ缶を視界に捉えた凛の口が微かに動いた。
「あ―……今日はいいや。」
「そう?」
要らないという返答を聞いて、缶チューハイを戻した。
飲むと言うかと思ったけど、気分じゃ無かったみたい。
冷蔵庫を閉じて“さて、どうしようかな”と考えた。
自分の遅い夕飯の献立もあれだけど、飲み物を指定しない凛を待っていると、尚更遅くなってしまう。
「タブラティーは?」
「タブラ……何?」
「タブラティー。ラム酒入りの紅茶…あれ、ラム酒駄目だった?」
付き合い始める前、凛は小さなバーに通っていた。
誰かと一緒に…では無く一人で。
週に一度、お休みに入る前日の夜。
何を好んで注文していたとか、バーでの凛の行動は知らない。
周りに人が居る場で、他の人と話ている凛の言葉を隣で小耳に挟む程度に聞いただけだったので、深く質問もしなかった。
ただ、その場では“大人の嗜み~”って単純に思っていた。
バーには通っていたが、意外と自分の家でお酒を嗜むのも好きだと後から聞いた。
「…いや、嫌いじゃない。」
その顔は―――飲んだ事無いから…ラム酒も紅茶も飲めるけど、合わせるの?と言っているようだった。
言葉には出さないけど、子供のような食わず嫌い的な不安が過ぎったのだと勝手に思った。
「無理にとは言わないけど…」
今朝、沸かしてポットへ入れて置いたお湯は、まだ熱いけれど熱湯では無い事が分かっているから、もう一度沸かす為に湯沸かしポットへ入れてボタンを押した。
お鍋を使わないのは時間短縮の為。
紅茶の缶を取り出しカップの横に置く。
凛の視線を感じながら、野菜室からキャベツを取り出した。
―――バタン……ピーピッピッ…
日曜日に、炊いて小分けに保存していたご飯を電子レンジにかけながら、お豆腐を取り出して調理台に置いた。
ザルに浄水器の冷水を貯めて、キャベツを一枚一枚剥がしている時に、お湯が沸いた。
耐熱ガラスの透き通ったティーポットに紅茶の茶葉とお湯をゆっくり入れて数秒蒸らす。
瀬戸で出来たティーポットもあるが、ガラスの方が汚れが見える事と中国の工芸茶も好んで飲むから、つい此方を使いがちだった。
茶葉を蒸らしている間にカップにもお湯を注いだ。
ガラスの中が濃い琥珀色に染まった頃合いで、カップのお湯を捨てて、ラム酒を注ぎ続いて紅茶も注いだ。
紅茶を注いだ瞬間、芳醇なラムと紅茶の良い香りが空間に広がった。
無言でジッと横で様子を見ていた凛の手に、両手でカップを差し出した。
「お試しあれ。」
手に載せられたカップを、三秒程見てから口をつけた。
―――ゴクッ…
飲み込んだ凛の目が微かに光った。
口に合ったのだと思った。
「美味しいでしょ?意外と。」
「…ラム酒と紅茶って合うんだな。」
カップの中を見詰めて言う凛に、私の口角が上がった。
「シナモンとシュガーが欲しかったら、凛の右手側の二番目の棚にあるよ。シナモンスティックとか。」
凛が頷いた事を確認して、夕飯の支度の続きを始めた。
空気を読んだようで、凛はカップを持ってキッチンを出て行った。
ご飯とお味噌とおかずを持ってリビングに行くと、ソファの足を背に炬燵に入った凛が居た。
炬燵テーブルの上に食事を並べると、凛がまじまじ眺めていた。
時間の関係もあって軽く作った手前、あまり見詰められると少し恥ずかしくなる。
凛の前で時々料理はするけど、自分用には軽く作れるものが多いから尚更だった。
付き合い初めは手抜きだと思われる事が嫌で、人の前では変なプライドも相まって料理も頑張らなきゃと、何処か変なプレッシャーを感じた。
しかし、全くと言っていい程料理をしない凛は、軽くだろうが凝ろうが、料理する事が凄いと思っているようで「気にしない。頑張らなくて良い。」と言われた時に気持ちが軽くなった。
玉子焼きで凛の目が止まった。
「もしかして、食べたい?」
本人は気付いてないが、さっきから二回以上玉子焼きに目が行っている。
夕飯は済ませて来たと言っていたからお腹は空いていない筈だが、玉子焼きは食べたいみたい。
物欲し気な視線に、こういう所はやっぱり少し年齢差を感じた。
顔を上げた凛の表情は分かる人にしか分からないかもしれないが、パッと華やいだ気がした。
笑ってしまいそうになるのを堪えて、焼いて軽くラップをかけて置いた玉子焼きを取りにキッチンに入る。
木製のトレーに凛用の玉子焼きと箸と小皿を載せて、炬燵へ戻った。
「……良いの?」
遠慮がちに言葉を選びながら聞く凛。
私はその言葉に頷いた。
「どうぞ。」
―――いただきます…手を合わせた後、長い指先にきちんと正しく指が添えられた箸。
食事へ向かう姿勢が、ちゃんと家庭で教育されていた証拠。育ちの良さが出ている。
「甘い。けど、美味い。」
感想を述べてくれるのは、作った側として素直に嬉しかった。
「出汁巻きと迷ったけど、今日は甘くしたの。口に合って良かった。」
進む箸に本当に美味しいと思っていると分かる。
些細な事だけど、そんな他愛も無い時間に癒やされる。
「柚衣」
「…え?」
「ボーッとしてる。」
「違うよ。凛の食べる姿、眺めていただけ。」
眺め過ぎて自分の箸が止まってしまっていた。
軽く箸を持ち直してご飯を口に入れる。
気付かないフリをしたけど、凛は何処かやっぱり心配しているようだった。
覗き込んで来る視線が、ジリジリ私の表面を焼いていた。
誤魔化す為に笑顔を貼り付けた訳じゃない。
凛の勘が良い所は好きだし、素直に尊敬もしている。
けれど……沢野の事は言えない。
言っても何も意味が無いし、今日が何かの偶然だっただけで、きっと二度と顔を合わせる事は無い。
―――大丈夫。大丈夫。
心の中で二回呟いた。今日の出来事も心の奥に蓋をした。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
同じアパートに住む年上未亡人美女は甘すぎる。
ピコサイクス
青春
大学生の翔太は、一人暮らしを始めたばかり。
真下の階に住むのは、落ち着いた色気と優しさを併せ持つ大人の女性・水無瀬紗夜。
引っ越しの挨拶で出会った瞬間、翔太は心を奪われてしまう。
偶然にもアルバイト先のスーパーで再会した彼女は、翔太をすぐに採用し、温かく仕事を教えてくれる存在だった。
ある日の仕事帰り、ふたりで過ごす時間が増えていき――そして気づけば紗夜の部屋でご飯をご馳走になるほど親密に。
優しくて穏やかで――その色気に触れるたび、翔太の心は揺れていく。
大人の女性と大学生、甘くちょっぴり刺激的な同居生活(?)がはじまる。
極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です
朝陽七彩
恋愛
私は。
「夕鶴、こっちにおいで」
現役の高校生だけど。
「ずっと夕鶴とこうしていたい」
担任の先生と。
「夕鶴を誰にも渡したくない」
付き合っています。
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
神城夕鶴(かみしろ ゆづる)
軽音楽部の絶対的エース
飛鷹隼理(ひだか しゅんり)
アイドル的存在の超イケメン先生
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
彼の名前は飛鷹隼理くん。
隼理くんは。
「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」
そう言って……。
「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」
そして隼理くんは……。
……‼
しゅっ……隼理くん……っ。
そんなことをされたら……。
隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。
……だけど……。
え……。
誰……?
誰なの……?
その人はいったい誰なの、隼理くん。
ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。
その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。
でも。
でも訊けない。
隼理くんに直接訊くことなんて。
私にはできない。
私は。
私は、これから先、一体どうすればいいの……?
病弱な彼女は、外科医の先生に静かに愛されています 〜穏やかな執着に、逃げ場はない〜
来栖れいな
恋愛
――穏やかな微笑みの裏に、逃げられない愛があった。
望んでいたわけじゃない。
けれど、逃げられなかった。
生まれつき弱い心臓を抱える彼女に、政略結婚の話が持ち上がった。
親が決めた未来なんて、受け入れられるはずがない。
無表情な彼の穏やかさが、余計に腹立たしかった。
それでも――彼だけは違った。
優しさの奥に、私の知らない熱を隠していた。
形式だけのはずだった関係は、少しずつ形を変えていく。
これは束縛? それとも、本当の愛?
穏やかな外科医に包まれていく、静かで深い恋の物語。
※この物語はフィクションです。
登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。
17歳男子高生と32歳主婦の境界線
MisakiNonagase
恋愛
32歳の主婦・加恋。冷え切った家庭で孤独に苛まれる彼女を救い出したのは、ネットの向こう側にいた二十歳(はたち)と偽っていた17歳の少年・晴人だった。
「未成年との不倫」という、社会から断罪されるべき背徳。それでも二人は、震える手で未来への約束を交わす。少年が大学生になり、社会人となり、守られる存在から「守る男」へと成長していく中で、加恋は自らの手で「妻」という仮面を脱ぎ捨てていく…
なお、スピンオフもございます。
白椿の咲く日~ひそかな恋、遠い日の思いは
紫さゆり
恋愛
結婚を控えた真由子は、久しぶりに異母姉の稚子(わかこ)と会う。
真由子の母の雪江は、大学教授であり著名な歌人の水上実之(みなかみさねゆき)の後添いとして水上家に嫁いだ。
婚約者の諒人(りょうと)のことなど、真由子は稚子と色々語り合ううち、庭の白椿の木は真由子がなついていた異母兄、靖之が植えたものだと知る。
白椿の木をめぐっての、ひそかな大人の恋物語です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる